「並び」は梅田の華。
2008年8月22日 タカラヅカ ついに来たか。
いずれなくなるだろうとは思っていたけれど、ついに三番街でのチケット抽選販売がなくなることが決定した。
FCに入っていない一般ファンにとっては、窓口による抽選発売があるというのは、とてもありがたいことだった。
「会への貢献」とやらで半強制的に、自分が購入するわけでもないチケットのために早朝から肉体労働を科せられていた人々にとっては、忌むべきモノだったのかもしれないが、フリーな立場で全組観劇基本の人間には、なくなると痛手だ。
これでもう、最前列での観劇は、不可能になる。
また、新公や千秋楽も観られなくなる。
わたしみたいな、なんのツテもないヅカ友もいない、会にも入っていない、機関誌も買わない、ついでにネットだって最初からあるわけじゃなかった、素のジェンヌに興味なし、ただ舞台を観るだけでいい、ぬるーい人間が、長らくヅカファンをやって来られたのは、梅田でチケット販売があったからだ。
発売日に決まった時間に並んで抽選すれば、希望日と希望席種が買えた。新人公演や千秋楽も買えた。抽選にはずれたら、その労力は全部無駄になるけど、自業自得とあきらめがついた。
労力を惜しまず、運が良ければ、欲しいチケットを買える。
ダフ屋が前日から人を雇って並ばせているのが基本の、チケットぴあ店頭とかの先着順では、買えないチケットを買うことができる、可能性があった。
ムラと梅田だけ先着順ではない発売方式をとっていることで、不公平だとは思っていた。
わたしがもしも、関西以外に住んでいて、大阪在住だってだけで梅田に並び、「最前列買っちゃった、新公も楽も買っちゃった」と毎回言っている人がいたら、「そんなの不公平」と思っただろう。
全国の人が同じ条件で購入できるようにする、べきだと思う。
……思うけど、それはソレとして、その不公平さの恩恵を受けていたわけで。
不公平なチケット販売方式で、他の地方の人よりは得をしていたと思うけれど、それはわたしが選んでそうなったわけじゃない。
地元文化だからファンになっていたよーなもんで、ムラまで片道何万円交通費のかかるところで生まれ育っていたら、存在すら知らないままだったかもしれない。
また、ムラに住んでいたって、ヅカに興味のない場合もあるし、「たまたまそこに住んでいた」ことによって得したり損したりはヅカに限らずあたりまえにあることで、言っても仕方がない。
わたしはたまたま、得なところに住んでいた。
だから、他の地方の人たちより、チケットを入手しやすかった。
たまたま得をしていただけだから、ソレがなくなる未来があることも、想定していた。
そして実際、梅田の発売状況を見ていて、将来的になくなることは想像がついた。
並ぶ人数は毎回減っていき、また、千秋楽、新公、前方席目的の人々がほとんどで、悪い席(というか、ほとんどの席)は売れない。阪急が並びにかける人件費と釣り合いが取れていないことは、明らかだった。
いつか、なくなるだろう。
でも、わたしにとって得なシステムだから、いつまでも続いて欲しい。
そう、思ってたんだけどな。
わたしがヅカファンになった20年前から、梅田での並びはあった。
ネットもない時代、「タカラヅカを観たい。でも、チケットの買い方がわからない」で、苦労した。
窓口に問い合わせても、そのときいる人が、てきとーにチガウことを言うのが、当たり前だった。
発売日を聞いても、購入方法を聞いても、正規係員の言うことが、実際とチガウことなんか、あったりまえにあった。
抽選方式導入前は、何日も前から会の人たちが並んでいて、一般人はどうすることもできなかった。
一般発売日に正規窓口の列に並んでいても、「名簿に名前がない人は購入できません」と意味のわからないことを言われたりな(名簿って!!)。
一般発売とは名ばかりで、暗黙のルールを知らない人はお断りの世界だった。
わたしも友人も、何度も悔し泣きしたなあ。
常識の通用しない世界なんだ、と(笑)。
経験を積んで、おぼえていくしかなくて。
そーやって、「並び攻略方法」をカラダに叩き込んで。
並びもだんだん特殊性が薄れ、一般人にも開放されるようになり。月に何度かある「並び」の日は、1日中梅田の人口密度が高かった。
天海祐希や姿月あさとの時代の、あの行列の人数!!
TMP音楽祭発売日の、あの行列の人数!!
采配をふるう会の人たち、同窓会状態のグループ、あちこちで女性ばかりの輪ができ、話が弾み……すげー通行の邪魔(笑)。
ささやかれる噂話、他愛なくかわいい話も、ちょっといい話や有益な情報も、また、感情論ですぎない劇評も誹謗中傷も、なんでもアリ。
いわゆる「ヅカ友」がいないわたしやその友人たちは、ここでしか聞けない話に感心したり、あきれたり(笑)。
や、わたしには「ヅカ友」がいなかったのよ。
長い間。
ブログをはじめるまで……というか、厳密には、ケロ退団までは。
ヅカファンの友だちはいたけれど、それは「タカラヅカ」を通して出会った人ではなく、もともとの友だち。
仲良し同士が同じアイドル・グループを好きになったり、同じマンガを好きになったりするのと同じで、たまたまタカラヅカだった。
だから、ヅカ友だちに同い年・その前後が多い。もともと学生時代に一緒につるんでいて、一緒に好きになった。
卒業してなかなか会えなくなったけれど、発売日には「それじゃあ、せっかくだから」と集まってくる。
友だちと会って朝ごはん食べて並んでお昼ごはん食べて。
当たった抽選券を譲り合って、助け合って。
なにがどうじゃなく、集まってわいわいやることが、たのしかった。
「並び」は梅田の華。……そう、言っていたね。
発売方法として、不公平だし、効率悪いし、通路をふさぐから周囲にも迷惑だしと、いいことの方が少なかったのだろうが、それでも、ずっと、あった。
いい悪いという概念を超え、昔からあり、続いてきた。
それがなくなるということが、ただ寂しい。
いつかなくなるだろう、仕方ない、それはわかっていても。
時代が変わる。
そのことに、年寄りは寂しさを感じるんだ。
2008/08/22
2009年1月公演からの宝塚大劇場公演・宝塚バウホール公演のチケットお求め方法についてのお知らせ
現在、宝塚大劇場公演のチケット販売のうち、一般発売開始日の宝塚チケットカウンター(宝塚大劇場窓口)ならびに阪急交通社 阪急三番街店(大阪・梅田)では、「朝7時30分までにお越しのお客様を対象にご購入順位を決める抽選を行い販売」させていただいております。お客様には、早朝にお集まりいただき、再度ご購入のために指定時刻にお越しいただくという二度のご負担をおかけしております。
宝塚大劇場公演を2009年1月公演から年間10興行へ変更させていただくのにあわせ、この「抽選方式」での発売を取りやめ、次のとおり変更させていただきますので、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
(公式より抜粋)
いずれなくなるだろうとは思っていたけれど、ついに三番街でのチケット抽選販売がなくなることが決定した。
FCに入っていない一般ファンにとっては、窓口による抽選発売があるというのは、とてもありがたいことだった。
「会への貢献」とやらで半強制的に、自分が購入するわけでもないチケットのために早朝から肉体労働を科せられていた人々にとっては、忌むべきモノだったのかもしれないが、フリーな立場で全組観劇基本の人間には、なくなると痛手だ。
これでもう、最前列での観劇は、不可能になる。
また、新公や千秋楽も観られなくなる。
わたしみたいな、なんのツテもないヅカ友もいない、会にも入っていない、機関誌も買わない、ついでにネットだって最初からあるわけじゃなかった、素のジェンヌに興味なし、ただ舞台を観るだけでいい、ぬるーい人間が、長らくヅカファンをやって来られたのは、梅田でチケット販売があったからだ。
発売日に決まった時間に並んで抽選すれば、希望日と希望席種が買えた。新人公演や千秋楽も買えた。抽選にはずれたら、その労力は全部無駄になるけど、自業自得とあきらめがついた。
労力を惜しまず、運が良ければ、欲しいチケットを買える。
ダフ屋が前日から人を雇って並ばせているのが基本の、チケットぴあ店頭とかの先着順では、買えないチケットを買うことができる、可能性があった。
ムラと梅田だけ先着順ではない発売方式をとっていることで、不公平だとは思っていた。
わたしがもしも、関西以外に住んでいて、大阪在住だってだけで梅田に並び、「最前列買っちゃった、新公も楽も買っちゃった」と毎回言っている人がいたら、「そんなの不公平」と思っただろう。
全国の人が同じ条件で購入できるようにする、べきだと思う。
……思うけど、それはソレとして、その不公平さの恩恵を受けていたわけで。
不公平なチケット販売方式で、他の地方の人よりは得をしていたと思うけれど、それはわたしが選んでそうなったわけじゃない。
地元文化だからファンになっていたよーなもんで、ムラまで片道何万円交通費のかかるところで生まれ育っていたら、存在すら知らないままだったかもしれない。
また、ムラに住んでいたって、ヅカに興味のない場合もあるし、「たまたまそこに住んでいた」ことによって得したり損したりはヅカに限らずあたりまえにあることで、言っても仕方がない。
わたしはたまたま、得なところに住んでいた。
だから、他の地方の人たちより、チケットを入手しやすかった。
たまたま得をしていただけだから、ソレがなくなる未来があることも、想定していた。
そして実際、梅田の発売状況を見ていて、将来的になくなることは想像がついた。
並ぶ人数は毎回減っていき、また、千秋楽、新公、前方席目的の人々がほとんどで、悪い席(というか、ほとんどの席)は売れない。阪急が並びにかける人件費と釣り合いが取れていないことは、明らかだった。
いつか、なくなるだろう。
でも、わたしにとって得なシステムだから、いつまでも続いて欲しい。
そう、思ってたんだけどな。
わたしがヅカファンになった20年前から、梅田での並びはあった。
ネットもない時代、「タカラヅカを観たい。でも、チケットの買い方がわからない」で、苦労した。
窓口に問い合わせても、そのときいる人が、てきとーにチガウことを言うのが、当たり前だった。
発売日を聞いても、購入方法を聞いても、正規係員の言うことが、実際とチガウことなんか、あったりまえにあった。
抽選方式導入前は、何日も前から会の人たちが並んでいて、一般人はどうすることもできなかった。
一般発売日に正規窓口の列に並んでいても、「名簿に名前がない人は購入できません」と意味のわからないことを言われたりな(名簿って!!)。
一般発売とは名ばかりで、暗黙のルールを知らない人はお断りの世界だった。
わたしも友人も、何度も悔し泣きしたなあ。
常識の通用しない世界なんだ、と(笑)。
経験を積んで、おぼえていくしかなくて。
そーやって、「並び攻略方法」をカラダに叩き込んで。
並びもだんだん特殊性が薄れ、一般人にも開放されるようになり。月に何度かある「並び」の日は、1日中梅田の人口密度が高かった。
天海祐希や姿月あさとの時代の、あの行列の人数!!
TMP音楽祭発売日の、あの行列の人数!!
采配をふるう会の人たち、同窓会状態のグループ、あちこちで女性ばかりの輪ができ、話が弾み……すげー通行の邪魔(笑)。
ささやかれる噂話、他愛なくかわいい話も、ちょっといい話や有益な情報も、また、感情論ですぎない劇評も誹謗中傷も、なんでもアリ。
いわゆる「ヅカ友」がいないわたしやその友人たちは、ここでしか聞けない話に感心したり、あきれたり(笑)。
や、わたしには「ヅカ友」がいなかったのよ。
長い間。
ブログをはじめるまで……というか、厳密には、ケロ退団までは。
ヅカファンの友だちはいたけれど、それは「タカラヅカ」を通して出会った人ではなく、もともとの友だち。
仲良し同士が同じアイドル・グループを好きになったり、同じマンガを好きになったりするのと同じで、たまたまタカラヅカだった。
だから、ヅカ友だちに同い年・その前後が多い。もともと学生時代に一緒につるんでいて、一緒に好きになった。
卒業してなかなか会えなくなったけれど、発売日には「それじゃあ、せっかくだから」と集まってくる。
友だちと会って朝ごはん食べて並んでお昼ごはん食べて。
当たった抽選券を譲り合って、助け合って。
なにがどうじゃなく、集まってわいわいやることが、たのしかった。
「並び」は梅田の華。……そう、言っていたね。
発売方法として、不公平だし、効率悪いし、通路をふさぐから周囲にも迷惑だしと、いいことの方が少なかったのだろうが、それでも、ずっと、あった。
いい悪いという概念を超え、昔からあり、続いてきた。
それがなくなるということが、ただ寂しい。
いつかなくなるだろう、仕方ない、それはわかっていても。
時代が変わる。
そのことに、年寄りは寂しさを感じるんだ。
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