サイトーヨシマサを、なつかしく想う、新しい年のはじめ。

 ……てのも、どうかと思うが。

 『太王四神記』を観て、もっとも痛烈に感じたことは、斎藤吉正演出で観たかった。と、いうことだ。

 こーゆー他愛ないヒーローものは、つじつまなんかどーでもいいからひたすら派手にかっこよくあるべきだと思う。どうせ長大な原作の消化なんかできないんだから、そんなことあきらめて、中身の深さより、見た目の派手さのみを追求すべきだ。

 サイトーくんなら、もちろん話はもっとぐだぐだになる。ぶっこわれて整合性なんかなくて、とくに時間の流れや場所の感覚はわけわかんなくなる。なんじゃこりゃ、とあきれてアゴを落としているうちに、話が進み、「えっ、なんなの?!」ととまどっているウチに、話が終わる。

 だけど。
 10分に一度はストーリーと無関係にかっこいい見せ場がばーんと入り、1幕に3回は「ひょっとしてここで幕?!」ってくらいクライマックス的に無意味に盛り上がる。
 常識とか整合性を放棄している分、登場人物はより記号的にわかりやすく、かっこよくなる。英雄はより英雄らしく大見得を切り、悪役はさらに悪役として高笑い、苦悩はより激しく物語の進行を止めてまで慟哭する。

 音楽はキャッチーなアニメソングになり、1回聴くだけで耳に残り、劇場を出るときはもれなく口ずさんで帰れる。
 正義のタムドク@まとぶとその仲間たちのヒーローソング、対するダークヒーローヨン・ホゲ@ゆーひとその部下たちの復讐ソング(復讐はハズせませんから!・笑)、さらにわかりやすく悪の秘密組織と化したプルキル@壮くん率いる火天会の悪ダマソングが、盆を回し全セリを上下させ銀橋を使いまくり、映画張り大スクリーンの映像と併せてとんでもない派手派手しさに!
 やー、登場人物紹介であの大劇場ホリゾントいっぱいの巨大スクリーンに、まとぶさんやゆーひさんの美貌が映し出されることを思うとわくわくしますな。ついでに、三つ編みヒゲえりたんのトンデモ美貌にも!

 でもってエロエロシーンがある。タムドクとキハ@彩音ちゃんのラヴシーン、キハとヨン・ホゲの色っぽいシーンが必ずあって、そのベタなピンクさに観客が固唾をのむ(笑)。ついでに一斉にオペラが上がる(笑)。
 それからこれがすごく重要だが、スジニが萌えキャラなる。
 アニメ定番ボク女として、わかりやすくかわいい衣装になる。原作がどうあれ、大衆に埋没するよーな地味服は着せない。どんなにベタで恥ずかしいほどでも、「あそこに準ヒロがいる!」とわかる扱いをする。てゆーか、みわっちにスジニはやらせない。ふつーにすみ花あたりだろ。

 でもって、タムドクの死んだ母@さあやがなにかっちゃー回想シーンで現れる。母の幻に語りかけるタムタムは必須。
 さらにホゲは母を殺されたことをすごーく根に持つ。なにかっちゃー母のことを持ち出す。王になりたいのも、母@じゅりあの悲願だからだ。
 マザコンはサイトーくんのお約束!(笑)

 いやあ、サイトーくんだったらどんだけゆーひさんをエロエロに慟哭させてくれたかと思うと……。まとぶさんを虐めてくれたかと思うと……。黒あやねちゃんにS女ぶりを発揮させてくれたかと思うと……。
 そしてフィナーレの女の子たちに、耳としっぽが……ゲフンゲフン。

 
 小池演出だと地味だなーと思ってしまうあたり、どんだけ毒されてんだあたしゃ、と思ったが、会う人会う人「コレ、サイトー演出で観たかった!」と言うから、類は友を呼んでいるんでしょーな。

 小池せんせはとにかく色気がないのが致命的なんだよな。基本的に恋愛とか情念が描けない人だから、人物描写の軽さが際立つ。
 軽いなら軽いで、もっと派手にぶっとんでくれりゃあいいのに、常識の範囲で収まってしまう。
 演出力はすごくあるんで、それによってメンタル面の薄さをカバーしてるから体裁は保たれてるんだけどさ。

 地味で盛り上がりに欠けることが、いちばん気になった。初見では。
 テンションが一定だから、メリハリに欠けるのよ。

 2回目は「そーゆーもん」と思って観るので、気にならなかった。
 てゆーか、2回目からの方が、おもしろい。

 1回観て「盛り上がらない」と思った人、2回観てみてくれ。

 わたしは原作ドラマをまーーったく知らないし、プログラムも買ってないし、人物相関図もまともに眺めてないし、あらすじすら読んでいない人間だが、それでも立ち見位置から観劇して話にはちゃんとついていけたから、別に難しい物語でも予習が必要でもなんでもない。
 いろいろわからないことはあるが(笑)、細かいことは気にしなくても、物語自体はたのしめる。
 ので、「とりあえず1回だけ」でもOKだ。

 ……まあ、音楽が残念なことは、変わらないんだけど……何回も何回も観れば、気にならなくなるかなあ。
 音楽にもお金を掛けるべきだったと思うよ……。

 無い物ねだりをしてもしょうがないので、小池演出の『太王四神記』を愉しむつもり。
 てゆーか、演出はうまいからさー。わたし好みの作家ではないっちゅーだけで。

 まっつがこれだけたくさん出て、たくさん喋ってるのも小池だからだと感謝してまつ。谷やキムシンだったら台詞3つだったかもしれん。サイトーくんでも、まっつは好みの役者ではなさそーだから、もっと疎外されてそうだしな(笑)。

 なんにせよ、前作が『愛と死のアラビア』だったのだから、今回はパラダイスだ!

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