8月12日は、博多へ行く予定の日だった。
 nanaタンとふたりして「きりやんビルを見るのー!!」と意気をあげていた。
 とりあえず日にちだけ決めて、チケットもナニも持ってない。大丈夫、博多座だもん、行けばどっかで観られるよ。当日券に並べば1階後方の車椅子用予備席の一部は売りに出されるだろーし、最悪立ち見でも観られさえすれば、それでイイ。
 なにしろ通い慣れた(笑)博多座だ。勝手はわかっている。

 行き当たりばったりなのは、いつものこと。
 東京手ぶら観劇とか、名古屋手ぶら観劇とか、しょっちゅーしてるもんな、チケットは現地調達基本ってゆーか。

 それでたしか数年前、『マラケシュ』観に博多に通ったよね。なにもかも行き当たりばったりに。

 いつものことなんで、すっかりナメてかかっていた。

 ところがどっこい。

「ムーンライト九州の予約が取れない……」

 思わぬ伏兵。劇場チケットは行きさえすればなんとでもなるが、交通手段はそうはいかない。
 へんだな、『マラケシュ』に通ったときは電車けっこー空いてたよな? ひとりでふたり席ぶんどって寝てたり、寒くない席に移動したりできるくらい、空いてたよな?
 前日にいきなり「明日博多へ旅立とう!」と決めても列車の予約は出来た。
 その刷り込みがあったから、油断していた。

 ……あのときは、お盆期間じゃなかったってことか……。

 世間的にどういう時期か考えず、自分たちの都合だけでしか考えてなかった。
 や、この日しか空いてないんだよ。休みとか他組との観劇スケジュールの都合とか、nanaタンとわたしが一緒に行ける日って。

 博多行き、どーするべ。

 と、思っているところへ、雪組初日。
 ゆみこがあまりにかっこよくて、nanaタンが天高く舞い上がって帰ってこない(笑)。
 博多へ行くアシがない、のはたしかだが、雪初日で確信した、「12日はこりゃ雪組観劇へ変更だな」。

 博多行きをあきらめたからには、わたしも雪組を観るつもりでいた。
 オギーファンで水ファンの端くれですから。
 でも。

 案の定nanaタンは雪を観ると言っていて、先に行って一緒にチケット買っておくよ、と言ってきてくれた(nanaタンの方が家がムラに近いのだ)。
 わたしがここで「nanaタンがゆみこに舞い上がったために忘れられた」と全世界に向けて発表してしまった(笑)、「まっつの切り抜き」も持ってきてくれるって。
 
 水しぇんにもまっつ(の、切り抜き)にも後ろ髪を引かれるが、断った。

 ……猫に残された時間が、もうほとんどないことがわかっていたので。
 できるだけ、家にいようと思った。

 そして、8月12日。
 ほんとーなら、予定通りなら、博多にいた日。
 猫が、息を引き取った。

 猫は、わたしと弟に看取られて、11年と5ヶ月の生涯を閉じた。

 野生の強さか、死期を間近にするまで猫は元気そのもの、いつも通りだった。
 あまりに突然、急変した。

 列車の予約さえ取れていたら、深刻な事態だと気づかずに(気づきたくなくて、思いたくなくて)、旅立っていたかもしれない。いや、前日になって急遽取りやめにして、ツレのnanaタンに迷惑を掛けることになっていたかもしれない。

 博多に行かなくて、よかったのだと思う。
 大切な家族の最期に、そばにいることができて。

 ……博多座『ME AND MY GIRL』と、家族の死が直結で記憶に結びついてしまったことが、悲しいけれど。
 これから博多『ミーマイ』観たかったなあ、と思うたびに、猫のことを思い出すんだ、と決定づけられてしまったことが、悲しいけれど。
 それと同時に、そんなわたしの事情とは関係なく、博多座『ME AND MY GIRL』が素晴らしいモノであってほしいと思う。

  
 そして、今。

 フィラント@キムに会いたいな。と、思う。

 彼が歌う「お気楽ソング」を聴きたい。

 今ムラで公演しているのが、『君を愛してる−Je t’aime−』『ミロワール』だといいのに。

 今やっている公演がどうこう、というわけではなくて。
 癒されるために、『君を愛してる』が観たいなあ。

 未来が見えないくらい、過去だけに囚われてまるまって泣いているときに、救いになる、救ってくれると思うのは、キムくんの明るさと、強さだった。

 べそかきながら、キムに会いたいと思った。

 あの太陽の輝きとアツさで、救って欲しいと思った。

 フィラントの「お気楽ソング」を聴きたい。
 ハマコ神父の「愛について」を聴きたい。

 シンプルに、しあわせな物語を観たい。

 
 ……いやその、わたしのダーリン(笑)は、まっつさんですが。
 地べたにめり込んで立ち上がれないよーなときに、まっつのベドウィン音頭が有効かどうかは……ちょっと……。
 相沢くん@『舞姫』なら、救ってくれたかもしんないけど、アブ・サラン氏@ヒゲの17歳『愛と死のアラビア』が、わたしを癒してくれるとは思えない……(笑)。

 まっつはまっつなだけで、わたしの支えになっているのだけれど。


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