私の名前はディアンヌ。
 驚かないでね、ユ・ウ・レ・イ、なのっ♪

 うふふ、あはは。
 10年も前に死んじゃったんだけど、大好きなお兄さんに取り憑いて、ずーーっとこの世にいるの。
 時が止まったままだから、いつまでも少女のまんまよ。
 お兄さんはいい人だから、私が取り憑いていても、嫌がったりしないの。私が姿を現して、話しかけてもちゃんと相手をしてくれるの。
 うふふ、あはは。
 今日は想い出の場所にやってきたわ。お兄さんがフランス衛兵隊隊士だったころに毎日来ていた、練兵場跡。ベルサイユ宮殿の廃墟が見えるわ。
 お兄さんはココで、昔話をはじめるの。昔愛したひとの話を。
 うふふ、あはは。
 私はそれをじっくり聞いてあげるの。
 時間を掛けて、聞いてあげるの。
 この場所にいなくちゃならないの。
 だって。

 もうすぐここに、ナポレオンの刺客がやってくるの。お兄さんを殺しに来るのよ。
 だからここにいなくちゃね。

 私がどうして死んだか、教えてあげるね。
 自殺したの。
 自分で死んだの。
 裏切られて死んだの。

 世の中全部、恨んで死んだの。
 世界全部、呪って死んだの。

 特に、お兄さんを憎んで死んだの。恨んで死んだの。呪って死んだの。

 お兄さんは、私のモノだったのに。私だけのモノだったのに。
 なのにお兄さんは、別の女性を愛した。
 お兄さんの心が離れていくことに耐えられなくて、私は結婚を決めた。お兄さんの出世の手伝いができるように、貴族の男と。
 私の力添えで出世できれば、きっとお兄さんは私に感謝する。なにも与えてくれないあのひとよりも、私を愛するようになる。そう思うと、結婚できることがうれしくてうれしくて、たまらなかった。

 全部、お兄さんのためだった。
 なのに希望を託した結婚が、ダメになった。相手の貴族は私を捨て、お金持ちの娘と結婚してしまった。
 お兄さんの未来のために、あのひとからその心を取り返すために、最後の手段だったのに。身を捨てて、懸けていたのに。
 お兄さんのために。お兄さんのせいで。

 裏切られた私は、首を吊った。

 世の中全部、恨んで死んだの。
 世界全部、呪って死んだの。

 特に、お兄さんを憎んで死んだの。恨んで死んだの。呪って死んだの。

 苦しかったわ。悲しかったわ。惨めだったわ。

 だから……ねっ。
 お兄さんも、苦しまなきゃダメよ。悲しまなきゃダメよ。惨めにならなきゃダメよ。
 うふふ、あはは。

 お兄さんの愛したあのひとは革命で無惨に死に、お兄さんも片腕を失った。結婚もせず、私だけを話し相手に孤独に時を過ごした。
 苦しい苦しい10年だったわね。

 なのにお兄さん、偉くなり過ぎちゃったの。
 隻腕将軍とかおだてられちゃって、このままいけば、きっと幸せになっちゃうわ。
 そんなのダメ。許さない。

 ほら、死の足音が近づいてくるわ。
 うふふ、あはは。

 私の名前はディアンヌ。
 驚かないでね、ア・ク・リョ・ウ、なのっ♪

 あんな死に方したんだもん、天国には行けないわ。

 
 みんなみんな、不幸になるがいい。

                ☆


 はいはいはい、大爆笑作『外伝 ベルサイユのばら-アラン編-』初日観劇して来ました。

 すごかったっすよ、幽霊と話すヒーローの話。

 整合性なんかどこにもない、正気の人間が作るのは不可能だろーめちゃくちゃさ。
 きっとひどい作品だ、と心構えていたにもかかわらず、その斜め上を行く電波っぷり。

 なんかねえ、途中から感動したというか、悟りの域に入っちゃって。
 ここまですごいものを作ることが、ふつーの人間に出来るだろうか。いや、出来まい。やっぱ植爺はふつーぢゃないわ、と。

 や、とりあえずおもしろいから、話のタネに1回は観てくれ! 損はない!(笑)

 
 コムまー『ベルばら』でまさかのガチレズ話を展開した植爺、今回は近親相姦です。
 ディアンヌが愛していたのは、実は兄のアランだった。告白されたアランは、「いじらしい妹よ」と話を絶妙に変換して華麗にスルー。おお、いいぞアラン、GJ!
 でも、ふたりでラヴソングは歌っちゃう。

 オスカルはステキに変人。ちょっと教祖様入ってるらしく、隙あれば「人間は自由なのだ教」の街頭演説はじめる。あのソレ、さっきも聞きました……がてんこ盛り。しょうがないか、教祖様だしな。
 教義を語るだけではなく、向上心も持ち合わせている彼女は、ペロッと舌を出して自分のアタマをコツンとやり、(イメージです)「私もまだ修行が足りないな、反省、反省(はぁと)」と言ったりする(現実です)。
 モテモテですが、誰を好きなのかは、謎です。……魔性の女?!(白目)

 アンドレは、絶好調です。
 もー、もー、この狂った作品を支えているのは彼だっ!! 最高だ、アンドレ!!
 人の話は聞かない、空気読まない、自分の世界しか見えない。すげーことになっているが、彼こそが物語に正しく迎合し、自在に空気を吸って生きている。
 独白の長いことってば。
 どこの場所だか知らないが、1曲歌って「オスカル、オスカル、愛しのオスカル~~」と自分の気持ちやら立ち位置やらをえんえんえんえん独り言。
 あんまり長々とやっているから、ジェローデルが通りかかった。まあもちろん、人の話を聞かないアンドレだから、ジェロ様の長台詞なんか聞いちゃいねえ。ジェロ様がいなくなっても関係ねぇ。
 そのままやっぱり「オスカル、オスカル、愛しのオスカル~~」と自分の気持ちやら立ち位置やらをえんえんえんえん独り言。あのソレ、さっきも聞きました……てゆーか、「忘れもしない、お前とはじめて出会った日のこと」……リセットどころかマイナス地点から語り直すつもりかお前?!!
 あんまり長々とやっているから、今度はアランが通りかかった。そしてふたりで「小学生のケンカ」をおっぱじめる。「お前のかーちゃんデーベーソ」「お前のとーちゃんデーベーソ」的やりとりの挙げ句、「なんだとーっ」「こいつぅ!」ととっくみあい……。てゆーかここ、どこ? ジェロがふつーに歩いてて、アランがふつーに歩いてる、いったいどこでアンタ、長々と独り言言ってたの?

 このぶっとばしているアンドレに、これまたぶっとばしているオスカルが、絶妙の空気感で存在しているの。
 あうんの呼吸、アンドレが回転レシーブ、それをそのままダイレクトにオスカルが弾丸スパイク、アラン取れない! コートに沈んだ!! ……あー、そんな感じっす。

 いやあ、いいなあ、壮ドレにみわカル……。このふたり、いいよー。

 大変なのは、アランだ……。
 主役のハズが、やっていることと言えば、幽霊のディアンヌと「物語のあらすじ」を解説しているだけだし。
 アンドレとオスカルがぶっとばしている分、リズム合わなくて空回ってるし。てゆーか、アランってばすげーまともな人だ……。
 他の人たちがまともぢゃないから、ただひとりまともな彼が、ひとりで割喰ってる。
 なのに、その唯一まともな彼のコント相手は、ゆーれいだし。

 ナニ、この凄まじい話(笑)。

 あー。
 まとぶさんも、えりたんも、みわっちも、大好きだー。
 花組ダイスキ。たのしー。

 や、とにかくおもしろいですってば、『アラン編』。それは嘘ぢゃない(笑)。


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