女たちのヒロイン事情。@夢の浮橋
2008年12月12日 タカラヅカ 小宰相の君@あいあいは、いい女だと思う。
と、今さらまだ『夢の浮橋』の話です。
小宰相の君の、自由に生きている大人の女な感じ……と、その奔放さの奥にあるかなしさがまたイイ。
宮中の女たちにはない自由さとしたたかさは、視点である匂宮@あさこを通して、どんだけ魅力的に映るか。
彼女は「希望」だと思う。
毎日つまんない。ここはわたしのいるべき場所ではない。ここではわたしは正当に評価されていない。ここではないどこかでなら、わたしは輝けるんじゃないだろうか。
ビジョンがあるわけではなく、ただ漠然と「いつか王子様が来て、すべてうまく行く日が来ないかしら」と考えている人間にとっての、希望。救い。
ある日、魔法使いが現れて、立派なドレスとカボチャの馬車と硝子の靴をぽーんと与えてくれるの。
ある日、ランプの精が現れて、のぞみをなんでも3つかなえてくれるの。
その類いの、希望。
今いる現実から、別の場所へ連れて行ってくれる。
「私」はなんの努力もしなくてイイし、なにも変わらなくてイイ。
「私」にだけ都合のいい奇跡。
物語としてよくあるのは、そーゆー「都合のいい奇跡」を主人公自らの意志で退けて、「自分の幸せは、自分の努力で勝ち取るよ」と意識を新たにしてハッピーエンド、とかね。
異世界を知ることで、今まで退屈だと軽んじていた自分の世界の良さを再認識して「今いまる場所で一生懸命生きるよ」と意識を新たにしてハッピーエンド、とかね。
そーゆー道具立てに見える存在なんだけどね、小宰相の君。
実際は、その「ここではないどこか」の住人である小宰相の君も、決して自由な存在ではなく、彼女も彼女の世界に囚われ、苦悩しているひとりでしかなかった。
主人公に「美しい世界」を見せておきながら、その美しい世界が絵空事でしかないと……そんなもの、どこにもないのだと、知らしめた。
だから、彼女は哀しい。
それまでの活き活きした姿と相まって。
彼女が自由であることも、強く美しいひとであることも、変わりはないのだけど。
匂宮を視点とする「わたし」が思い描くような理想郷ではなかったんだ、彼女と彼女の生きる世界は。
このテーマ部分を担うアップダウンを、あいちゃんは実に華やかに的確に演じてくれた。
いい娘役さんだ。わたしが彼女を認識したのが『血と砂』のソルーナさんの愛人役(カポーテを取った瞬間の、あのプロポーション!)と、ゆーひの子ども時代役(弟の方が背が高いのが萌え)。あれから7年経つのか……実力と華は今まさに円熟期に入ろうとしている。……なんで彼女がトップスターでないのかは、よくわかんない。
作品のヒロイン、ということになっているのかな? 浮舟@しずくちゃんは、すごく役に合っていた。
プロの役者さんの間に素人のシンデレラガール@アイドル出身がぽつんと混ざっているよーな実力の断絶ぶりが、かえって味になっている。
消え入りそうな歌声も、浮舟のイメージだ。
作品が正しく回っているので、彼女の浮舟役でなんの不満もない。
実力が伴わないだけで、センスのない子じゃないもの。弾けない琴を弾こうと、そうすることしかできないその絶望感に、そのかなしさに、共に涙できるもの。
この痛々しさ、無力さを見れば、そりゃあ抱きしめたくもなるわ。わたし、視点が匂宮ですから!(笑) 彼と同化して、思わず浮舟を抱きしめちゃいますよ。
その後、薫の告白に人形のように肯くところも、好き。
美しく、かなしい姿。
浮舟はまさしくカタシロであって、生身の存在じゃないのよね。
ぶっちゃけ、名前だけ、琴を弾くシルエットだけで登場しなくてもかまわないんだもの。
美しくはかないイメージさえあれば。
そーゆー「いなくてもいい」「姿はあるけれど、現世の存在ではない」役を、つまりそんだけ「美しくなくてはならない」役を、このパワーバランスでしずくちゃんにアテ書きした大野くんはすごいなと。
浮舟がシルエット可な存在である以上、影のヒロインが必要になるんだが、それが女一の宮@あーちゃんなんだよね。
「もうひとりの匂宮」であり、主人公と対をなす存在である女性。
アンネローゼ様はやっぱ美しく、強くなくちゃねー(笑)。(えーと、匂宮がラインハルトになるんでしょーか?)
宮中という、匂宮の生きる世界で、確実に生きている彼女だからこそ、物語の「語り手」であり、影のヒロインとして成立した。
てゆーかさー、匂宮が女一の宮に迫るところが、いちばんドキドキしたんですが。
あそこの匂宮がいちばん好き。ヲトメ心がきゅんきゅん(笑)しました。
主人公をもっとも魅力的に見せる女がヒロイン、であるならば、まちがいなく彼女がこの物語のヒロインだと思う。
あーちゃんの正統派の実力と、美しさ。少々地味目かもしれないが、女主人公たる能力を持った人だ。うん、女主人公ってのはまろやかな雰囲気が必要なんだよなあ。鋭角的な美貌ではなくて。
彼女が副組長ってのがまた、月組のすごいとこだなー。
大輪の華と豊かなヒロイン経験を持つあいちゃん、技術と経験は劣るが楚々とした美貌を持つしずくちゃん、そして堅実な実力とハンパないキャリアを持つあーちゃんと、タイプのチガウ「ヒロイン級の娘役」を3人も配した、すげー贅沢な公演だ。
女の子が魅力的な作品は、それだけで成功だと思うよ。
と、今さらまだ『夢の浮橋』の話です。
小宰相の君の、自由に生きている大人の女な感じ……と、その奔放さの奥にあるかなしさがまたイイ。
宮中の女たちにはない自由さとしたたかさは、視点である匂宮@あさこを通して、どんだけ魅力的に映るか。
彼女は「希望」だと思う。
毎日つまんない。ここはわたしのいるべき場所ではない。ここではわたしは正当に評価されていない。ここではないどこかでなら、わたしは輝けるんじゃないだろうか。
ビジョンがあるわけではなく、ただ漠然と「いつか王子様が来て、すべてうまく行く日が来ないかしら」と考えている人間にとっての、希望。救い。
ある日、魔法使いが現れて、立派なドレスとカボチャの馬車と硝子の靴をぽーんと与えてくれるの。
ある日、ランプの精が現れて、のぞみをなんでも3つかなえてくれるの。
その類いの、希望。
今いる現実から、別の場所へ連れて行ってくれる。
「私」はなんの努力もしなくてイイし、なにも変わらなくてイイ。
「私」にだけ都合のいい奇跡。
物語としてよくあるのは、そーゆー「都合のいい奇跡」を主人公自らの意志で退けて、「自分の幸せは、自分の努力で勝ち取るよ」と意識を新たにしてハッピーエンド、とかね。
異世界を知ることで、今まで退屈だと軽んじていた自分の世界の良さを再認識して「今いまる場所で一生懸命生きるよ」と意識を新たにしてハッピーエンド、とかね。
そーゆー道具立てに見える存在なんだけどね、小宰相の君。
実際は、その「ここではないどこか」の住人である小宰相の君も、決して自由な存在ではなく、彼女も彼女の世界に囚われ、苦悩しているひとりでしかなかった。
主人公に「美しい世界」を見せておきながら、その美しい世界が絵空事でしかないと……そんなもの、どこにもないのだと、知らしめた。
だから、彼女は哀しい。
それまでの活き活きした姿と相まって。
彼女が自由であることも、強く美しいひとであることも、変わりはないのだけど。
匂宮を視点とする「わたし」が思い描くような理想郷ではなかったんだ、彼女と彼女の生きる世界は。
このテーマ部分を担うアップダウンを、あいちゃんは実に華やかに的確に演じてくれた。
いい娘役さんだ。わたしが彼女を認識したのが『血と砂』のソルーナさんの愛人役(カポーテを取った瞬間の、あのプロポーション!)と、ゆーひの子ども時代役(弟の方が背が高いのが萌え)。あれから7年経つのか……実力と華は今まさに円熟期に入ろうとしている。……なんで彼女がトップスターでないのかは、よくわかんない。
作品のヒロイン、ということになっているのかな? 浮舟@しずくちゃんは、すごく役に合っていた。
プロの役者さんの間に素人のシンデレラガール@アイドル出身がぽつんと混ざっているよーな実力の断絶ぶりが、かえって味になっている。
消え入りそうな歌声も、浮舟のイメージだ。
作品が正しく回っているので、彼女の浮舟役でなんの不満もない。
実力が伴わないだけで、センスのない子じゃないもの。弾けない琴を弾こうと、そうすることしかできないその絶望感に、そのかなしさに、共に涙できるもの。
この痛々しさ、無力さを見れば、そりゃあ抱きしめたくもなるわ。わたし、視点が匂宮ですから!(笑) 彼と同化して、思わず浮舟を抱きしめちゃいますよ。
その後、薫の告白に人形のように肯くところも、好き。
美しく、かなしい姿。
浮舟はまさしくカタシロであって、生身の存在じゃないのよね。
ぶっちゃけ、名前だけ、琴を弾くシルエットだけで登場しなくてもかまわないんだもの。
美しくはかないイメージさえあれば。
そーゆー「いなくてもいい」「姿はあるけれど、現世の存在ではない」役を、つまりそんだけ「美しくなくてはならない」役を、このパワーバランスでしずくちゃんにアテ書きした大野くんはすごいなと。
浮舟がシルエット可な存在である以上、影のヒロインが必要になるんだが、それが女一の宮@あーちゃんなんだよね。
「もうひとりの匂宮」であり、主人公と対をなす存在である女性。
アンネローゼ様はやっぱ美しく、強くなくちゃねー(笑)。(えーと、匂宮がラインハルトになるんでしょーか?)
宮中という、匂宮の生きる世界で、確実に生きている彼女だからこそ、物語の「語り手」であり、影のヒロインとして成立した。
てゆーかさー、匂宮が女一の宮に迫るところが、いちばんドキドキしたんですが。
あそこの匂宮がいちばん好き。ヲトメ心がきゅんきゅん(笑)しました。
主人公をもっとも魅力的に見せる女がヒロイン、であるならば、まちがいなく彼女がこの物語のヒロインだと思う。
あーちゃんの正統派の実力と、美しさ。少々地味目かもしれないが、女主人公たる能力を持った人だ。うん、女主人公ってのはまろやかな雰囲気が必要なんだよなあ。鋭角的な美貌ではなくて。
彼女が副組長ってのがまた、月組のすごいとこだなー。
大輪の華と豊かなヒロイン経験を持つあいちゃん、技術と経験は劣るが楚々とした美貌を持つしずくちゃん、そして堅実な実力とハンパないキャリアを持つあーちゃんと、タイプのチガウ「ヒロイン級の娘役」を3人も配した、すげー贅沢な公演だ。
女の子が魅力的な作品は、それだけで成功だと思うよ。
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