聴きたかったのは、「ブルース・レクイエム」だ。
『凍てついた明日』が再演され、シビさんの歌声への郷愁は最高値に達していた。WSには「歌手」がいなかったんだもの。ハマコは「ブルース・レクイエム」は部分しか歌ってくれてないし。
「ブルース・レクイエム」を聴きに行こう……わたしとnanaタンの、『イゾラベッラ サロンコンサート(第3回 矢代鴻)』へ参加する合言葉だった。
でも。
たしかに「ブルース・レクイエム」が好きだし、とても大切な思い出の曲で、実際に再びナマで聴くことができて感涙しきりだったけれど。
わたしが会いたかったのは「歌手・矢代鴻」だった。
「ブルース・レクイエム」はきっかけとか言い訳でしかない。
シビさん自身がMCで言い訳していたように(笑)、ミュージカル曲なんつーもんは、そのミュージカルの流れの中ではじめて成立するモノであって、1曲だけ抜き出して歌ったからってなんぼのもんぢゃない。
「ブルース・レクイエム」を聴くという目的は果たされたけれど、それ以上に素晴らしい歌声の数々に泣かされた。
……のはともかくとして、MCはお笑い一直線。
シビさんの言葉通りに再現することは不可能なので、脳内要約。
・3時間も前に入り、楽屋……というか、隅にトイレットペーパーなんぞが積んである小さな箱のような部屋で待機していた。待つのが長かった。
・このコンサートにも、台本はあった。ちゃんと用意されていたらしい。が、シビさんは「要りません、アタシは勝手に喋ります」と全ボツにした。
・「ブルース・レクイエム」の曲紹介時に、「星組の安蘭けいさんがあちらにいらしてます」と、客席のトウコちゃんを紹介。
・2階席組は1階席の様子なんかわかんなかったから、びっくりした。この小さな会場にジェンヌ来てるんかよー……つーか、よく見ると1階席の4分の1は関係者席(歌劇団関係)だった。つーと70名のうち一般人は50名強? シビさん自身のお客様やFCの席もあるだろうし、純粋な一般客は何人いたんだ、とくに1階席は??
・「安蘭けいさんが来ているからといって、そちらばかり見ないように。今日の主役はワタクシですから。いいですね? アタシを見ているフリで目だけ横目にして安蘭さんを見ていてもわかるんですからネッ!」
・小さなステージ上にはストロー付き水のペットボトルとハンカチが用意されていた。が、「ハンカチ? いらない! アタシ汗かきません」と無碍に。そ、そうか、汗かかないんだ。(矢代鴻トリビア)
・水のペットボトルを手にし、客席に向かってずずずいっと突き出す。
・えーとソレは、なんのパフォーマンス?
・「瀬奈じゅんが作ってくれましたっ」
・シビさんは通常早変わりなんつーものとは無縁。着替える時間ならいっぱいある、ぶっちゃけ出番がそうナイのがふつー。なのに卒業公演であった『A-“R”ex』は、出番いっぱい、早変わりまであった。大忙しでペットボトルのフタを開け閉めして水を飲んでいるシビさんに「穴開けたらええですやん」と、大阪弁丸出しきりやんが、わざわざキャップに穴を開けてくれたらしい。
・ペットボトルのフタ……あのキャップに穴開けるって、すごいよねー……固いよねー……。ふつーに売ってるのにね、ストロー用のワンタッチキャップ。
・とまあ、DCではきりやん活躍。さらに公演は青年館へ。
・「瀬奈じゅんが、『母上、コレをお使い下さい』って作ってプレゼントしてくれたのっ」……なんの変哲もない水ボトルのキャップは、紫色に着色(?)の上、スパンコールまできらめいていた。
・「キラキラしてるでしょー? ステージにはこっちの方が合うかと思って、こっちを持って来たの!」……孝行息子自慢をするシビさん。
・キラキラキャップを作るあさこちゃんもすごいが、白キャップに穴開けただけの男の手作りきりやさんにもときめきます(笑)。
・そして、「こっちを持ってきた」ってことは、白キャップに穴を開けただけ、のきりやんプレゼント品も、ちゃんと家に置いてあるんだってことに、感動した(笑)。よかったね、きりやん。あさこちゃんの凝った作品と同列に扱われてるよ〜〜。
・歩くこともままならないほどぎっしりテーブルが詰め込まれているのに、客席降りアリ。
・キュートな恋の歌を歌いながら、客席に語りかけるシビさん。客席はみごとに女性ばかりなので、一本釣りで愛の言葉を語りかけてもなんか違和感?(笑) 「アタシに言われても困るわよね?」といちいちセルフツッコミ(歌の合間ですがな!)を入れるシビさん。
・下級生時代、グループサウンズの追っかけをしていたらしい。(矢代鴻トリビア)
・のどかな時代だったんだな……今の下級生がそんなことをした日にゃあ、ネットで噂になってフルボッコだわ。
・そーやって一緒に追っかけをしていた、卒業公演も観に来てくれた同期生が、最近亡くなったらしい。人との出会いがあったからここまでやってこれた、友だちがいたから今の自分があると、あれほど笑わせまくっていたMCで、それでも一気に泣かせてくれたりするから、さすがだ。(台本ナシで!)
わたしはシャンソンもジャズもさっぱりわからない無教養な人間だが、シビさんの歌うそれらの曲は好きだ。
あざやかな、ドラマがあるから。
過去形でしあわせを歌う「La Boheme」の切ない美しさ、オチまで完璧な「想い出のサントロペ」。
「若い頃なら歌えなかった。今のワタシでも、まだ早いかもしれない」と言う、「時は過ぎてゆく」。
まだ早いかもしれない……タカラヅカを定年まで勤め上げた舞台人が、その年輪をもってしても、「まだ早い」と言う、奥の深さ。
この人はまだまだ進化し続けるんだ。
ゴールなんかじゃない。
まだ成長し続ける。前へ進み続ける。
シビさんを見ていて強烈に思うことは、大人になることの、愛しさと誇らしさだ。
今よりも、未来の自分は素晴らしいかもしれない。たしかにトシは取るけど、婆になるけど、そんな肉体的なことではなく、美しいなにかを得ているかもしれない。
今こうして、美しい姿で背筋を伸ばし、輝いている人が目の前にいる。
「ワタシは友だちよ、呼んでくれたらいつでも駆けつけるわ!」と歌う「You’ve Got a Friend」。
歌は英語なんだけど、すげーデジャヴ、この曲をシビさんの声で、日本語で、まったく別の歌詞で聴いたことがある……ああっ、そーだ、『デパートメント・ストア』でシビさんがタータンとデュエットしてた! まりえったの合いの手入りで!!(笑) で、たしかビデオでは著作権ゆえにCUTされてるマボロシの名デュエット……。
アンコールはもう1曲英語の曲があったよーな?
そのあとさらに「酒と泪と男と女」……河島英五っすか! 凛々しくキメてくれた。
さらにアンコールで、新人公演(!)での初ソロ曲をアカペラで披露してくれた。さ、さすがにわからん(笑)。
若い頃のシビさんも、きっと素敵だったろうと思う。
でも、今のシビさんの方が美しく、豊かだと思う。そして、これからのシビさんもさらに、深みを増していくのだろう。
こんなふうに、美しい人になりたいと思う。
時間を重ねるからこその美しさを、得たいと思う。
最後はご本人によるお見送り付き。ひとりずつと握手してくれた。
実際、目の前にしたシビさんは小顔でスレンダーで、とても美しい人だった。この年代の女性がこれだけ小顔で、このスタイルでこの姿勢で……かっこよすぎ。
そこに「ドラマ」を創り出す歌声。
ただ上手い、きれいなだけの歌声には、惹かれない。興味がない。
女優として、舞台人として、歌い続けたシビさんだからの歌声。
心から満足して店をあとにしました。
胸の奥で、幾重にも反響している。彼女の歌う、「物語」が。
『凍てついた明日』が再演され、シビさんの歌声への郷愁は最高値に達していた。WSには「歌手」がいなかったんだもの。ハマコは「ブルース・レクイエム」は部分しか歌ってくれてないし。
「ブルース・レクイエム」を聴きに行こう……わたしとnanaタンの、『イゾラベッラ サロンコンサート(第3回 矢代鴻)』へ参加する合言葉だった。
でも。
たしかに「ブルース・レクイエム」が好きだし、とても大切な思い出の曲で、実際に再びナマで聴くことができて感涙しきりだったけれど。
わたしが会いたかったのは「歌手・矢代鴻」だった。
「ブルース・レクイエム」はきっかけとか言い訳でしかない。
シビさん自身がMCで言い訳していたように(笑)、ミュージカル曲なんつーもんは、そのミュージカルの流れの中ではじめて成立するモノであって、1曲だけ抜き出して歌ったからってなんぼのもんぢゃない。
「ブルース・レクイエム」を聴くという目的は果たされたけれど、それ以上に素晴らしい歌声の数々に泣かされた。
……のはともかくとして、MCはお笑い一直線。
シビさんの言葉通りに再現することは不可能なので、脳内要約。
・3時間も前に入り、楽屋……というか、隅にトイレットペーパーなんぞが積んである小さな箱のような部屋で待機していた。待つのが長かった。
・このコンサートにも、台本はあった。ちゃんと用意されていたらしい。が、シビさんは「要りません、アタシは勝手に喋ります」と全ボツにした。
・「ブルース・レクイエム」の曲紹介時に、「星組の安蘭けいさんがあちらにいらしてます」と、客席のトウコちゃんを紹介。
・2階席組は1階席の様子なんかわかんなかったから、びっくりした。この小さな会場にジェンヌ来てるんかよー……つーか、よく見ると1階席の4分の1は関係者席(歌劇団関係)だった。つーと70名のうち一般人は50名強? シビさん自身のお客様やFCの席もあるだろうし、純粋な一般客は何人いたんだ、とくに1階席は??
・「安蘭けいさんが来ているからといって、そちらばかり見ないように。今日の主役はワタクシですから。いいですね? アタシを見ているフリで目だけ横目にして安蘭さんを見ていてもわかるんですからネッ!」
・小さなステージ上にはストロー付き水のペットボトルとハンカチが用意されていた。が、「ハンカチ? いらない! アタシ汗かきません」と無碍に。そ、そうか、汗かかないんだ。(矢代鴻トリビア)
・水のペットボトルを手にし、客席に向かってずずずいっと突き出す。
・えーとソレは、なんのパフォーマンス?
・「瀬奈じゅんが作ってくれましたっ」
・シビさんは通常早変わりなんつーものとは無縁。着替える時間ならいっぱいある、ぶっちゃけ出番がそうナイのがふつー。なのに卒業公演であった『A-“R”ex』は、出番いっぱい、早変わりまであった。大忙しでペットボトルのフタを開け閉めして水を飲んでいるシビさんに「穴開けたらええですやん」と、大阪弁丸出しきりやんが、わざわざキャップに穴を開けてくれたらしい。
・ペットボトルのフタ……あのキャップに穴開けるって、すごいよねー……固いよねー……。ふつーに売ってるのにね、ストロー用のワンタッチキャップ。
・とまあ、DCではきりやん活躍。さらに公演は青年館へ。
・「瀬奈じゅんが、『母上、コレをお使い下さい』って作ってプレゼントしてくれたのっ」……なんの変哲もない水ボトルのキャップは、紫色に着色(?)の上、スパンコールまできらめいていた。
・「キラキラしてるでしょー? ステージにはこっちの方が合うかと思って、こっちを持って来たの!」……孝行息子自慢をするシビさん。
・キラキラキャップを作るあさこちゃんもすごいが、白キャップに穴開けただけの男の手作りきりやさんにもときめきます(笑)。
・そして、「こっちを持ってきた」ってことは、白キャップに穴を開けただけ、のきりやんプレゼント品も、ちゃんと家に置いてあるんだってことに、感動した(笑)。よかったね、きりやん。あさこちゃんの凝った作品と同列に扱われてるよ〜〜。
・歩くこともままならないほどぎっしりテーブルが詰め込まれているのに、客席降りアリ。
・キュートな恋の歌を歌いながら、客席に語りかけるシビさん。客席はみごとに女性ばかりなので、一本釣りで愛の言葉を語りかけてもなんか違和感?(笑) 「アタシに言われても困るわよね?」といちいちセルフツッコミ(歌の合間ですがな!)を入れるシビさん。
・下級生時代、グループサウンズの追っかけをしていたらしい。(矢代鴻トリビア)
・のどかな時代だったんだな……今の下級生がそんなことをした日にゃあ、ネットで噂になってフルボッコだわ。
・そーやって一緒に追っかけをしていた、卒業公演も観に来てくれた同期生が、最近亡くなったらしい。人との出会いがあったからここまでやってこれた、友だちがいたから今の自分があると、あれほど笑わせまくっていたMCで、それでも一気に泣かせてくれたりするから、さすがだ。(台本ナシで!)
わたしはシャンソンもジャズもさっぱりわからない無教養な人間だが、シビさんの歌うそれらの曲は好きだ。
あざやかな、ドラマがあるから。
過去形でしあわせを歌う「La Boheme」の切ない美しさ、オチまで完璧な「想い出のサントロペ」。
「若い頃なら歌えなかった。今のワタシでも、まだ早いかもしれない」と言う、「時は過ぎてゆく」。
まだ早いかもしれない……タカラヅカを定年まで勤め上げた舞台人が、その年輪をもってしても、「まだ早い」と言う、奥の深さ。
この人はまだまだ進化し続けるんだ。
ゴールなんかじゃない。
まだ成長し続ける。前へ進み続ける。
シビさんを見ていて強烈に思うことは、大人になることの、愛しさと誇らしさだ。
今よりも、未来の自分は素晴らしいかもしれない。たしかにトシは取るけど、婆になるけど、そんな肉体的なことではなく、美しいなにかを得ているかもしれない。
今こうして、美しい姿で背筋を伸ばし、輝いている人が目の前にいる。
「ワタシは友だちよ、呼んでくれたらいつでも駆けつけるわ!」と歌う「You’ve Got a Friend」。
歌は英語なんだけど、すげーデジャヴ、この曲をシビさんの声で、日本語で、まったく別の歌詞で聴いたことがある……ああっ、そーだ、『デパートメント・ストア』でシビさんがタータンとデュエットしてた! まりえったの合いの手入りで!!(笑) で、たしかビデオでは著作権ゆえにCUTされてるマボロシの名デュエット……。
アンコールはもう1曲英語の曲があったよーな?
そのあとさらに「酒と泪と男と女」……河島英五っすか! 凛々しくキメてくれた。
さらにアンコールで、新人公演(!)での初ソロ曲をアカペラで披露してくれた。さ、さすがにわからん(笑)。
若い頃のシビさんも、きっと素敵だったろうと思う。
でも、今のシビさんの方が美しく、豊かだと思う。そして、これからのシビさんもさらに、深みを増していくのだろう。
こんなふうに、美しい人になりたいと思う。
時間を重ねるからこその美しさを、得たいと思う。
最後はご本人によるお見送り付き。ひとりずつと握手してくれた。
実際、目の前にしたシビさんは小顔でスレンダーで、とても美しい人だった。この年代の女性がこれだけ小顔で、このスタイルでこの姿勢で……かっこよすぎ。
そこに「ドラマ」を創り出す歌声。
ただ上手い、きれいなだけの歌声には、惹かれない。興味がない。
女優として、舞台人として、歌い続けたシビさんだからの歌声。
心から満足して店をあとにしました。
胸の奥で、幾重にも反響している。彼女の歌う、「物語」が。
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