あれはたしか、全国ツアーの『レ・ビジュー・ブリアン』を観たときだっけ。

 ショーのセンターに立つゆーひくんを見て、「真ん中に立つには弱いな」と思った。
 全ツ2番手とはいえ、今までの彼からすれば破格の扱いを受けて、ゆーひくんはセンターで舞台全体を引っ張る、という仕事に取り組んでいた。悪戦苦闘していた。

 そもそもゆーひくんがショーで1場面を任されたのが、『レ・ビジュー・ブリアン』の本公演のときではなかったっけ?

 ゆーひくんは「路線」としての完璧な扱いは受けて来なかった。まったくの圏外に置かれていたわけではないが、都合良く使われるだけで肝心なところでは線引きされていた。
 下級生のタニちゃんやきりやんより下の扱いを、ずーっとふつーに受けていた。
 だから「真ん中」に立つための訓練なんか受けてないし、場も与えられない。
 芝居ではちょっといい役が来たりすることがあっても、バウ主演や全ツでいい役がもらえることはあっても、本公演のショーでは場面をもらえない……てなあたりで、立場を分けられていた。
 
 ショーで1場面もらう、センターに立つ。つーのは、トップスターに必要なスキルで、トップかいずれトップにするつもりのスターにしかさせない。
 やっぱ特別なんだよね、ショーの真ん中って。脇役には生涯必要ないスキルだし、卓越した実力か、スターオーラのどちらかがないと務まらないわけだし。

 劇団がゆーひくんをどう考えているのか計りようがないが、彼の高い学年を考えれば、そろそろショーで場面を持っても仕方ないところまで来たと思った。
 もちろん、うれしいよ?
 ゆーひセンターだー、ほえー。とは思った。刮目して見たさ。

 3番手としてちょろっとセンターのある大劇場公演では、学年の高さ、キャリアの長さで乗り切った感があった。
 しかし、完全な2番手として作品自体を支えなければならない全ツ版において、ゆーひくんは空間をもてあましていた。
 中詰めでトップ娘役を相手に、場を牽引するには至っていなかった。

 真ん中に立つには、弱い。
 ナニか足りない。

 わたしはゆーひくんが好きで、ゆーひくんがスターとして真ん中にいてくれるのはうれしいけれど、大歓迎だけど、客観的に見て真ん中の仕事が出来ているとは、言えないよなあ。

 そう思っていた。
 

 あれから、2年。
 たった、2年。

 『愛と死のアラビア』『Red Hot Sea』で、ふつーにセンターに立って1場面を担う彼を見て、驚愕する。

 かっこいい。

 いやその、ゆーひくんは下級生時代から超かっこよかったけど、そーゆー外見のことじゃなくて、あの広大な大劇場のセンターに立って、空間を支配する力を持つゆえの、かっこよさなんだってば。

 おどろいた。
 いつの間に、こんなになっていたの? こんなに頼りがいのある、大人の男になっていたの?

 わたしにとってのゆーひくんは、すみっこで視線をそらしているクールな男の子で。そう、いつまでも「男の子」で、大人の「男」ではなくて。
 ケロの弟で、大きなカラダでにーちゃんのあとをくっついてくるかわいい子で。
 永遠の25歳ってゆーか、大学出てちょっとだけ経ちました的年代の、モラトリアムな青年で。

 大空祐飛が大人になっているなんて、知らなかった。

 花公演初日、銀橋に立って歌うゆーひくんの、堂々たる男ぶりにただただ驚きました。
 「スター」じゃん。彼って、なんの遜色もない、ほんとに「スター」なんじゃん!!

 ……遅咲きにもほどがある、てなもんだがな。
 ふつーは研12くらいでこれくらいのことはしているもんだと、思うけれど。

 ひとはそれぞれ。
 成長のスピードも、もっとも美しく花開く時期にも、差があって当たり前。
 ただタカラヅカでは研7までに基礎を身につけ、研10あたりでキャラを確立、研12くらいでトップスターになってもいいだけのオーラとキャリアを得ていなければならない、つーだけで。

 現代人の成長はかなり遅くなっている。
 昔の25歳は大人……というか、女性なら「結婚適齢期を過ぎてしまった」年齢とされていた。ほんの20年前のドラマが、「24歳なのに独身、このままじゃオールドミスとして後ろ指さされることになる!」と焦るものだったりするわけだから。
 現代では25歳はまだ若者だ。時代がチガウんだ。
 ヅカも、20年前はさらに若くして芸風が確立していた。研10でトップになって研14で退団とかだったわけだし。どんどん成長に時間がかかるようになっている。

 ゆーひくんが研17で、ふつーの路線スターの倍の時間を掛けて花開くのだって、アリだろう。

 彼がトップスター候補なのかどうかは、一般ファンには知るすべがない。
 トップと2番手の学年が逆転しているなんてのは、大抜擢アリの月組でしか見たことがないし、第一、研7でトップになった天海祐希の2番手が研7以上なのは当然のことだったからな(研7のトップとそれ以下の2番手3番手の組なんて嫌だ、新人公演じゃん!)。

 立場的なことはよくわからないが、丸10年ゆーひくんを眺めてきたモノとして、彼の成長ぶりが感慨深い。
 あのふてくされた顔で踊っていたきれいな男の子が、こんなところまで来た。

 ずっと「知っている」と思っていた人に、「再会」した驚きと喜び。

 大人で、とびきりいい男になったゆうひくんが、うれしい。
 

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