お待たせしました、腐った話です。『夢の浮橋』です。

 誰がお待たせって、わたしがだよ。腐った話を書きたかったんだけど、まず作品語りしないことには腐女子話ができなかった。

 長々と書いた「彼がわたしに還る物語を。@夢の浮橋」は別に、腐女子話ではない。薫と匂宮の愛憎の物語だと語っているだけで、あそこに腐女子視点は絡めていないんだ。
 BLでなくても、人間同士の話である以上、「愛」はあるのだから。

 わたしにはいくつものチャンネルがあり、腐女子視点で萌えるのと平行して、作品自体に邪心ナシで感動していたりも、平気でするので、誤解なきよう。
 ほんとに、作品自体に感動して、毎回号泣してたんだってば。まずそっちを吐き出さなければ、ヲタク話ができないほどに。

 で、それだけじゃなくて、ほんとに腐女子ど真ん中な、腐女子なだけの腐女子語りもしたかったんだっ(笑)。

 
 初見時、ふつーに匂宮@あさこ主人公として、彼だけを見、彼に感情移入してがーがー泣いた。

 観劇後すぐに会ったnanakoさん(月組未見)は、いつものようにこう聞いてきた。

「で、ヒロインは誰だったの?」

 月組には現在トップ娘役がいない変則状態なので、そのことを聞いたのかもしれないが、なにしろ彼女は『ヘイズ・コード』初日観劇後に、

「予備知識入れたくないけど、ホモかどうかだけ教えて」

 と、真顔で聞いてきた人だからな。

 大野拓史といえばデコラティヴ・ホモを書く人だ。『更に狂はじ』だとか『月の燈影』だとか『睡れる月』だとか、耽美ホモ一直線!!な芸風。
 大野作品の場合、主人公の真の相手役は女性とは限らない。

 ふつーに匂宮視点で浮舟とのせつない恋にダダ泣きしてなお、わたしは素で答えた。

「ヒロインは、きりやん」

 匂宮は浮舟を愛していたけれど、愛っていうかアレはえーっと、依存? でもって薫も依存していて、匂宮が真実愛していたのは薫で、でもそれすら愛とかゆー美しげなものとは違っていて……てなことを、もごもご説明した。
 や、だって未見で予備知識を好まない人にどこまで説明していいやら。

 するとnanakoさんは「ま、『宇治十帖』って言ったら、そんなもんだよね」と、ひとりで納得していた。そーか、薫がヒロイン、で納得なのが『宇治』なのか。『源氏物語』って愉快だ。

 とまあ。
 初見から、匂宮と薫とのラヴ・ストーリーだってことはわかったけれど、別に萌えはなかった。薫@きりやんがわかんなかったし、きれいに見えなかったし。
 薫を「わからなかった」というのは、なんつーんだろ、すごく違和感があったのね。きりやんの演技って、コレでいいの?って。

 んで2回目はきりやんガン見して(笑)。
 で、彼の薫像に震撼して。

 わたしのなかで『夢の浮橋』って作品が一気にクリアになった。

 だが、それでもまだ、胸の中でもたつくものがあった。納得しきれない、理解しきれていない部分があった。

 そのあとで、答えに行き着いたんだ。
 答えを得たとき、わたしの視界は輝度を増し、可視範囲もがずーーんと広がった。

 そう。
 わたしのなかにあった迷い、不理解、混沌。
 それは、つまり。

 匂宮と薫って、どっちが受なのよ? ……と、ゆーことだった。

 属性がわかんないと、モヤモヤするのよ! 困るのよ!

 たしかに主人公が匂宮だから、その相手役って意味でヒロインは薫だけど、だからって受攻とは関係ないし。ふつーに男女のカップルでも、「アレはヒロインが攻だよねー」という物語は山ほどある。
 匂宮と薫って、どっちが攻? どっちが受?

 わたしは攻スキーだ。
 好きな人には攻でいてほしい。
 でもって、あさこちゃんときりやんだと、きりやんの方が好きだ。だからきりやんは攻が好きだ。『Ernest in Love』のアルジは、ほんとに素敵な攻だったわ。アルジこそが、わたしの求めるきりやさん(はぁと)。
 その昔、ヅカホモ同人やってたときも、きりやんは攻キャラだった。(作品パロなので、ジェンヌ自身のことぢゃないっすよ)
 好きな人は攻になるんだってば、わたしの場合。

 だから余計、混乱していた。
 匂宮と薫の属性について。

 それがよーやく、すこーんと突き抜けたのだわ。答えを得たのだわ。

 薫受だわ!!

 匂宮×薫ですわよ。
 これぞMy真理。

 受攻がはっきりするなり、『夢の浮橋』は見事に立体的に浮かび上がってきましたね(笑)。
 腐女子ハートがきゅんきゅんします、なんて素晴らしい物語なんだ、『夢の浮橋』。

 わたしの中の「受攻法則」に、「より愛している方が攻」とゆーのがあります。
 愛し、求めるから攻になるんです。男子ですから。愛してる、から「抱かれたい」と思うのは女子の感覚、そんなこと思う男子は嫌です。愛したなら、「抱きたい」と思ってもらわなくては。
 だから、愛している方が攻。

 薫を一方的に愛し、求めているのは匂宮なので、匂宮が攻です。

 ……ええ、この法則があるにも関わらず、なかなか受攻が決まらなかったのは、ひとえにわたしが攻スキーで、きりやさんが攻であって欲しいと思っていたからです。わたしの愛情が、センサーを鈍らせていたの。

 ええいっ、あきらめろ。きりやさんは今回は受なの、受。
 そーだよな、大野せんせだもんな。大野くんは『更狂』できりやんを耽美な受キャラにしてたっけ。大野くん的にきりやさんって受キャラなのか?

 でもって、あさこ氏が攻。

 はい、わたしは攻スキーです。つまり今回、匂宮@あさこが、好きすぎて、困ります。

 匂宮、大好きだ。
 あの報われなさが。あの弱さが。あの歪みが。
 新公で同じ役をやったみりおくんが強くて健康できらきらしていて、まったく萌えなかったこともあり、さらにあさこ氏の匂宮がどんだけわたし好みなのかを思い知りました。

 匂宮は絶対に、薫を役職では呼ばないんだよね。
 ただひとり、「薫」と呼び続ける。

 反対に、薫は匂宮に対し、一線を引き続ける。女一の宮も交えてのイベントで会ったときぐらいしか、匂宮にくだけた口調で話さない。
 浮舟のことで対峙したときなんか、完璧な慇懃さ。匂宮のことも「兵部卿宮」としか呼ばないし。

 このふたりの「温度差」が、じたばたするくらい好きだ。萌えだ(笑)。

 わたしは片想いスキーなの。愛される人より、愛する人が好き。
 匂宮の、爆裂片想いっぷりが、ツボ過ぎる。

 宮中すべての人から一目置かれ、愛されている匂宮が、真実愛している人には相手にもされていない。
 名前ですら、呼んでもらえない。慇懃な「ですます調」で話されちゃって、突き放されまくる。

 なんなの、このMプレイ。匂宮、攻なのにドMって!!(ハァハァ)

 物語の最後、薫は匂宮の足元にひざまずく。生涯を共にすると誓う。
 だけどそれは、あくまでも臣下としてなんだよね。呼びかけは「宮様」であって、子どもの頃のように「匂宮!」とは呼び捨てないんだよね。

 この「世界」で、匂宮と薫はふたりっきりなの。
 匂宮は薫のためにすべてを捨てて、狂気と絶望の世界へ足を踏み入れたの。
 この世にたったふたりしかいない、そして薫はたしかに匂宮のものになった……けれど、あくまでも「東宮」と「臣下」、ひいては「帝」と「臣下」でしかなく。

 薫を得てもなお、匂宮の片恋は続くの!
 
 永遠に満たされないのよ、匂宮は。
 たとえば「命令」すれば、薫は粛として抱かれもするだろうけれど、ソレは真に匂宮が求めたことではないのよ。
 欲しかったものではないのよ。

 薫も鈍い上に融通が利かないから、そっから10年20年と平気ですれ違いそうだわ。
 両想いでも満たされないまま、片翼に片恋を続けるんだわ。一対でないと、飛ぶことが出来ないふたりなのに、心は通じないまま、それでも大空を高く飛び続けるの。それが王たるものの宿命だから。

 もー、もー、萌え狂ってますよ。
 今すぐオレに同人誌作らせろってノリで(笑)。

 大野拓史、恐るべし。

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