真の陶酔は、極限状態にこそ訪れる。@新人公演『マリポーサの花』
2008年8月26日 タカラヅカ 正塚芝居は難しい。
『La Esperanza』も『ホテル ステラマリス』も、新人公演はそりゃー大変なことになっていた。
『ベルばら』より『ファントム』より、確実に難しい。ヘタしたら『エリザベート』より、難しいかもしれない。
だから、雪組新人公演『マリポーサの花』も、えーらいこっちゃだった。
正塚芝居は、ハッタリが効かない。や、もちろん必要ではあるけれど、それ以前に、その役者が持っている技術、センスが浮き彫りにされてしまう。
男役、娘役としての、一定レベルの技術をあったりまえに持った上でさらに、正塚芝居に「合う」かどうか、正塚芝居が「できる」かどうかで、その出来映えが大きく変わってくる。
だからなんとも、分が悪い。
正塚芝居で新公を、しかも主演、初主演なんぞをやらなきゃならない子は、他演出家作品よりあきらかに、ハードルが高いんだもの。
できなくても、仕方ないよね。なにしろ正塚芝居だもん。上級生だって、技術だけでついて行けてない場合が、あったりするわけだし。
難しすぎるんだよ。
それを踏まえた上で。
いやあ、ネロ@せしるくんは、大変なことになってました(笑)。
ルキーニ@『エリザベート』も、アルガン@『君を愛してる』も、魅力的にこなしていたよな? なのになんでこんなことに……と思ったら、そうか、その2作は持って生まれた美貌とハッタリと勢いで演じられる役だった。
ほんとーに地道な実力で勝負しなければならない役になると、技術の無さが露呈してこんなことになっちゃうのかと、ある意味目からウロコでした。
歌がヘタなのは知っていたし、歌の下手さってわたしはあまり気にならないんだけど(でなければ水先輩ファンなんぞやってない・笑)、今回は「歌」以前の部分でびっくりした。
歌になると、声がチガウの。
演技しているときは、男役なの。
なのに、歌い出すと、女の子の声になるの。
オペラであちこちチェックしながら耳だけで歌声聴いて、「あれ、なにこのふつーの女の子の声?」と銀橋を見たら、ネロが歌っていた。
……素直に、びっくりした。
娘役声でもない、ふつーの若い女の子の声。歌うことだけに必死になった、とにかく一生懸命な声。
男役声で歌うことすら、できなかったのか……。
声を作れないなら作れないで、歌いやすいトーンで歌ってくれてもかまわないんだ……ソレで音さえ取れるのなら。
音程ふらつきまくるわ、舞台役者の声でも男役声でもないわで、聴いていてひたすらあわあわしました。わたしがあわてても仕方ないんだけど、なんか、「どうしようっ」て思っちゃって。
や、手に汗握った。
せしるといえば「美貌の人」なんだけど、その最大の売りである美貌がまた……。
新公当日、突然仕事で観劇できなくなったチェリさんから届いたメールは、行けなくなったことを嘆きつつも「せしるが爆発頭をどう整えていたか、教えてください」で結んであった……。
そこか!!
新公の出来とかじゃなくて、そこなのか、いちばんの関心は(笑)。
本役ではチャモロを演じているせしるくん。
役のために、思い切りのいいちりちりパーマ姿。
あそこまでちりちりだと、新公でネロを演じるときにどうするつもりだろう? 当日までに髪を切ったりまっすぐのばしたりするのかしら? というのが、仲間内の心配事だった。
新公のためにばっさりやって、その後の本役はカツラで通すとか? や、それも仕方ないことだろう。あのちりちり爆発頭ではネロを演じられないだろうし。
たけど新公日の昼公演を見ても、チャモロはチャモロだった。
……どうするつもりだろう?
そう思っていたら。
あー……。
その。
すごいことに、なってました。新公ネロ氏の髪型。
前髪だけは力業でのばして、ねかせて、リーゼントに。
真正面から見ると、微妙なトサカっぷり。なぜその高さ、その角度。……ちりちり爆発頭ゆえ、そのカタチにしかできなかったのだろうか。
だが、正面はまだ良かったのだ。
彼が横を向いたときに見える、不思議な造形。
額から耳の上までは、無理してのばして撫でつけてある髪が、途中から、ちりちりうねりまくる。
後ろ半分、ちりちり?!(白目)
そしてさらに、後ろ姿。
後ろはちりちり無法地帯!!
ちりちり解禁! はてしなくちりちり! なまじ正面だけ無理に押さえてある分、後ろの解き放たれたちりちりがカオス!!
真正面、サイド、後ろ頭と、全部、造形が違います!
トリックアートみたい。この像は前から見ると船ですが、横から見るとなんと家です! みたいな。
プロローグから我が目を疑い、オペラでガン見。
す、すげえ。
すげえよせしる!! ここまですげー髪型、はぢめて見たっっ。
なんか、チョコボを思い出したよ……。黒チョコボな。前から見たチョコボ、横から見たチョコボ、そしてお尻の愛らしいチョコボの後ろ姿……。
芝居が進むと、せしるはどんどんイッちゃってしまう。
テンション上がって、声がさらにでかくなる。怒鳴る。叫ぶ。ひっくり返る。
エスコバル@りんきらくんとの相性が微妙なこともあり、噛み合っているとは思えないまま、それでもひとりで突っ走る。
せっかくの美貌も、ハッタリも、なにもなく。
ただもう板の上の小さな空間でいっぱいいっぱいになって、はち切れそうになって、きゃんきゃん怒鳴っている。
見ていて手に汗握る、ところをはるか通り過ぎた。
ただもう「無事に終わってくれ」と祈るようなキモチだった。
愛しい。
この子、愛しいから。
その空回っているところも、なんにもできていないところも、そーゆーのひっくるめて、彼の舞い上がった姿ごと、あいくるしい。
こんなにぎりぎりになって、誰も助けてくれないところで、こんなにこんなにがんばって。
……正塚芝居だもんなあ。
難しすぎるよ。
せしるもだけど、他の子たちもみんないっぱいいっぱいで、空気作るとか読むとかどころじゃない。
せしるが空回っていても、誰も助けられない。
年度が替わって最初の新公でなく、2本目の新公ならまだちがったのかな。それか、87期が出演していたら、ここまでえーらいこっちゃにはならなかったろうか?
ヒロイン研2、2番手研3じゃあ、初主演者の重責は計り知れないよ……。
大変だったね、せしる。
でも、祈るようなキモチだったのとは別に、すっげー愉快でもあった。
だってせしる、絶対脳内麻薬出まくってるよね?
ランナーズ・ハイ状態なのがわかるんだもの(笑)。
で、その勢いで挨拶もして。
そのミョーな語りに笑われて、ビミョーな顔して。
いいなあ、せしる。いいキャラだ。
君はそのままの君でいてくれ。
舞台は技術だけじゃない、プラスアルファのナニかが必要。
せしるはきっと、そのナニかを持っているよね。
だからいいんだ。
……いやその、もう少し技術を付けてくれても、ぜんぜんかまわないんだけど。
『La Esperanza』も『ホテル ステラマリス』も、新人公演はそりゃー大変なことになっていた。
『ベルばら』より『ファントム』より、確実に難しい。ヘタしたら『エリザベート』より、難しいかもしれない。
だから、雪組新人公演『マリポーサの花』も、えーらいこっちゃだった。
正塚芝居は、ハッタリが効かない。や、もちろん必要ではあるけれど、それ以前に、その役者が持っている技術、センスが浮き彫りにされてしまう。
男役、娘役としての、一定レベルの技術をあったりまえに持った上でさらに、正塚芝居に「合う」かどうか、正塚芝居が「できる」かどうかで、その出来映えが大きく変わってくる。
だからなんとも、分が悪い。
正塚芝居で新公を、しかも主演、初主演なんぞをやらなきゃならない子は、他演出家作品よりあきらかに、ハードルが高いんだもの。
できなくても、仕方ないよね。なにしろ正塚芝居だもん。上級生だって、技術だけでついて行けてない場合が、あったりするわけだし。
難しすぎるんだよ。
それを踏まえた上で。
いやあ、ネロ@せしるくんは、大変なことになってました(笑)。
ルキーニ@『エリザベート』も、アルガン@『君を愛してる』も、魅力的にこなしていたよな? なのになんでこんなことに……と思ったら、そうか、その2作は持って生まれた美貌とハッタリと勢いで演じられる役だった。
ほんとーに地道な実力で勝負しなければならない役になると、技術の無さが露呈してこんなことになっちゃうのかと、ある意味目からウロコでした。
歌がヘタなのは知っていたし、歌の下手さってわたしはあまり気にならないんだけど(でなければ水先輩ファンなんぞやってない・笑)、今回は「歌」以前の部分でびっくりした。
歌になると、声がチガウの。
演技しているときは、男役なの。
なのに、歌い出すと、女の子の声になるの。
オペラであちこちチェックしながら耳だけで歌声聴いて、「あれ、なにこのふつーの女の子の声?」と銀橋を見たら、ネロが歌っていた。
……素直に、びっくりした。
娘役声でもない、ふつーの若い女の子の声。歌うことだけに必死になった、とにかく一生懸命な声。
男役声で歌うことすら、できなかったのか……。
声を作れないなら作れないで、歌いやすいトーンで歌ってくれてもかまわないんだ……ソレで音さえ取れるのなら。
音程ふらつきまくるわ、舞台役者の声でも男役声でもないわで、聴いていてひたすらあわあわしました。わたしがあわてても仕方ないんだけど、なんか、「どうしようっ」て思っちゃって。
や、手に汗握った。
せしるといえば「美貌の人」なんだけど、その最大の売りである美貌がまた……。
新公当日、突然仕事で観劇できなくなったチェリさんから届いたメールは、行けなくなったことを嘆きつつも「せしるが爆発頭をどう整えていたか、教えてください」で結んであった……。
そこか!!
新公の出来とかじゃなくて、そこなのか、いちばんの関心は(笑)。
本役ではチャモロを演じているせしるくん。
役のために、思い切りのいいちりちりパーマ姿。
あそこまでちりちりだと、新公でネロを演じるときにどうするつもりだろう? 当日までに髪を切ったりまっすぐのばしたりするのかしら? というのが、仲間内の心配事だった。
新公のためにばっさりやって、その後の本役はカツラで通すとか? や、それも仕方ないことだろう。あのちりちり爆発頭ではネロを演じられないだろうし。
たけど新公日の昼公演を見ても、チャモロはチャモロだった。
……どうするつもりだろう?
そう思っていたら。
あー……。
その。
すごいことに、なってました。新公ネロ氏の髪型。
前髪だけは力業でのばして、ねかせて、リーゼントに。
真正面から見ると、微妙なトサカっぷり。なぜその高さ、その角度。……ちりちり爆発頭ゆえ、そのカタチにしかできなかったのだろうか。
だが、正面はまだ良かったのだ。
彼が横を向いたときに見える、不思議な造形。
額から耳の上までは、無理してのばして撫でつけてある髪が、途中から、ちりちりうねりまくる。
後ろ半分、ちりちり?!(白目)
そしてさらに、後ろ姿。
後ろはちりちり無法地帯!!
ちりちり解禁! はてしなくちりちり! なまじ正面だけ無理に押さえてある分、後ろの解き放たれたちりちりがカオス!!
真正面、サイド、後ろ頭と、全部、造形が違います!
トリックアートみたい。この像は前から見ると船ですが、横から見るとなんと家です! みたいな。
プロローグから我が目を疑い、オペラでガン見。
す、すげえ。
すげえよせしる!! ここまですげー髪型、はぢめて見たっっ。
なんか、チョコボを思い出したよ……。黒チョコボな。前から見たチョコボ、横から見たチョコボ、そしてお尻の愛らしいチョコボの後ろ姿……。
芝居が進むと、せしるはどんどんイッちゃってしまう。
テンション上がって、声がさらにでかくなる。怒鳴る。叫ぶ。ひっくり返る。
エスコバル@りんきらくんとの相性が微妙なこともあり、噛み合っているとは思えないまま、それでもひとりで突っ走る。
せっかくの美貌も、ハッタリも、なにもなく。
ただもう板の上の小さな空間でいっぱいいっぱいになって、はち切れそうになって、きゃんきゃん怒鳴っている。
見ていて手に汗握る、ところをはるか通り過ぎた。
ただもう「無事に終わってくれ」と祈るようなキモチだった。
愛しい。
この子、愛しいから。
その空回っているところも、なんにもできていないところも、そーゆーのひっくるめて、彼の舞い上がった姿ごと、あいくるしい。
こんなにぎりぎりになって、誰も助けてくれないところで、こんなにこんなにがんばって。
……正塚芝居だもんなあ。
難しすぎるよ。
せしるもだけど、他の子たちもみんないっぱいいっぱいで、空気作るとか読むとかどころじゃない。
せしるが空回っていても、誰も助けられない。
年度が替わって最初の新公でなく、2本目の新公ならまだちがったのかな。それか、87期が出演していたら、ここまでえーらいこっちゃにはならなかったろうか?
ヒロイン研2、2番手研3じゃあ、初主演者の重責は計り知れないよ……。
大変だったね、せしる。
でも、祈るようなキモチだったのとは別に、すっげー愉快でもあった。
だってせしる、絶対脳内麻薬出まくってるよね?
ランナーズ・ハイ状態なのがわかるんだもの(笑)。
で、その勢いで挨拶もして。
そのミョーな語りに笑われて、ビミョーな顔して。
いいなあ、せしる。いいキャラだ。
君はそのままの君でいてくれ。
舞台は技術だけじゃない、プラスアルファのナニかが必要。
せしるはきっと、そのナニかを持っているよね。
だからいいんだ。
……いやその、もう少し技術を付けてくれても、ぜんぜんかまわないんだけど。
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