知らなかった。

 わたしにとっての『ME AND MY GIRL』とは、久世星佳お披露目だった、月組中日公演であるらしい。

 最初に観たのが、天海祐希主演の大劇場版。
 だからとーぜん、最初に観た『ME AND MY GIRL』が、わたしにとっての『ME AND MY GIRL』だと思っていた。

 が。

 実際に今の再演『ミーマイ』を観ていて感じる違和感は、のんちゃんバージョンとの差異によって生じるモノだった。

 知らなかった。
 自分でも、カケラも自覚してなかった。

 わたしにとってのビルはのんちゃんで、サリーは優子姫なんだ。

 ちなみにジョン卿は汝鳥伶サマで、ジャッキーはじゅりぴょんだ。

 
 はじめての中日劇場。
 たしか観劇直前まで観光していて、ぎりぎりに駆け込んだため、劇場についての印象はまったくない。なにもおぼえてないぞ。終演後は名古屋名物を食べるのに必死だったし(笑)。

 大人の男……つーか、ぶっちゃけおっさんくさいのんちゃんが、天海があんなにかわいかっこいービジュアルで演じた若々しいビル役をやる、つーんで、興味津々。
 いやその、なんつーか、ポスターは、微妙だった。

 うわ、似合ってねー……。

 だってのんちゃんこの間までジョン卿やってたじゃん。ガイゲルン男爵だし、ダニエルだし、ミッシェル役は天海とWキャストと思えないくらいイメージ違ってたし……とにかくいつだって「大人」だったじゃん?
 それがビル役ってのは……無理があるんじゃあ? のんちゃんが芝居巧者なのは知ってるけど、外見の占めるパーセンテージは大きいよ?

 そう思いつつ、半信半疑のプレお披露目公演、張り切って初日観劇。

 
 違和感、なかった。

 か、かわいいっ。
 のんちゃんなのに、顔は変わってないはずなのに、のんちゃんがかわいい。フレッシュでキュート。

 愛すべき男、ビルがそこにいた。

 芝居が巧い、つーのは、こーゆーことをいうのか……。
 柄違いぢゃ? てな役も、ふつーにモノにしちゃうんだー。

 
 ちなみに、それまでわたしは風花舞ちゃんが相当苦手だったんだが、サリー役はふつーにかわいかった。
 え、いいじゃん? と、素直に見直した。(そのあとの大劇場お披露目公演『CAN-CAN』で惚れ込む)

 
 じゅりぴょんのこともそれまで知らなくて、「新公ジャッキーで、すばらしい評判だったから、中日公演でもジャッキーに抜擢された新進男役」と聞いていたので「どんな美形サマが美脚を引っ提げて登場なさるのかしらっ」とわくわくしていたさ……ええっと、たしかに美脚だったけど、そのう、想像していたタイプの美形サマではなく、味のあるお顔立ちに相当びっくりしたなあ……(笑)。

 
 でもって、ジョン卿@汝鳥伶サマと、マリア叔母@邦なつきさんが、かわいらしくもじれったい恋をしているの。

 汝鳥伶サマとのんちゃんが、図書室で酔っぱらってじゃれるの。

 なんかもー、すっごいシアワセな画面なんですが。

 あああ、汝鳥伶サマ、ステキだったなあああ。(ソコか)

 
 たしかに、タカラヅカらしいキラキラ感には欠けていたかもしれない。
 なんつーかこー、いぶし銀な配役だよなー。
 とくにアイドルだった天海が抜け、一気に地味度が増した感はある。

 だけどすごく、ミュージカルだった記憶がある。
 タカラヅカだけど、ミュージカル。
 ヅカのよいところを残しつつ、ぎりぎりミュージカルしていたような。

 中日劇場でコンパクトに演じていたのも、関係しているかもしれない。

 『ミーマイ』はふつーにたのしくてハッピーで、それほど大好きってわけでもないけれど、1回観る分には十分たのしめる作品。や、わたしにとって。
 ほんとにたのしんで、気持ちよく過ごした。

 
 それが、わたしにとっての『ME AND MY GIRL』。
 地味でコンパクトで、「ミュージカル」。
 のんちゃんが脚立の上で、脚立ごと倒れそうになってびびった記憶(初日ならでは・笑)ごと、刷り込まれていたらしい。

 今のあさこちゃん率いる『ME AND MY GIRL』を観ながら、なによりものんちゃんの『ME AND MY GIRL』を強く思い出していた。
 なつかしんでいた。
 ……自分でもそんなことをおぼえているなんて、すーっかり忘れていた、ささやかな感覚を。

 
 再演って、おもしろいよなー。
 いろんな感情が、二重三重に映し出される感覚。
 『エリザベート』ほど強烈に「おぼえてる」わけじゃなく、自分でも自覚していない記憶だから、なおさらおもしろいの。
 

 『ME AND MY GIRL』、たのしかった。

 

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