お茶会で、スタンディング起きてました。

 場もたけなわ……というか、後半戦に入った頃。
 話もナニもぶった切って、司会者が「お客様がいらっしゃいました」……しいちゃんも、客席も、ぽかん。

 立樹遥お茶会『My dear New Orleans/ア ビヤント』、ゲストならすでにベニーが来ていて。もう誰か来るような雰囲気はまったくなかった。
 同じホテルでお茶会やってるベニーが来るのは想定内だったが、彼以外というとわからない。見当もつかない。

 え、誰?

 しいちゃんもまったく聞いてなかったようで意外そうにしてるし、すべての人々が注目する中、後方ドアが開いた。

 トウコちゃん登場だ。

 どよめく会場。
 えええっ。
 や、だって、トップ様だよ? 下級生茶会へわざわざ現れるなんて、考えたことなかった。

 ほんとに声上がるし、拍手爆発だし、波のように立ち上がる人たち続出だし。
 てか、スタンディングかよ?!
 拍手しながら、みんな立ち上がるのかよ?!

 や、トウコちゃんが通る真ん中あたりの人たちは、わたしたちのテーブルも含め口開けたまま拍手で見送りましたが、遠いテーブルの人たちは立ち上がっていた。

 トウコちゃんはちっちゃい背中を見せて、わたしたちのテーブル横通って、ステージへ上がりました。

 ステージ上で出迎えるしいちゃん、泣き出すし。

 えーと。
 ベニーがやってきて、このお茶会の方向性決まったじゃん。
 お笑いタスキを掛けて、しんみりさせない明るいお茶会にするんだって。
 涙で別れたいわけじゃないんだ。
 それがしいちゃんの、意志であり、決断だったんじゃん。

 ゲストによって決められた方向性は、ゲストによって破られた。

 しいちゃん、泣いちゃった。

 トウコちゃん見て、泣いちゃった。
 そして、当のトウコ様は。

「ナニそれ(笑)」

 と、泣きべそしいちゃんが、大真面目に身につけている「本日の主役」タスキを見て、大笑いしていた。

 ……女王様だわ。女王様がいる!!(笑)

 泣き出したしいちゃんを見て、満足そうなんですが、トウコ様?! うわー、なにこのSプレイ!!
 お茶会でのしいちゃんは通常攻キャラで、どっちかっていうと実はやんわりS入ってる風味の人なんですが、そんな素敵な立役さんをへなへな泣かせるトップスター様ってば、なんて素敵に女王様。

 いやあ、場内大ウケ。

 トウコちゃんは実にトウコちゃんらしく、笑いを取りにいく。ひとりボケツッコミは基本、しいちゃんのツッコミなどアテにしないっ。
 うわっうわっ、はじめて見た、トウコちゃんのひとりボケツッコミ。テレビではいつも見るけど……て、そうかわたし、ナマでトウコちゃん見るの、はじめてだ?

 …………すげー長い間トウコちゃん眺めてきていて、ファンやってきたわりに、一度もナマのトウコちゃん見たことないわ。
 てゆーか一度もないまま終わるのがあたりまえだと思っていた。芸能人とそのファンって、そーゆー距離が当然だし。
 トウコちゃんは昔から、あまりに「スター」だったから。最後まで、ナマの姿を拝むことなんかできないと思い込んでいた。

 ここで、会えるなんて。
 その美しい姿を、華奢で小さな姿を、見られるなんて。
 しかも、こんなに近くで。

 しかも、投げキスするし。

 トウコちゃんの投げキス、ゴチっす!!
 いやその、帰り際にしいちゃん相手にやったんだけど。会場、黄色い悲鳴に満ちる(笑)。

 で、kineさんに聞いたところ、そのせーーっかくのトウコ姫の投げチューを、当の立樹さんは、アタマ下げていて、受け取ってないらしい。
 な、なんてしいちゃんクオリティ(笑)。

 トウコちゃんはあのぶっきらぼうな喋り(笑)でひたすら笑いを取り、しいちゃんはそれに泣き笑いで振り回される、感じに終始した。
 とくに建設的な話はしていない。
 雪組時代、トウコの役を新公でしいちゃんが演じることが何度もあったのでそのときの話を……しようとして、結局話していない。「あったあった」と公演名を挙げるだけで、そのときどんなだったとか、どんなエピソードがあったとかはナシ。
 仲良しゆえの、長いつきあいゆえのぐたぐだで終わってしまった(笑)。

 涙で別れたいわけじゃない、笑ってたのしく明るく終わろう。
 そう決心していた、男役・立樹遥を、安蘭けい様が華麗にぶっつぶす様が、愉快すぎた。

 外向きのカオが瞬間取れて、生身の女の子のカオがのぞいた。

 わたしがしいちゃんのナニを知るわけじゃないけれど、タスキを掛けた瞬間の、自分に言い聞かせるような決断のカオを見たあとに、それが涙となってぽろぽろ壊れ落ちる瞬間は、衝撃だった。

 トウコちゃん、GJ!
 なんかもお、なにもかもが愛しい。

 ホテルロビーの案内板に、「安蘭けいお食事会」と書いてあったのは知っていたけれど、トップさんがお食事会を中座して、わざわざ来てくれるなんて思ってなかったよ。

 泣いてしまったしいちゃんは、そのあと照れたように笑って、また「男役・立樹遥」のカオに戻っていった。
 仕切り直し、みたいな、意志の力でカオを、雰囲気を戻したよ。

 プロだなあ、と思う。
 わたしはぬるいファンでしかないので、しいちゃんがわたしたちに「見せたい」と思っているカオを、そのまま受け止め、見ていたいと思う。
 彼はファンタジー。彼はフェアリー。
 彼は彼自身の意志で、ファンのために「立樹遥」を作るんだ。

 だからわたしは、その「立樹遥」を見ていたいんだよ。

 ずっと。

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