王になる宿命を持つ彼が、歩く道は。@大和悠河退団発表
2009年1月19日 タカラヅカ あれは、なんて作品だっただろう。
たしかノンちゃんがトップスターで、コウちゃんがワイヤーで吊られてばびゅーんって意味もなく飛んでいた。作品自体は「勘弁してくれ(怒)」ってもんで記憶から抹消されているけれど、そこで抜擢されていたぷくぷくほっぺのピエロ姿の男の子のことは、おぼえている。
大きな瞳がきらきらしていて、ほんとうに少女マンガの登場人物みたいだった。
「めちゃくちゃかわいいっ」「天海に似てる」「まだ研2だって?!」……観劇後、仲間内でも話題騒然。
大和悠河、という名は、ヅカファンならば避けては通れないビッグネームだった。
それは彼が入団してからずっと。入団直後から、ずっと。
「いつか君は王になる。ならなければいけない」
そう言われ続けて、生きてきた人。
タニちゃんは、トップスターになる宿命を背負って生まれた。
本名のタニオカさんはタニオカさんの人生があるだろうが、タカラジェンヌ「大和悠河」として生まれた瞬間から、「トップスターになる」という宿命を負っていたんだ。
それは、わたしも含め、市井の人間が想像もつかない重責だったろう。
未来の王様が通る道を造るために、そこを通ることができただろういろんな人たちが迂回させられたり、進むことを断念させられたり、よその道へ追いやられたりした。
いろんな人たちが兵士たちに蹴散らされていく様を眺めた上で、その道を改めて通らなければならなかった人。
……「宿命」であったことは一目瞭然だし、誰もが認めることであったけれど、長い年月のうちにそれは「義務」と化していた。
宿命と義務はちがうよ。
タニちゃんの不幸は、そこにあったかもしれない。
宿命が義務に変わる前に、トップスターになれれば良かったのだけど。
彼の歩む英雄譚は、途中から大きく色を変えた。
宙組に組替えが決まり、決まったのに星組に特出し続け、どこの所属かわからないまま時間だけが過ぎ、よーやく宙組生として本公演に出たときから、タニちゃんの迷走がはじまった気がする。
最初、まっすぐに最短距離で頂点へ続いていると思った彼の道は、思いの外蛇行を繰り返しときには迷路になり、予想の倍近くの道のりだった。
迷走していたと思う。
彼は「夢の世界の住人」だったけれど、「おとぎ話の登場人物」ではなかったので。夢の世界に住んでいる、生身の人間だったので。
迷走してなお。
彼の輝きは、褪せることがなかった。
その輝きは、王の印。王になるべき定めの証。
公式HPを見て、「嘘だ」「嘘だ」……と、声に出して何度もつぶやいていた。
わたしが「大和悠河」を好きとかキライとか以前に、「大和悠河」というファンタジーを信じていたからこそ、こんなの、わかんない。
彼は「王になる宿命」の人。王子様、と呼ぶに相応しい人。
だけど王の息子に生まれたから王になるんじゃない。なんの地位も名もない生まれであっても、彼は王になる、そういう宿命の人。
正直なとこ、わたしは宙組時代以降の彼の芝居に共感出来ず、彼の演じているものを理解できないことが多かったのだけど、そんなわたしをもってしても、その強い光の前に彼が王であること、この世界に必要な人であることに、異論はなかった。
彼の光を浴びていることが、心地よかった。
ただ、きらきらしいだけじゃない。
迷走し、たぶんいっぱい苦しんだだろうけれど、それらを超えていく強さを持った人。迷いや間違いすら、結果として「正しい」と収束させる力を持った人。
王としての資質、ってのは、それゆえの「宿命」や「重責」に耐える「強さ」をも言うんだ。
現在の彼の輝きは、ピエロの格好でただ持って生まれただけの輝きを発していた、あの幼い抜擢スターの輝きとはチガウ。
もともとの輝きに加え、長い時間を掛けて、苦しんで、手に入れた輝きだ。
それらすべて含め、彼は王であり、トップスターであり、わたしたちの「夢」だった。
思ったより遙かに長い道のりだったけれど、王は王座にたどり着いた。
彼が立つに相応しい場所だ。
これから、彼の新しい物語がはじまるのだと思った。
かしちゃんのときも思ったけれど、人には相応しい場所がある。真ん中でこそ、発揮できる力もある。
スロースタートになるかもしれないが、王が真ん中に立つことで徐々にその光で周囲の人たちを振り向かせることができるだろう。
時間を掛けて、取り組んでいくのだと思った。一朝一夕で結果の出ることではないから。
これほど時間を掛けて、彼を王にしたのだから。
どうして「今」なのかな。
トップスターとしてのタニちゃんの旬は、まだこれからも続くだろうに。
むしろこれから、芳醇な輝きを増すだろうに。
「王」の決断なのだから、それがきっと、正しいことなのだと、遠く市井の隅から想像することしかできないけれど。
たしかノンちゃんがトップスターで、コウちゃんがワイヤーで吊られてばびゅーんって意味もなく飛んでいた。作品自体は「勘弁してくれ(怒)」ってもんで記憶から抹消されているけれど、そこで抜擢されていたぷくぷくほっぺのピエロ姿の男の子のことは、おぼえている。
大きな瞳がきらきらしていて、ほんとうに少女マンガの登場人物みたいだった。
「めちゃくちゃかわいいっ」「天海に似てる」「まだ研2だって?!」……観劇後、仲間内でも話題騒然。
大和悠河、という名は、ヅカファンならば避けては通れないビッグネームだった。
それは彼が入団してからずっと。入団直後から、ずっと。
「いつか君は王になる。ならなければいけない」
そう言われ続けて、生きてきた人。
タニちゃんは、トップスターになる宿命を背負って生まれた。
本名のタニオカさんはタニオカさんの人生があるだろうが、タカラジェンヌ「大和悠河」として生まれた瞬間から、「トップスターになる」という宿命を負っていたんだ。
それは、わたしも含め、市井の人間が想像もつかない重責だったろう。
未来の王様が通る道を造るために、そこを通ることができただろういろんな人たちが迂回させられたり、進むことを断念させられたり、よその道へ追いやられたりした。
いろんな人たちが兵士たちに蹴散らされていく様を眺めた上で、その道を改めて通らなければならなかった人。
……「宿命」であったことは一目瞭然だし、誰もが認めることであったけれど、長い年月のうちにそれは「義務」と化していた。
宿命と義務はちがうよ。
タニちゃんの不幸は、そこにあったかもしれない。
宿命が義務に変わる前に、トップスターになれれば良かったのだけど。
彼の歩む英雄譚は、途中から大きく色を変えた。
宙組に組替えが決まり、決まったのに星組に特出し続け、どこの所属かわからないまま時間だけが過ぎ、よーやく宙組生として本公演に出たときから、タニちゃんの迷走がはじまった気がする。
最初、まっすぐに最短距離で頂点へ続いていると思った彼の道は、思いの外蛇行を繰り返しときには迷路になり、予想の倍近くの道のりだった。
迷走していたと思う。
彼は「夢の世界の住人」だったけれど、「おとぎ話の登場人物」ではなかったので。夢の世界に住んでいる、生身の人間だったので。
迷走してなお。
彼の輝きは、褪せることがなかった。
その輝きは、王の印。王になるべき定めの証。
2009/01/19
宙組主演男役 大和悠河 退団のお知らせ
宙組主演男役 大和悠河が、2009年7月5日の東京宝塚劇場宙組公演『薔薇に降る雨』『Amour それは・・・』の千秋楽をもって退団することとなり、2009年1月20日に記者会見を行います。
公式HPを見て、「嘘だ」「嘘だ」……と、声に出して何度もつぶやいていた。
わたしが「大和悠河」を好きとかキライとか以前に、「大和悠河」というファンタジーを信じていたからこそ、こんなの、わかんない。
彼は「王になる宿命」の人。王子様、と呼ぶに相応しい人。
だけど王の息子に生まれたから王になるんじゃない。なんの地位も名もない生まれであっても、彼は王になる、そういう宿命の人。
正直なとこ、わたしは宙組時代以降の彼の芝居に共感出来ず、彼の演じているものを理解できないことが多かったのだけど、そんなわたしをもってしても、その強い光の前に彼が王であること、この世界に必要な人であることに、異論はなかった。
彼の光を浴びていることが、心地よかった。
ただ、きらきらしいだけじゃない。
迷走し、たぶんいっぱい苦しんだだろうけれど、それらを超えていく強さを持った人。迷いや間違いすら、結果として「正しい」と収束させる力を持った人。
王としての資質、ってのは、それゆえの「宿命」や「重責」に耐える「強さ」をも言うんだ。
現在の彼の輝きは、ピエロの格好でただ持って生まれただけの輝きを発していた、あの幼い抜擢スターの輝きとはチガウ。
もともとの輝きに加え、長い時間を掛けて、苦しんで、手に入れた輝きだ。
それらすべて含め、彼は王であり、トップスターであり、わたしたちの「夢」だった。
思ったより遙かに長い道のりだったけれど、王は王座にたどり着いた。
彼が立つに相応しい場所だ。
これから、彼の新しい物語がはじまるのだと思った。
かしちゃんのときも思ったけれど、人には相応しい場所がある。真ん中でこそ、発揮できる力もある。
スロースタートになるかもしれないが、王が真ん中に立つことで徐々にその光で周囲の人たちを振り向かせることができるだろう。
時間を掛けて、取り組んでいくのだと思った。一朝一夕で結果の出ることではないから。
これほど時間を掛けて、彼を王にしたのだから。
どうして「今」なのかな。
トップスターとしてのタニちゃんの旬は、まだこれからも続くだろうに。
むしろこれから、芳醇な輝きを増すだろうに。
「王」の決断なのだから、それがきっと、正しいことなのだと、遠く市井の隅から想像することしかできないけれど。
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