萌えたいわけじゃないけど、腐女子萌えでもせんとやっとれん。
 と、初日を見たときに思った、『愛と死のアラビア』

 とりあえず、繰り返し観ているうちにキャラクタを好きになったので、マンガ・アニメ的な萌えはさがせるよーになった。めでたい。

 繰り返し観ているうちに、印象は変わってくる。
 原作を知らないわたしは、ふつーに初見時にクライマックスで泣いた。

 2回目は構成の悪さに気を取られた。

 3回目は、まとぶんの熱演に泣かされた。

 4回目以降はわりと俯瞰して。

 『愛と死のアラビア』の「泣けるところ」は、トマス@まとぶんが投獄されてからだと思っている。そこまでは、なんとも構成が悪く、平坦だ。

 だけど、なにしろ週1〜2ペースで通っていたので、いろいろ思うところも考えるところもあるわけで。
 愛着も湧いてくるし、役者たちの変化も気になるわけで。

 
 千秋楽の日、じーんと泣けたのは、ムハンマド・アリとイブラヒム親子の場面だ。

 オスマン帝国の中間管理職、ムハンマド・アリ@星原先輩。理不尽な命令を拒絶できず、大切なモノを守るために苦渋の決断をする。
 彼の苦しさ、怒りや悲しみが伝わってくる。
 なのにバカ息子トゥスン@壮くんは、パパを責めるしさ。
 這いつくばって懇願する息子の、悲鳴のような声を聞きながらも、立ち続ける姿が、痛々しくてさ。
 「私の友を殺さないで下さい」……マイク無しで叫ぶ壮くんの声がかすれているのも、せつないさ。本気で叫んでるんだよ。

 そんな父の痛みを知りながらも、語らずにはいられないイブラヒム@ゆーひの、静かな情熱もまた、すげー真摯で。

 この父にして、この息子有り。

 痛みを飲み込み、義務をまっとうする。

 イブラヒムは、重ねて見れば見るほど、おもしろい男で。
 クールで有能、なのはたしかだけれど、実はかなりの情熱家。
 トマスのこと、好きだよね。静かにひそかに、好きだよね。

 たしかカイロの宮殿でだったと思うけれど、やりとりの中でトマスを見て思わず彼の方に行きかけるんだよね。すぐに我に返るけれど。(トマスはもちろん気づいてない)
 トマスの決闘時も、トマスの味方として見守ってるんだよね。ときどきトマスの名を呼ぶのはアレ、なんなんですか。言うときと言わないときがあるんで、アドリブなんだろうな。想いがうっかり声に出てしまうときがある、らしい(笑)。(トマスはもちろん気づいてない)
 トマスに「友よ!」と呼びかけるときの誇らしげな、うれしそーな顔。あー、こいつ、たしかにトゥスンと同じDNA持ってるわ……と思わせる一瞬(笑)。(トマスはいきなり「友」呼ばわりされてびびっている)
 牢獄にトマス救出に行き、トマスに拒絶されたときの「愕然っ」ぷりもまた、素晴らしい。(トマスはもちろん気にしてない)

 ツンデレの名に恥じず、なんとも愛しい意地の張り方です、おにーちゃん。
 そして、トマスにまーーったく相手にされていない様が、たまらなく萌えです。

 片想いスキーですからわたし!
 王子様でエジプト国の重鎮のひとりで、地位も権力も富もあったりまえに持っていて、若く美しくストイックな色気を持ち、聡明でクールでそのくせ勇敢だとかもてはやされている、なにもかも持ち合わせたはずの人なのに、トマスに片想い。

 トマスにはひたすら貢ぐだけ、尽くすだけ。されど一顧だにされない。

 なんなのそのツボど真ん中な萌えシチュエーション?!
 あんだけ美しい人が報われない恋に甘んじているってナニ?!

 イブラヒムがひそかに想いを寄せている、つーだけでも、トマスの株が上がりまくりですわよ。
 あれほどの男に愛されていたら、そりゃー株も上がるわよねー。

 ただ惜しいのはトマスがあまりに受くさいので(笑)、イブラヒムまで姫になっちゃうとどーしよーもないのよ。なんとか攻で踏み止まってほしいものだ。

 トゥスンを愛し、トマスを愛しながらも自ら一線を引いた態度でしか接しない、その姿にくらくら来ます。
 あああ、好きだなあ、イブラヒム……。

 イブラヒムの不器用なやさしさ、甘さを知った上で見ていると、ムハンマド・アリとイブラヒムのトマス処刑について語る場面、似たもの親子のぎりぎり感漂うやりとりは、切なくてたまりません。

 
 とまあ、千秋楽の親子対話で泣かされたのは事実だが、そのあとさらにトゥスンにどーんと泣かされるとは、マジで思ってなかった。
 壮くんなのにねえ……。

 
 さて、トマスを愛する男たちのうちのひとり、ぶっちゃけトマスの本命ダーリン、トゥスンくん。
 
 どれほど多くの男たちがトマスLOVEだったとしても、彼のハートを射止めたのは駄々っ子トゥスンくんだった。

 やっぱしさ、欲しいモノを「欲しい」と言える人は強いと思うよ。
 イブラヒムが愛を心に秘めて黙って耐えている横で、「トマス愛してる」って100回叫んじゃうよーなヤツがいたらそりゃ、そっちが勝つわな。
 トゥスンがあの大きな瞳をころっとさせて「キミが欲しいんだ」とかゆってきたら、いやアラブなキミたちはソレがアリなのかもしんないけど俺はキリスト教徒だしキリスト教では禁止されているわけでソレはまずいっちゅーかこまるっちゅーかうわわもおいいかながされちゃってもしかたないここアラブだしインシャラー。……てな展開。うん、仕方ないよな、トマス。

 本編中ナニ気に笑えるのは、アノウド@彩音の手当てをしているときの、トマスとヤシム@だいもんの会話にて。
 アノウドの顔を覆ってやるためにトマスが指定する、ベール。
 金の縁飾りの付いた、豪華で美しい布。
 持ってこい、と命令されたヤシムがびびるほどの高価で特別な品らしい。

 ヤシムがご丁寧に、解説してくれるんだ。

 トゥスンが、トマスに贈ったモノだって。

 ヒロインが身を飾るのになんの遜色もなかった美しく豪華な装飾品が、男が男に贈ったモノって!!(笑)

 トゥスン、どんな顔して贈ったんだ。
 いや、想像つくけど。

 トマス、どんな顔して受け取ったんだ。
 ふつー困惑するだろ、男の子からそんなもん贈られたら(笑)。

「特別に手に入れた逸品だ、美しいだろう」
「ああ、すごいな」
「キミのために手を尽くしたんだ。この金色がキミの肌や髪に映えると思って。さあ、身につけてみてくれ」
「え……私の、ため?」
「思った通りだ、とても似合う。美しいよ、トマス」
「えーっと……あー、その、ありがとう。でも汚してしまうといけないから」
「なんで取ってしまうんだ、いいよ汚しても。また別の物を手に入れて贈るよ、キミの美しさに似合う物を」
「いやほんと、キモチだけ受け取っておくから!! ヤシム、これをしまっておいてくれ、トゥスン・ベイからの贈り物だ、丁重になっ」
「はーいトマス様ー」


 得意満面で歯の浮きそうな口説き文句をあったりまえに並べ立てる天然タラシなトゥスンと、そんな年下無邪気攻を相手に困惑しつつときめくトマスの年上常識人受の素敵カポーぶりが目に浮かび、わくわくしますよ。

 
 トマス、トゥスン、イブラヒムの三角関係は、大変ツボです。
 どのカップリング、どの組み合わせだとしても、萌えだー(笑)。


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