寝耳に水、とはこのことだ。
 花東宝楽から夜行バスで帰宅し、風呂入ったりごはん食べたりばたばたしたのち、よーやく一息ついて。あー、やっぱバスだとまだ寝たりないなーとぼーっとしているところへ。

 携帯に、モバタカからメールが届いた。

「花組 退団者のお知らせ」

 ……はあ?
 寝ぼけたアタマで考える。今日、なんの集合日だっけ?
 いやいやいや、昨日千秋楽だったんだってば。なんの集合日でもありえないってばよ。
 わけわかんないまま、本文読んで。

 大伴れいか退団。
 しかも、昨日の千秋楽付け。

 叫んじゃったよ。声あげちゃったよ。
 だってそんな、ありえないでしょう。

 
 『愛と死のアラビア』『Red Hot Sea』東宝楽、みおさんは絶好調だった。

 力の入り方が、ハンパじゃない。
 そりゃーもー、ものすごい勢いで、芝居を、ぶっ壊していた。

 ムラと違い、わたしは東宝公演には通っていない。久々に見るみおさんのすごさに、ただびっくりした。「東宝では、いつもこんななの?」ムラにも増して、えらいことになってますが。
 友人たちの弁によると、いつもよりはるかにすごい、少なくとも1週間前はこんなじゃなかった、もっとマシだった、とのこと。

 みおさんの舞台クラッシャーぶりはすでに「花組名物」で、毎回観劇後の話題にはなるけれど、すでにそれが「当たり前」のことなので、感想の部類に入らない。
 みんなもう「そういうもの」とあきらめて、許容している。
 そんな状態であるにもかかわらず、「あれってどうなの」と人々の注目を集めるくらい、すごいことになっていた、花楽日。

 台詞のボリュームがすごいぞ。気合いの入りまくった低い声、マイク無しでも劇場中に届くんじゃあ?な大音量。
 最後の高笑いは、なんと二段重ね。
 あまりに派手にいつまでも笑い続けるので、途中からマイクがフェードアウトされていた。

 これほどすごいのは、やっぱ千秋楽だからってことで、気合い入ってるんだろうな。

 そう、思っていた。
 みおさんはみおさんなんで、もう仕方ない。

 ショーではわたしの視線の動く範囲にいない役だったので、どうしていたかはわからない。通し役だったからなー。
 たぶん、ノリノリで務めていただろうと思う。誰よりもノリノリで、たのしそーでなければ、みおさんじゃない。
 
 
 あのいつもにも増してものすごい破壊力は、彼のジェンヌ人生最後の気合いだったのか。
 万感の思いを込めた、高笑いだったのか。

 舞台人として、役者として、適合値の低い人だった。
 芝居のセンスの無さ、ダンスにおけるリズム感のなさは、致命的だったと思う。

 だからといって、こんな辞め方って、ない。

 きちんと見送りたかった。
 わたしとは感性が合わなかったため、苦手以外のナニモノでもなかったけれど、万感を込めた高笑いだったのなら、そうだったと理解して受け止めたかった。

 なんだかせつない。
 20年以上ひとつの仕事を続けた人の最後が、「事後承諾」だなんて。

 深い事情があってのことだろうけれど。
 せつないなあ。


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