年寄りは、なにかにつれ昔話をする。
2008年3月7日 タカラヅカ こっそりと、トド様の話。
わたしは長い間トドファンだった。
トドがいなければ、この世界に足を踏み入れていない。
雪組に組替えしてきたばかりのころ、彼は不敵でやんちゃな男の子だった。技術が足りていないわりには堂々と舞台で「遊ぶ」ことを知っていたと思う。
舞台で「遊ぶ」彼を見るのが好きだった。
次はなにをしでかすんだろう? とわくわく見守っていた。
「ジャニーズ系美少年」と言われ、「タカラヅカの光(光GENJI)」と言われ、真っ当に路線人生を歩いてきた人だと思う。
途中組替えでやってきたタータンに抜かされかけ、ソロをもらうタータンの後ろで3人口あたりをふらふらしたりしながらも、また真ん中へ戻ってきた。
『忠臣蔵』で歌を聴いたときは感動したなあ……1年間、歌わせてもらってなかったんだもん……歌はみんなタータンに持って行かれてて。で、ソロをもらっていなかったのに、ちゃんと1年分成長していることにも感動したさ。
やんちゃに、イキイキと。やりすぎのアドリブに舞台が止まってしまっても気にしていない風。また、トップスターのいっちゃんが大らかな人で、それを許容してくれていた感じ。
トド×一路の並びも好きだったし(男同士も、男女も)、高嶺くんとのコンビも好きだった(男同士も、男女も)。
そんなトドだったのに、トップスターになってから、ころりと芸風が変わった。
堅実一路。
「遊び」のない、四角四面でおもしろみのない舞台。
とまどった。
すっげー、とまどった。
アンタ誰?
責任を取る立場になると、いきなり真面目になるの? いっちゃんが上にいたときは、あんなに暴れ回っていたくせに?
ずるいのか小心なのか、たんに真面目な性格だったのか。
や、責任ある立場の人間だから、堅実に生きるのはまちがってないんだけど……ううむ。
トップになってからしばらくは、ずいぶん失速したと思う。
お披露目公演は宙組発足のあおりを食ってめくちゃくちゃ。
トップスターなのに相手役無し。娘役トップスターは一緒に宙組へ行く2番手とばかり組む。……芝居でも、ショーでも。誰のお披露目公演なんだか。
ムラだけで東上無しと決まっている作品だったからって、思い切り手を抜かれていた。
ひでーなー。こんな扱いされる程度の人なんだ、トドって?
わたしは会にも入っていない、ただ出版物やテレビ、舞台を観ていただけの一般ファンなので、裏の事情など知りようもないが。
今でも、『真夜中のゴースト』はタカネくん主演を想定されていたんじゃないかと思うよ。トドにはあまりにも似合わなさすぎた。
もらいもののアンティーク・ペンダントを身につけたヒロインのテレビレポーターが、とある古城に仕事でやって来た。すると何百年前に悲恋の末死んだ男がゴーストとして現れ、「それは恋人に贈るつもりのペンダントだった、恋人の墓前に供えてくれ」とヒロインに頼む。
ヒロインはゴーストに同情し、仕事仲間たちとゴーストの願いを叶える。そして、その過程でディレクターと愛し合うようになる。ハッピーエンド……って、ナニこの話? これじゃ主役はレポーターのヒロインと相手役のディレクターじゃん?
主役のゴースト@タカネくん、その引き裂かれた恋人@花ちゃん、そして現代のテレビレポーター@花ちゃん2役、彼女はゴーストの恋人の生まれかわり。
あくまでも、トップコンビの愛の物語。
レポーター花ちゃんに片想いのディレクター@トド、以下役がズレていくこと。
そうすれば辻褄は合う。
ゴーストがわざわざ数百年ぶりに現れたのは、恋人の生まれかわりが、思い出のペンダントを身につけて城に現れたから。
だけど過去は過去、ゴーストはゴースト。過去の恋を成就させて消えていき、現代のヒロインは現代の男と結ばれる。もしくは、現代でゴーストの生まれかわり男と出会ってもイイ。
『真夜中のゴースト』は、主演のトドと娘トップの花ちゃん(宙組売約済)を組ませないためだけに、話がぶっ壊れた。
ゴーストの恋人を、花ちゃんにさせなかった。なのに、ゴーストと関わるのが花ちゃんなんだ。
ゴースト@トドは形見のペンダントを手にしただけの赤の他人@花ちゃんと疑似恋愛に落ちる、そしてカンチガイだから早々に身を翻すただの変な人になって終わった。
「あの人(ゴースト)、なにしに出てきたの?」
「俺たちの愛を成就させるためさ」
「いやん☆」
と、花ちゃんとたかちゃんがいちゃついて終わる話になってしまった。
こんなアホな話でトップお披露目をした人もめずらしいだろう。
トップスターとしてまったく認められていないよーな、作りの作品だった。
ショーもまた、トドが登場する場面、次にたかちゃん花ちゃんのラヴラヴ場面、トドひとりの場面、たか花の場面、と交互に続き、誰のお披露目公演かわからなかった。
終演後もみんな口々に、「たかちゃん、花ちゃん、トップコンビお披露目おめでとう」と言った……。
じゃあトドってなんなんだろ? ゲスト?
そーして次の本公演、『春櫻賦』『LET’S JAZZ』では、雪組は、知らない人ばかりになっていた。
はじめて見るトップ娘役。前に見た顔ではあるけどしばらくは雪組とは無関係だった2番手。知らない顔の3番手。
なにこれ。
どこの組?
前回の本公演で3番手を堂々演じていた生え抜き男役は、芝居ではただの脇役やってます。
中心にいるのは専科さんと知らない人たち。そしてたったひとりの、トドロキ。
や、いちおー他の組もちょろちょろ見ていたので、まったく知らない人たちではないにしろ、気分的には「知らない人」だ。
それがトップ娘役、男役2番手・3番手と主要ポジを占めてしまうんだよ?
わけわかんねえ。
舞台も手探り状態。
トドはいきり立つ猫のように毛を立てているし、ぐんちゃんは必死になってトドについて行こうとしている。
タータンはマイペースに見えた。コウちゃんは自分の存在価値を示すのに必死さが伺えた。
トドの芸風が変わってしまったのは、この怒濤のトップ生活スタート事情にあったのかと思う。
今まで仲間たちとゆー「ぬるま湯」の中、末っ子的に甘やかされてきて、突然世界が変わった。
今までの続きにトップになれるはずが、彼が想像していた地続きではなく、別の場所に連れてこられてしまった。
警戒する猫。
神経質な猫。
言質を取られないよう、弱みを見せないよう、武装する猫。
『LET’S JAZZ』初日、トドロキは信じられないくらいの汗をかいていた。
「トドちゃん、汚い」
と、「見えるところに汗をかかない矜持を持つ」スターさんファンの友人が、容赦なく切り捨てるほどの汗だ。
トドはもともと汗かきだが、それにしたって尋常ではない汗の量だった。
そして、公演が進むにつれやせ細っていった。
この人、大丈夫か? と、不安になるほどに。
……それでも、初日挨拶はいつもの「トドロキ節」で、アホアホなポエムなんだけどね(笑)。
トドロキはもう、舞台で「やんちゃ」をしなくなった。
優等生になった。
「遊ぶ」ことで加点を狙うより、油断なく過ごすことで減点されないことを目的とした舞台を作るようになった。
なんか、さぁ。
「歴史は繰り返す」っていうけどさぁ。
今の宙組を、タニちゃんを観ていて、当時の雪組を、トドロキを思い出すよ。
組の2〜3番手、娘トップ総入れ替えで生え抜きは番手の下や外へ押しやられ、組ファンは混乱の一途。トップスターはお披露目からトップ娘役と組ませてもらえなかったり、主演とは名ばかりの扱い受けたり。
あのときのかなしさを、漠然と思い出す。
ジェンヌに罪はない。今も、昔も。
彼らはいつも、精一杯舞台を務めている。
ただもう劇団に、「あまりひどいことはしないでくれ」と願うばかりだ。
今回の宙組のトドの扱い、というか、タニちゃんをあまりに軽んじた構成は、やっぱり変だと思う。
マッカーサーのタニちゃんはとてもステキだったけれど、それとは別に、「トップスター」をそして「組」を、もっと大切にして欲しいと思う。
それが「宝塚歌劇団」というブランドを大切にすることだと思うから。
わたしは長い間トドファンだった。
トドがいなければ、この世界に足を踏み入れていない。
雪組に組替えしてきたばかりのころ、彼は不敵でやんちゃな男の子だった。技術が足りていないわりには堂々と舞台で「遊ぶ」ことを知っていたと思う。
舞台で「遊ぶ」彼を見るのが好きだった。
次はなにをしでかすんだろう? とわくわく見守っていた。
「ジャニーズ系美少年」と言われ、「タカラヅカの光(光GENJI)」と言われ、真っ当に路線人生を歩いてきた人だと思う。
途中組替えでやってきたタータンに抜かされかけ、ソロをもらうタータンの後ろで3人口あたりをふらふらしたりしながらも、また真ん中へ戻ってきた。
『忠臣蔵』で歌を聴いたときは感動したなあ……1年間、歌わせてもらってなかったんだもん……歌はみんなタータンに持って行かれてて。で、ソロをもらっていなかったのに、ちゃんと1年分成長していることにも感動したさ。
やんちゃに、イキイキと。やりすぎのアドリブに舞台が止まってしまっても気にしていない風。また、トップスターのいっちゃんが大らかな人で、それを許容してくれていた感じ。
トド×一路の並びも好きだったし(男同士も、男女も)、高嶺くんとのコンビも好きだった(男同士も、男女も)。
そんなトドだったのに、トップスターになってから、ころりと芸風が変わった。
堅実一路。
「遊び」のない、四角四面でおもしろみのない舞台。
とまどった。
すっげー、とまどった。
アンタ誰?
責任を取る立場になると、いきなり真面目になるの? いっちゃんが上にいたときは、あんなに暴れ回っていたくせに?
ずるいのか小心なのか、たんに真面目な性格だったのか。
や、責任ある立場の人間だから、堅実に生きるのはまちがってないんだけど……ううむ。
トップになってからしばらくは、ずいぶん失速したと思う。
お披露目公演は宙組発足のあおりを食ってめくちゃくちゃ。
トップスターなのに相手役無し。娘役トップスターは一緒に宙組へ行く2番手とばかり組む。……芝居でも、ショーでも。誰のお披露目公演なんだか。
ムラだけで東上無しと決まっている作品だったからって、思い切り手を抜かれていた。
ひでーなー。こんな扱いされる程度の人なんだ、トドって?
わたしは会にも入っていない、ただ出版物やテレビ、舞台を観ていただけの一般ファンなので、裏の事情など知りようもないが。
今でも、『真夜中のゴースト』はタカネくん主演を想定されていたんじゃないかと思うよ。トドにはあまりにも似合わなさすぎた。
もらいもののアンティーク・ペンダントを身につけたヒロインのテレビレポーターが、とある古城に仕事でやって来た。すると何百年前に悲恋の末死んだ男がゴーストとして現れ、「それは恋人に贈るつもりのペンダントだった、恋人の墓前に供えてくれ」とヒロインに頼む。
ヒロインはゴーストに同情し、仕事仲間たちとゴーストの願いを叶える。そして、その過程でディレクターと愛し合うようになる。ハッピーエンド……って、ナニこの話? これじゃ主役はレポーターのヒロインと相手役のディレクターじゃん?
主役のゴースト@タカネくん、その引き裂かれた恋人@花ちゃん、そして現代のテレビレポーター@花ちゃん2役、彼女はゴーストの恋人の生まれかわり。
あくまでも、トップコンビの愛の物語。
レポーター花ちゃんに片想いのディレクター@トド、以下役がズレていくこと。
そうすれば辻褄は合う。
ゴーストがわざわざ数百年ぶりに現れたのは、恋人の生まれかわりが、思い出のペンダントを身につけて城に現れたから。
だけど過去は過去、ゴーストはゴースト。過去の恋を成就させて消えていき、現代のヒロインは現代の男と結ばれる。もしくは、現代でゴーストの生まれかわり男と出会ってもイイ。
『真夜中のゴースト』は、主演のトドと娘トップの花ちゃん(宙組売約済)を組ませないためだけに、話がぶっ壊れた。
ゴーストの恋人を、花ちゃんにさせなかった。なのに、ゴーストと関わるのが花ちゃんなんだ。
ゴースト@トドは形見のペンダントを手にしただけの赤の他人@花ちゃんと疑似恋愛に落ちる、そしてカンチガイだから早々に身を翻すただの変な人になって終わった。
「あの人(ゴースト)、なにしに出てきたの?」
「俺たちの愛を成就させるためさ」
「いやん☆」
と、花ちゃんとたかちゃんがいちゃついて終わる話になってしまった。
こんなアホな話でトップお披露目をした人もめずらしいだろう。
トップスターとしてまったく認められていないよーな、作りの作品だった。
ショーもまた、トドが登場する場面、次にたかちゃん花ちゃんのラヴラヴ場面、トドひとりの場面、たか花の場面、と交互に続き、誰のお披露目公演かわからなかった。
終演後もみんな口々に、「たかちゃん、花ちゃん、トップコンビお披露目おめでとう」と言った……。
じゃあトドってなんなんだろ? ゲスト?
そーして次の本公演、『春櫻賦』『LET’S JAZZ』では、雪組は、知らない人ばかりになっていた。
はじめて見るトップ娘役。前に見た顔ではあるけどしばらくは雪組とは無関係だった2番手。知らない顔の3番手。
なにこれ。
どこの組?
前回の本公演で3番手を堂々演じていた生え抜き男役は、芝居ではただの脇役やってます。
中心にいるのは専科さんと知らない人たち。そしてたったひとりの、トドロキ。
や、いちおー他の組もちょろちょろ見ていたので、まったく知らない人たちではないにしろ、気分的には「知らない人」だ。
それがトップ娘役、男役2番手・3番手と主要ポジを占めてしまうんだよ?
わけわかんねえ。
舞台も手探り状態。
トドはいきり立つ猫のように毛を立てているし、ぐんちゃんは必死になってトドについて行こうとしている。
タータンはマイペースに見えた。コウちゃんは自分の存在価値を示すのに必死さが伺えた。
トドの芸風が変わってしまったのは、この怒濤のトップ生活スタート事情にあったのかと思う。
今まで仲間たちとゆー「ぬるま湯」の中、末っ子的に甘やかされてきて、突然世界が変わった。
今までの続きにトップになれるはずが、彼が想像していた地続きではなく、別の場所に連れてこられてしまった。
警戒する猫。
神経質な猫。
言質を取られないよう、弱みを見せないよう、武装する猫。
『LET’S JAZZ』初日、トドロキは信じられないくらいの汗をかいていた。
「トドちゃん、汚い」
と、「見えるところに汗をかかない矜持を持つ」スターさんファンの友人が、容赦なく切り捨てるほどの汗だ。
トドはもともと汗かきだが、それにしたって尋常ではない汗の量だった。
そして、公演が進むにつれやせ細っていった。
この人、大丈夫か? と、不安になるほどに。
……それでも、初日挨拶はいつもの「トドロキ節」で、アホアホなポエムなんだけどね(笑)。
トドロキはもう、舞台で「やんちゃ」をしなくなった。
優等生になった。
「遊ぶ」ことで加点を狙うより、油断なく過ごすことで減点されないことを目的とした舞台を作るようになった。
なんか、さぁ。
「歴史は繰り返す」っていうけどさぁ。
今の宙組を、タニちゃんを観ていて、当時の雪組を、トドロキを思い出すよ。
組の2〜3番手、娘トップ総入れ替えで生え抜きは番手の下や外へ押しやられ、組ファンは混乱の一途。トップスターはお披露目からトップ娘役と組ませてもらえなかったり、主演とは名ばかりの扱い受けたり。
あのときのかなしさを、漠然と思い出す。
ジェンヌに罪はない。今も、昔も。
彼らはいつも、精一杯舞台を務めている。
ただもう劇団に、「あまりひどいことはしないでくれ」と願うばかりだ。
今回の宙組のトドの扱い、というか、タニちゃんをあまりに軽んじた構成は、やっぱり変だと思う。
マッカーサーのタニちゃんはとてもステキだったけれど、それとは別に、「トップスター」をそして「組」を、もっと大切にして欲しいと思う。
それが「宝塚歌劇団」というブランドを大切にすることだと思うから。
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