『Paradise Prince』には、恐ろしい台詞がある。

 と、大橋先生は言った。

 台本を渡されたとき、その台詞のすごさに思わず、景子先生へ台詞を書き換えられないか聞いてみたという。もちろん、こだわりの景子先生には完全却下された。

 その、恐ろしい台詞とは。

「その絵を、300万ドルで買おう」

 ふつーの人なら、この台詞をコワイとはべつに思わない。
 客席もぽかーんとしていた。

 大橋先生は、さらに語る。

「300万ドルの絵って、誰が描くんですか。アタシに300万ドルの絵が描けるわけナイでしょう! んな絵が描けるなら、こんなとこいませんよっ」

 そらそーだっ(笑)。

 しかも、片方は破れた絵を使って。さらに片方は、あのらくがきみたいなでべそのプリンスの絵を使って。半分ずつ見せる、とかいう「絵」としてありえない発表のされ方をして。
 それで300万ドル……「3億3千万円ですよ?!」……日本円にするとさらにアレさが高まる(笑)。

 テレビドラマでもそうだけど、アート関係のサクセスものとか、大成功を収めるアート作品が「はあ?」なモノって、けっこう多い。そんなつまんないもんが、世界的評価を受けるのかと。
 わたしは音楽の善し悪しはわからないけど、音楽モノも「なんであの演奏で優勝?!」とか、いろいろあるんだろうな、フィクション世界では。

 物語では簡単に「恵まれないヒロインがその才能を開花し、権威ある賞を受賞して世界へ羽ばたく」とかやっちゃうけど、お約束のストーリーだけど、……スタッフは、大変だよな。
 権威ある賞を受賞する作品、とやらを作るのはヒロインではなく、スタッフだもの。

「ドルだったのが救い。ドルだからまだ300万ドルって言ってもファンタジーになるけど、3億3千万円って言ったらもう……」

 と、装置家の大橋先生の、装置家視点のお話がとてもおもしろかったです。

 宙組スペシャルイベント『チケットぴあ購入者限定 アフタートーク』大橋泰弘/悠未ひろ/美羽あさひに行ってきました。

 ともち! ともち! 9月29日にともちのトークイベントがある? やだー、これってわたしのため?!(違います)

 自分の誕生日に好きな人のイベントがあるって、こりゃ行くしかないべ?
 大劇場にて、近くの座席の人は、みんな同じイベントチケット組らしく、そして悠未ひろファン限定の会話が成立していて、なんかすごーくわくわくした。
 主語を言わなくても、誰のことを言っているか通じるんですよ。わーい、ここのへんのひとたち、みんなともち見てる~~、わたしと視界一緒(笑)。
 や、もちろんまちゃみファンもいるんだろうけど、わたしの周囲はともちファンだった。

 『チケットぴあ購入者限定 アフタートーク』。ふつーに公演を1回観劇して、おまけのプログラム付きで、さらに終演後バウホールでトークショーがある。トークショーの座席は当日抽選。
 ……なのに、チケットは1枚なの。プログラム引き換え券とか、トークショーの抽選整理券は?
 通常と同じチケぴプリントの券面に、細かい字で注意事項が全部書いてある。この1枚で全部済ませるみたいだ。

 大劇場に着くと、ロビーに受付テーブルが出ていた。チケットを見せるとプログラムとトークショーの質問用紙を渡される。チケットの裏に日付印をぺたん。「渡すモノは渡したよ」という証拠らしい。
 2008.9.29のスタンプが、記念だな。具体的な年齢は考えたくもない**回目(笑)のお誕生日。十数年前の誕生日に、やっぱりこうして観劇していて、舞台の上のケロに出会ったんだよな。

 ふつーに1時公演が終り、時刻は4時過ぎ。
 バウホール階段下……近くにて、抽選用のテーブルが用意され、4時15分から抽選開始。なんがすげー長い列がロビーに伸びる。
 座席が当日抽選のため、ツレと座席が離れる場合もある、と注意事項が書いてあったが、抽選自体は「おひとり様」「ペアの方」で抽選箱が分かれていた。……どういう座席配分なのか、気になるところ(笑)。

 4時45分からアフタートーク開始……なのだが。

 司会のおねーさんが出て来て、まず、バウホール入口で配られた化粧品サンプルの宣伝がはじまる。うひゃー。
 そして次に、「このイベントのために特別に作られた映像をごらんいただきます」と言って、舞台中央に用意されたスクリーンで、ビデオ鑑賞。
 この映像がねー……。

 特別でもなんでもなかった(笑)。

 稽古場風景、初日映像。スカステを見ていればなんのめずらしさもないモノを、えんえん。
 ともちとまちゃみのトークの日なんだから、ふたりの映像かと思いきや、ただの汎用映像。映るのはタニちゃんばっかで、横にいるはずの、後ろにいるはずの、ともちが映らないっ。ああっ、いるのにまた見切れてるっ。の、繰り返し。
 言い訳のように、パリ祭映像が映り、前回の『Passion』のまちゃみ映像が映る。パリ祭はまだともち主演だからいいけど、『Passion』は所詮タニちゃん中心だから、まちゃみのいいところで画面はタニちゃんに変わり、彼女のための映像とは言いにくい。
 ほんとに、ありあわせで間に合わせたんだなあ……。
 イベントで映像流すってわかってたんなら、ふたりの追っかけ映像撮っておけばいいのに。
 『チケットぴあ購入者限定 アフタートーク』はあと2回あるけど、この分だと「特別映像」とやらのほとんどはこの「タニちゃん中心・ふつーのスカステニュース」をえんえん流されそうだ。で、最後にちょろっとゲスト絡みの映像を流す、と。1回はいいけど、同じ映像2回見るのはちょっとなあ。
 あ、タニちゃんに含みはない。ただ、タニちゃん中心の映像は他でも見られるので「ここだけの特別映像」でなくても……というだけっす。

 この映像が長かった。15分くらい?
 5時5分から、まずは装置の大橋せんせのお話スタート。

 大橋せんせのトークはおもしろい、と評判だったわけだが……本当に、おもしろかった。

 どうして装置家になったのか、今までの失敗、印象に残る装置、海外公演のこと、外部でのお仕事のこと。
 緩急を付けて語ることができる人。どう話せばおもしろいか、ちゃんとわかって自分で演出できるんだ。
 出来事を客観的に見て、自分の中で再構築して「他人」に向かって放出できる……って、すごいことだよ。ヅカに限らず、話すことが下手な人って「他人」に話すということができないから。自分の中でわかっているから、相手に伝わっているかどうかは無頓着・そこまで気が回らない、のがほとんどだもの。

 大橋先生が人気あるの、わかるわー。
 こんだけアタマのいい喋り方をする人は、そりゃ人望も得られるわ。

 やっぱ仕事の出来る男の人って、かっこいい。
 自分の仕事に、自分自身に自信がある。それだけの才能と実績がある。
 見せかけだけの無能な人に、人は集まらない。「仕事」がはじまれば人はみな自分の元へ集まってくる……それを「事実」として、驕りでもなくふつーに話してしまう。
 おもしろいおっちゃん、だけど、その奥にある強い強い部分がすげーかっこいい。

 300万ドルで絵が売れるよーな芸術家ではないけれど、腕のいい職人としての自負のある人。
 その職人魂が、かっこいい。

 ……職人だから、依頼主の注文に従わなければならないわけで。予算がシビアであることを、そりゃーもー語ってくれました(笑)。どう誤魔化して……いやいや、錯覚させたり配分したりして、がんばっているのかを(笑)。

 大橋先生のトークはすげーおもしろいんだが……。

 あのー、ともちは、いつ出てくるの?

 続く。

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