腐った話をしよう。

 腐女子脳による、BL視点の『凍てついた明日−ボニー&クライドとの邂逅』だ。そっち系苦手な人は読まないように。今回本気で男×男話行きます。
 

 クライドを救うことが出来たのは、テッドのみだと思うんだ。

 救う……とりあえず、生命を。

 
 えー、下敷きにするのは主要人物(クライド、テッド、ジェレミー、アニス、ジョーンズ)がみんな8等身美形で、かつヒロインとクライドの間に「愛」があったBチームの方ね。クライドがヒロインのアニスを心から愛し、それゆえにコワレてしまっている物語。
 なにをもって「主要人物」とするか、つーと、「クライドに対して思い入れがあるか」よ。だからボニー、レイモンドなどは脇役認定。彼らはクライドを愛していないし、クライドも彼らに興味がない。

 
 生きる意味を見失っているクライドを、こちら側へつなぎ止めるには、彼の意志とは関係なく、「お前が必要だ」と示すことだと思う。
 クライドの家族だのジェレミーだのがそれを言ったところで、クライドには届かない。
 その程度の声が届くようなら、クライドはこんなところまで堕ちて来ていない。
 言葉でどうこう言ったって、ダメなんだよ。

 クライドのキモチなんか考えるな。力尽くで、拉致ってしまえ。

 閉じこめて、ただ愛だけを注ぎ込め。
 アイシテイル、ヒツヨウダと訴え続けろ。

 言葉だけではなく、直接的な抱擁と、欲望で、彼の存在意義を思い知らせろ。

 
 BLとゆーものは、大人のファンタジーの一種だと思っている。
 SFとか異世界ファンタジーと同じ、テーマをより明確に描くための手段。
 親に隠れて子犬を飼う少年の葛藤より、全人類に背いてエイリアンを匿う少年の方が、よりドラマティックに物語を展開できる。見つかったら引き離される、のは同じでも、子犬とエイリアンでは禁忌の度合いがチガウ。背負うモノ、葛藤の大きさがチガウ。
 現代の高校生のカップルが親に反対されてつきあえないのと、剣と魔法の王国の、敵対する勢力の姫と騎士が引き裂かれるのでは、テーマの描かれ方がチガウだろう。
 描きたいテーマをよりわかりやすく、ドラマティックに描くために、ファンタジーは有効な手段である。

 BLもまた、人と人とのつながり、葛藤や愛憎を「ファンタジー」世界を舞台にすることで純度を高めて抽出する手段だ。現実とは別の、フィクション、ルールをわかった上でたのしむジャンル。
 大人向きだから、エロスや歪みを過分に含む。

 てゆーか、エロあってこそだろ、BLは(笑)。

 テッド×クライドで、やること一通りして下さい。

 下手なやさしさは捨て、ドSに徹するんだ、テッド。

 BLの1ジャンルとして長い伝統を持つ「監禁モノ」(笑)。愛ゆえに相手を監禁し、愛欲の限りを尽くす。大抵は、攻が受を監禁する。
 最初は反発と嫌悪しかなかった受だが、抱かれ続けるウチに、次第に攻を愛するよーになる、というのがお約束。

 常識でいうとこんなのただの犯罪だし、女の立場で考えると「ふざけんな、レイプ魔を愛するわけないだろ」ってなもんだが、多くの人々の支持を受けているジャンルであることはたしか。
 あくまでもファンタジーだから、現実の良識を持ち込んではならないのだ。
 それは「歪むほどの、激しい愛」。ただふつーに愛するだけではなく、狂気の域に達するほど愛す・愛される、ということ。
 BLは女性目線で描かれるから、攻は魅力的でなければならない。こんな狂った愛し方をしなくてもいずれ受は攻を愛したろうに、てな納得のいく相手でなければならない。
 恋人同士が相愛になる過程を間違えたかすっ飛ばしたか、という物語に落ち着かなければいけない。
 罪を犯すほど、狂気に陥るほど、容赦ない愛だけの世界。

 ……コレを、テッド×クライドでヨロシク。

 クライドが自分自身に愛情を持てないのなら、誰かが力尽くで愛してやるしかない。
 クライドを必要としている人がいることを、思い知らせてやるしかない。
 なんの責任も持ちたくないクライドが過剰な愛を拒絶しようとしても、彼の気持ちなんか関係なく、愛を押しつけるしかない。

 彼の母も姉も、弟分も、できなかった。彼らはクライドを愛していると、必要だと言うだけで、手を汚そうとはしなかった。
 唯一ジェレミーはかなりがんばってクライドの側にいたのだけど。結局彼は、クライドの嫌がることはなにもできない。だからクライドが死にたがったら、黙って死なせてやることしかできなかった。

 そうじゃなくて、死にたがるあのバカ美形男を、ぶん殴って「生きろ、このバカ」と言う人間が必要だったんだ。
 彼の側で彼に嫌われないようにしている人間ではなく、彼の敵であり、彼に嫌われても仕方のない人間が、やるべきなんだ。
 生きることにどんな意味があるとか、罪と過ちと傷だけ背負って生きるのはつらいとか、四の五言わせず「ただ、生きろ」と。あとのことは全部、まず生きてから考えろと。

 ……もちろん、友情としてソレをやることは出来る。
 愛にはいろいろあるんだから、なにも全部恋愛だとか性愛に変換することはない。

 しかし、人間にとってもっともプリミティヴな感情と行為に昇華してしまった方が、よりわかりやすいんだ。

 テッドがクライドを死なせないために罪を犯したとする。
 クライドを逃がすためにフランク捜査官を射殺して、クライドを連れて逃げたとして。
 そのテッドの行動の理由を「友情だ」というより、いっそ「愛している」と言った方がクライドも、楽だろう。
 友情、と言われてしまったら、それは無償の行為になってしまう。無償の厚意ゆえにテッドの人生どん底、クライドからすりゃ、そんなもん一方的に背負わされたら重いっつーの。
 でも恋愛だと言えば、相応の欲を持っての行動になる。クライドの心だとか身体だとか、なにかしら見返りを求めての行動だと納得できる。

 人間、無償のモノには、鈍感になる。

 自分がナニも代償を払わないから、与えられてあたりまえ、あってあたりまえ。空気とかきれいな水とか親の愛とか。
 無償の愛では、クライドを救えない。アニスから逃げたように、重荷を背負いたくなくて心を閉ざすだけ。

 そーゆー高尚なモノではなく、もっと下世話に、原始的に。
 愛している。愛を与える代わりに、ナニか返せ。心を。……それが無理なら、カラダを。快楽に溺れ、無防備になる一瞬を。

 テッドに求められ、一方的に愛を与えられることで、反面、カラダを奪われることで、「求められている」「必要とされている」ことを、クライドが思い知るように。

 クライドが、愛を認めるまで。
 愛から逃げることしか知らなかった、あのダメ男が、愛を受け入れることを知るまで。
 彼が、テッドを愛するまで。

 BLのお約束に則って、監禁モノで愛を貫いてくれ。
 エロと歪みで彩った、とびきり切ない愛の物語を、描くことができるさ。

 
 それはたしかに、別のカタチでの「明日」だと思うよ。

 
 ……実際、テッドのヘタレっぷりが、もどかしくてな。

 ナニあの男。1幕では2番手つーか、ヘタしたらW主演? てくらいの勢いなのに、あっとゆー間に逃げ腰になっちゃって。
 自分に自信が持てないゆえにクライドから手を離したんだよ。結局、自分を守っただけじゃん。
 だからクライドは、ひとりで堕ちていくしかなかった。トモダチのふりして、卑怯なヤツ。
 そしてテッドは、自分が卑怯だということも自覚しているんだろうけどな。自覚していじけてりゃーいいってもんでもないさ。あのいじけっぷりが、彼の人間らしさで、愛しさでもあるんだけどさ。

 テッドに、男になって欲しいよ。
 愛した男ひとり、救って見せろ。人生懸けて。

 つーことで、テッド×クライド希望。


コメント

日記内を検索