初体験の相手ってのは、重要だ。
 いきなり超ベテランが相手で、すっげー愉しませてもらって、満足できたことはよかった。
 しかし。

 ソレが基準になってしまうと、あとがキツイ。

 ベテランのスタンダードを、経験不足の若者に求めても、無理ってことだ。
 肩すかしを食らってしまう。
 べつに、その若者がヘタだってわけじゃないのに。十分上手いのに。
 若くてきれいな分、見た目の楽しさだってあるのに。

 最初がシビさんだったのは、良かったのか、悪かったのか。

 
 すっかり味を占めて、『イゾラベッラ サロンコンサート(第4回 和音美桜)』へ行ってきました。
 シビさんにしろたっちんにしろ、発売開始10数分で完売なんで、キャパとオペレータの処理速度がそんなもんなのかもしれない。
 今回わたしは電話つながらなかったけれど、nanaタンが無事GETしてくれました。

 前回で勝手がわかっているので安心して、ある意味油断して参加しました。nanaタンと、今回はユウさんも一緒。3人だとどんなテーブル配置になるのかと思ったら、6人席で3人ずつグループで坐らされた。

 初日っす。
 たっちん人生はじめてのソロ・コンサート、しかも初日。

 えーと。

 ぐだぐだでした。

 大変なことになってました(笑)。
 「歌を歌う」ことと、「コンサートを開く」ことは、イコールではないスキルが必要なのだと、痛感しました。

 歌はね、いいの。
 たっちんだから。
 もちろん、すげーうまいのよ。

 曲は『WEST SIDE STORY』とか『ファントム』とか『モーツァルト!』とかの馴染みのある曲で、素晴らしい歌声でございました。

 しかし。

 彼女は、いっぱいいっぱいでした。
 アタマの中にあるのは「失敗しないで、進行させる」「終わらせること」であって、「音で楽しむ」ことは二の次だった。

 歌だけに集中できていない。
 歌い出せばうまいんだけど、たぶん、彼女のMAXはもっと別にある。

 アタマの中は手順で一杯、「言うべきコト」を言うことで精一杯で、終始なにかに急き立てられるように喋っていた。
 喋っているときはとにかく大変そうで、痛々しくて、歌い出すと途端リラックスするのがわかった。

 このコンサート・シリーズ、最初にわたしが参加したのがシビさんだったから。
 彼女はそりゃあ自由自在に喋り、観客を笑わせ、愉しませ、のびのびと歌っていた。
 空間のすべてを、自分で操っていた。支配していた。
 シビさんの操る空間にいることが、心地よかった。

 ソレを基準値にして、次も来てしまったら……うわああ。
 空間を支配するとか操るとか、とんでもない。空間に飲まれないように必死になってあわあわしている女の子が、店の中にひとりでぽつんといた。

 あのー……。
 これは、たっちんが悪いのではなく、プロデュースした人が悪いんだと思うよ。
 彼女は歌手であって、司会者でもエンターティナーでもないんだもの。
 シビさんにできたからといって、たっちんにソレができなきゃいけない、とは、誰も思わないでしょう。

 司会者を付けろ。

 OGでいいから、プロでなくてもいいから、たっちんが信頼している、最低限楽に呼吸が出来る司会者を、用意するべきだった。
 そして会話を司会者に振らせ、進行役をさせる。
 たっちんは受け答えだけして、あとは歌うことに集中。

 たっちんに、歌を歌わせてあげて。
 呼吸をさせてあげて。

 司会進行なんてどーでもいいもので、あんなに混乱させないで。見ていてつらかったってばよ〜〜!!

 ジェンヌのお茶会に、何故司会者がいるのかわかった……。
 受け答えならできても、自分でなにもかも進行させるのはすげー大変なんだ……。

 たっちんの「おぼえてきた台本を一生懸命喋っています」と丸わかりな暗唱ぶりで、「楽しい時間はあっという間に過ぎて、次は最後の曲です」と言ったときにゃあ、アンタ、楽しんでへんやん!! と、盛大につっこんでしまいました(笑)。

 たっちんがほんとうに「たのしんで」歌ったなら、あんなもんぢゃなかったと思うよ。

 空気が動いたと思う。
 たった70席しかないハコの中。
 大劇場2500席の空気を動かすことができる人なんだから。

 
 シビさんは歌いながら何度も客席を練り歩き、盛大に一本釣りをしていたが、たっちんはステージから微動だにせず(笑)。釣りなんてとんでもない、アウェイで闘う孤独な戦士のようだ。笑顔なんだけど。すごいがんばって笑っていたけれど。
 コンサートが終わったあとはまっすぐに店を出て行き、握手はナシ。えええ、たっちんと握手できると期待してたのにー。あれってシビさんだけだったの??

 たっちんはピンクのかわいいドレス姿で、ちっちゃくて細くて、ほんとにお人形さんみたいだった。
 彼女が登場した途端、「かわいー!」と、歓声があがり、拍手が起こった。
 アウェイなんかじゃないよ、みんなみんな、キミが大好きで来たんだよ。……がんばって拍手して、必死に見つめて、歌に聴き入ったけど、ステージのたっちんに伝わったかなあ。最後に握手があったら、じかに伝えるつもりだったんだけどなあ。

 うまいだけでない、きれいなだけでない、物語を綴る歌声。
 この人でミュージカルを見てみたい、この子が表現する物語を見てみたい……そう思わせる力。

 でもって、音を操れる人って、訓練しなくても男役声で歌えるんだね。
 男役の歌「ラ・マンチャの男」を颯爽と歌うのを聴いて、感心した。
 男役として本格的に何年も訓練したわけじゃないのに、ふつーに歌の上手い男役が歌うよーに歌っちゃうんだー。すげー。
 キモチいいアルト、太さのある押し出しのイイ声。

 「歌」だけならほんとうに、すばらしいものを聴かせてくれた。

「本気で歌の上手いクリスティーヌって、はじめて聴いたかも」
「天使の歌声だったねー」
 と、帰り道で話すくらいに(笑)。

 ただ、「コンサート」としての出来は、かなり苦しい。
 すげー素人っぽい催しだった。

 ……来月のルイスはどうなるんだろう?
 彼はシビさんぐらいに喋って歌って場を支配できるんだろうか? 歌うこと、舞台で演技することとは、まったく別のスキルだが?

 ピアニストも今回も前回も同じ人だったけど、わたし的にはかなり不満な人だったしなー。なんであの人なんだろう??
 ただ譜面を弾くだけで、「コンサート」を作る味方にはなってくれない人だぞ?

 いやその、来月は参加しないので余計なお世話にすぎないが……。
 劇団が、興行の方針を見直してくれると良いなあ。
 ジェンヌはもっと、正しく活かそうよぉ。コンサートをやってくれること自体は、すごくうれしいのに。


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