えー、ヅカファンつーのは「ル・サンク」の脚本を朗読して「ひとりタカラヅカ」やるのがふつーなんですか?
 あるいは仲間内でお芝居の台詞言い合ったりして遊ぶのが?
 贔屓の歌のパートを知るために、公演の歌を自分で納得いくまで実際に歌ったり、曲を覚えるために『エリザベート』全部ひとりで歌ったり台詞言ったりするのが、ふつーなんですか?

 本日、わたしはかなり久しぶりに小説を「朗読」しました。
 たぶん教育実習以来です。
 ひとりではなく、大勢の人たちと一緒に、小説を読み上げました。

 朗読は得意分野だし大昔は演劇部だったし、教育実習のとき教材の小説をまるまる芝居調に朗読して生徒から授業中に拍手もらったりとかそーいやあったなー、とか思い出したり、てなわけで朗読自体はどーってことはないことなんですが、そのあと友人たちとごはん食べてるときに、

「みんな朗読うまいよね」「みんなふつーに声出してたよね。声を出せって言われても、誰もナニも言わないことだってあるだろうに、みんな物怖じしないし」「ヅカファンだからね」……という話の流れで、ヅカファン=脚本を朗読して遊ぶのが日常、みたいなことになり、びっくりしたのだわ。

 わたしは、ヅカごっこをしたことは一度もありません。

 台詞も言わないし、歌も歌わない。
 「ル・サンク」に目は通しても、音読なんかしたことないよー。

 教育実習以来の「朗読」。
 ええ。

 声に出して読む「カラマーゾフの兄弟」。

 はい、行ってきました、『ファンタスティック・トークショー「カラマーゾフの兄弟」』、なつかしの中之島中央公会堂。
 なんでなつかしいかってそりゃ、昔、中之島中央公会堂では毎週同人誌即売会が開催され……ゲフンゲフン。

 第1部が『カラマーゾフの兄弟』ポスター掲載の7人+サイトーくんによる、「『カラマーゾフの兄弟』を公演するにあたっての雑談(笑)」、第2部が『ドストエフスキーの人間力』の作者・斎藤孝先生による『カラマーゾフの兄弟』講座。

 この第2部で、『カラマーゾフの兄弟』原作の朗読コーナーがあったんだ。

 入場時に配られたパンフレットに、“声に出して読む「カラマーゾフの兄弟」登場人物台詞集”というリーフがあり、nanaタンとふたりして「誰がこの台詞のチョイスをしたの?!」と、首をひねってました。

 本日出演のキャスト7名のキャラクタの原作の台詞(亀山訳の文庫からまんまコピーしたもの)なんだけど、ちょっとというか、かなりまずいのだわ……その、ネタバレ的に。他にも台詞はあるだろう、なんでよりによってコレ?!
 
 さらに、斎藤孝先生著作から引用された「登場人物とキーワード」というリーフには、さらに決定的にネタバレ……つーか、オチの部分まで丁寧に解説してある。

「やっぱ大学教授呼んでやる講演会だから、『カラマーゾフの兄弟』を読破していることが前提条件なんだよ」
「ストーリーもなにもかも知っている人、核心に触れても構わないっていうことなんだねー」

 と、話していたんだが……第1部でキャラ紹介と役に対する意気込みや感想を語る水しぇんたちが、「事件」とか「真犯人」とか「もうひとりの兄弟」について話しそうになると、サイトーくんが横から割って入り、「ソコはミステリってことで」とか、「見てのおたのしみで」とか言って、語らせなかった。
 物語がどうなるのかは、いちおー秘密らしい。

 あのー……。
 サイトーくんが「秘密」と言ったこと、みんなパンフレットに書いてありますが……。
 そもそも朗読用の台詞集にアレが……ゲフンゲフン。

 とゆーことがあったので、台詞を選んだのが斎藤孝先生だとわかった。事前に打ち合わせはしていないらしい……。していたら、サイトーくんが孝せんせにネタバレ禁止をお願いしていたと思う。
 孝せんせーは、『カラマーゾフの兄弟』を読破した人がほとんどいない客席に、肩を落としていた。ふつーなら、読者を想定して講演している人なんだろーになあ。
 ここに集まっているのは、ドストエフスキーファンでも、『カラマーゾフの兄弟』ファンでもなく、ただのタカラヅカファンで、雪組のファンなわけだから。

 あ、わたしも原作は読破してません。今よーやく3巻で、よーやくおもしろくなってきた、ってとこ。2巻の「大審問官」で難破しそうになったよ……(笑)。
 韓流長編ドラマを見るより、ドストエフスキーを読む方が敷居が低い、というのがわたしの現実。
 読み切ってはいなくても、ストーリーはなんとなく知っているので、ネタバレしてもまあいいっちゃいいんだが。サイトーくんが必死にネタバレ回避していたのに、意味なかったことに「あーあ」と思う(笑)。

 てゆーか、出演者も、誰も原作読んでないから(笑)。

 「マンガで読んだ」とか「自分の役が出てないとこはトバした」とかだから。
 彼らにとって『カラマーゾフの兄弟』はドストエフスキー作ではなく、斎藤吉正作だから。……原作読破より先に脚本読んで、役作りしてるわけだから。

 そんな状態の出演者と、客席を相手に、孝せんせーはめげずに「声に出して読む日本語講座」をするわけだ(笑)。

 台詞集がパンフレットに入っているのを知ったとき、わたしとnanaタンは「出演者が原作の台詞を読んでくれるってこと?!」ときゃーきゃーよろこんだんだが、まさか自分たちも読まされるとは思わなかった(笑)。

 孝せんせがまず朗読し、それにわたしたちが続き、それらが終わったあとで真打ち登場、ジェンヌが「役になりきって」同じ台詞を朗読する。

 最初はカラマーゾフ家の父親、フョードル@ハマコ。

 なにしろそれまでが「斎藤孝せんせの講座」なわけで、「私の講義ではいつもこんなですよっ」という、彼のペースで進んでいるなか、突然タカラジェンヌがタカラヅカとしての芸を披露するわけですよ。

 舞台上のジェンヌ席から舞台中央に出てきたハマコは、「恥ずかしいですね(笑)」と照れ笑いしたあとに。

「おれの信念でいうとだな……」

 と、めちゃめちゃイイ声で、朗々と語り出した!!

 原作のパパの台詞。ええ、かなり最初に出てくる台詞だな、わたしが知ってるわけだから(笑)。
 通る声、滑舌の良さ、浮かび上がる「キャラクタ」……。

 ハマコ、すげえ。

 「恥ずかしいですね(笑)」と笑った次の瞬間、別人になってますよ!

 かっこいいっ。ハマコかっこいいっ。

 純粋に、「この人すごい。この人うまい」と思った。
 そして、誇らしかった。

 ヅカファンとして。
 タカラヅカを知らないわけじゃなくても、あくまでも「知らないワケじゃない」程度のエライせんせーの前で、芝居の台詞ではなく原作の朗読で、ここまでやってしまえる人がタカラジェンヌだということ、こんな人があたりまえにいるところが宝塚歌劇団なのだということが。

 ハマコ・タイフーン。
 最初にどーんとぶちかましてくれたので。

 誇らしい反面、そのあとで朗読する人たち……とくに下級生たちが、気の毒になった。

 最初がコレだったわけだから。このレベルが求められるんだよ? が、がんばれー!!

 文字数ないんで、続く。

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