ある「女優」との別れ。@星組千秋楽
2009年3月11日 タカラヅカ あすかちゃんは、どんどんかわいくなる。
彼女を最初に認識したのは、阪急のお正月ポスターだ。研1の将来有望な子がたったひとりだけ選ばれて、阪急沿線すべてに振り袖写真が張り出される。(男役と娘役が毎年交互に選ばれるので、男役の年だったら、選ばれたのはキムだろうなと)
そのポスターを見た限りでは、特別「こ、これは……っ」と感嘆するような美少女ではなかった。
タカラジェンヌはふつーのアイドルのようなビジュアルでない場合が多いので、まあジェンヌ的にふつー? くらいの感覚。
今ちょっくらそのポスターと同じ写真を使っている99年1月1日号の「TOKK」引っ張り出して来たんだが、わ、若い……(笑)。たしかにかわいい。テレビアイドル的美貌ではないけど、十分ポスターにしてヨシな容姿。
しかし、ポスター写真はイイとして、本文内にある素顔写真がなかなかショッキング(笑)。もっとマシな写真使ってやれよ、阪急……。
そこからスタートして、かわいく見えたりちょっと反応に困る容姿に思えたり(『琥珀色…』の頃が最強)、いろいろいろいろ印象を変えながら、いつの間にかあすかちゃんは絶世の美女になっていた。
タカラヅカ・ヒロインの資質はいろいろあるが、絶対譲れない条件のひとつとして、「高い女」というのが、ある。
清純で儚げで高貴、という「高さ」もあるし、高慢な鉄の女という「高さ」もある。つまり、そのへんにいくらでもいる、ふつーの女の子じゃだめなんだ。現代のチャラ男がへらへら口説けるよーな女じゃだめ。
プリンセスであろうと娼婦であろうと、ふつーの男から「高嶺の花」と崇め奉られる系の「高い女」でなくてはならない。
あすかちゃんの得意分野は「女優」。
下っ端の売れない女優ではなくて、「大女優」。たとえそれが過去のモノであってもとにかく間違いなく「高い女」だった。ふつーの男じゃ、臆して近寄ることもできやしねえ。
10年前の阪急ポスターで「ふつー?」と思った、ただ若いだけの女の子が、時を経てさまざまな経験だの回り道だのこなして、まぎれもない「高さ」を持ち、「絶世の美女という表現が遜色ない」ジェンヌになった。
袴姿でにこにこ笑いながら、あちこちに何度もお辞儀をしながら歩くあすかちゃんを見て、いろんなことを思い出していた。
わたしが「遠野あすか」に出会って10年間。彼女の「芝居」が好きで、「できる子だ」という思い込みから、勝手に期待してがっかりしたり、やっぱり惚れ直したり、もーいろいろあった。
それでも、「あすかが、トウコの相手役になる」と思ったとき、うれしくてマジ泣きした。涙が出るとは、自分でも思ってなかった。
あすかがいたからわたしは、『琥珀色の雨にぬれて』新公を見ることが出来た。あすか目当てで行ったんだもん。そのときはまーーったく興味なかったまっつの色男役を、興味ないなりにナマで見られた、のはあすかのおかげ。
観劇意欲になる役者、であり続けてくれた、遠野あすかのおかげで、いろんな作品に、そしてジェンヌに出会えた。
別れの寂しさと、感謝の気持ちがごちゃまぜになって、口からはただ「かわいい」という言葉しか出なかった。
拍手しながら、「かわいい、かわいい」とだけ口走る。周囲の人も、みんな似たよーなもんだが。
や、だって、かわいいもの!!
女優役者である迫力とか美貌とかより、小動物のようなちょこんとしたかわいさだった。
くりっとした目で、両手で大きな花を持って。
前楽の前日、貸切公演を観ながらふと、思ったんだ。
遠野あすかはきっと、女優業を続けるだろう。これほどの役者が、天職を捨てることはありえない。
彼女の卒業後の予定がどーなっているかなんて知る余地もないが、それだけはなんの疑問も不安もなく、思い込んでいたので、イイ。
突然思ったのは、あすかがトウコと恋愛する役を見られるのは、これが最後なんだ。ということ。
トウコだって役者を続けるわけだから、このふたりが今後同じ舞台に立つ未来だって、あるだろう。そこで火花散る演技合戦を見せてくれるかもしれない。
それについては、なんの不安もない。そんな未来を、楽しみにしていられる。
ただ。
あすかとトウコが、「恋」を演じることは、もうないんだ。
トウコちゃんは女になってしまうから、あすかとは友人とか恋敵とかを演じることはあっても、もう恋人や夫婦は演じられない。
……そのことが、とてつもない損失に思えた。
このふたりの、火花散る「恋」の演技を、見たかったんだよ。
「愛」だけではない、「憎」や「怨」の演技すら。
退団は、それを失ってしまうことなんだ、と、今さらながらに気づき、愕然とした。
タカラヅカという異世界で、花園で、「遠野あすか」で見たかったモノが、たくさんある。
まだ足りない。
足りないよ。
袴姿で、ライトと報道陣のフラッシュの中で、きらきらきらきら輝くあすかちゃんを見て、ほんと、今さら思う。
覚悟を決めて澄ましていたのに、コトの間際でみっともなくあがく人みたいに、「トウコLOVE」車で去っていく姿を見ながら、痛烈に後悔した。
や、後悔したからどうなるものでもないのに。
行かないで。
まだ、足りない。
あなたの描く「女性」を、もっと見せて。
彼女を最初に認識したのは、阪急のお正月ポスターだ。研1の将来有望な子がたったひとりだけ選ばれて、阪急沿線すべてに振り袖写真が張り出される。(男役と娘役が毎年交互に選ばれるので、男役の年だったら、選ばれたのはキムだろうなと)
そのポスターを見た限りでは、特別「こ、これは……っ」と感嘆するような美少女ではなかった。
タカラジェンヌはふつーのアイドルのようなビジュアルでない場合が多いので、まあジェンヌ的にふつー? くらいの感覚。
今ちょっくらそのポスターと同じ写真を使っている99年1月1日号の「TOKK」引っ張り出して来たんだが、わ、若い……(笑)。たしかにかわいい。テレビアイドル的美貌ではないけど、十分ポスターにしてヨシな容姿。
しかし、ポスター写真はイイとして、本文内にある素顔写真がなかなかショッキング(笑)。もっとマシな写真使ってやれよ、阪急……。
そこからスタートして、かわいく見えたりちょっと反応に困る容姿に思えたり(『琥珀色…』の頃が最強)、いろいろいろいろ印象を変えながら、いつの間にかあすかちゃんは絶世の美女になっていた。
タカラヅカ・ヒロインの資質はいろいろあるが、絶対譲れない条件のひとつとして、「高い女」というのが、ある。
清純で儚げで高貴、という「高さ」もあるし、高慢な鉄の女という「高さ」もある。つまり、そのへんにいくらでもいる、ふつーの女の子じゃだめなんだ。現代のチャラ男がへらへら口説けるよーな女じゃだめ。
プリンセスであろうと娼婦であろうと、ふつーの男から「高嶺の花」と崇め奉られる系の「高い女」でなくてはならない。
あすかちゃんの得意分野は「女優」。
下っ端の売れない女優ではなくて、「大女優」。たとえそれが過去のモノであってもとにかく間違いなく「高い女」だった。ふつーの男じゃ、臆して近寄ることもできやしねえ。
10年前の阪急ポスターで「ふつー?」と思った、ただ若いだけの女の子が、時を経てさまざまな経験だの回り道だのこなして、まぎれもない「高さ」を持ち、「絶世の美女という表現が遜色ない」ジェンヌになった。
袴姿でにこにこ笑いながら、あちこちに何度もお辞儀をしながら歩くあすかちゃんを見て、いろんなことを思い出していた。
わたしが「遠野あすか」に出会って10年間。彼女の「芝居」が好きで、「できる子だ」という思い込みから、勝手に期待してがっかりしたり、やっぱり惚れ直したり、もーいろいろあった。
それでも、「あすかが、トウコの相手役になる」と思ったとき、うれしくてマジ泣きした。涙が出るとは、自分でも思ってなかった。
あすかがいたからわたしは、『琥珀色の雨にぬれて』新公を見ることが出来た。あすか目当てで行ったんだもん。そのときはまーーったく興味なかったまっつの色男役を、興味ないなりにナマで見られた、のはあすかのおかげ。
観劇意欲になる役者、であり続けてくれた、遠野あすかのおかげで、いろんな作品に、そしてジェンヌに出会えた。
別れの寂しさと、感謝の気持ちがごちゃまぜになって、口からはただ「かわいい」という言葉しか出なかった。
拍手しながら、「かわいい、かわいい」とだけ口走る。周囲の人も、みんな似たよーなもんだが。
や、だって、かわいいもの!!
女優役者である迫力とか美貌とかより、小動物のようなちょこんとしたかわいさだった。
くりっとした目で、両手で大きな花を持って。
前楽の前日、貸切公演を観ながらふと、思ったんだ。
遠野あすかはきっと、女優業を続けるだろう。これほどの役者が、天職を捨てることはありえない。
彼女の卒業後の予定がどーなっているかなんて知る余地もないが、それだけはなんの疑問も不安もなく、思い込んでいたので、イイ。
突然思ったのは、あすかがトウコと恋愛する役を見られるのは、これが最後なんだ。ということ。
トウコだって役者を続けるわけだから、このふたりが今後同じ舞台に立つ未来だって、あるだろう。そこで火花散る演技合戦を見せてくれるかもしれない。
それについては、なんの不安もない。そんな未来を、楽しみにしていられる。
ただ。
あすかとトウコが、「恋」を演じることは、もうないんだ。
トウコちゃんは女になってしまうから、あすかとは友人とか恋敵とかを演じることはあっても、もう恋人や夫婦は演じられない。
……そのことが、とてつもない損失に思えた。
このふたりの、火花散る「恋」の演技を、見たかったんだよ。
「愛」だけではない、「憎」や「怨」の演技すら。
退団は、それを失ってしまうことなんだ、と、今さらながらに気づき、愕然とした。
タカラヅカという異世界で、花園で、「遠野あすか」で見たかったモノが、たくさんある。
まだ足りない。
足りないよ。
袴姿で、ライトと報道陣のフラッシュの中で、きらきらきらきら輝くあすかちゃんを見て、ほんと、今さら思う。
覚悟を決めて澄ましていたのに、コトの間際でみっともなくあがく人みたいに、「トウコLOVE」車で去っていく姿を見ながら、痛烈に後悔した。
や、後悔したからどうなるものでもないのに。
行かないで。
まだ、足りない。
あなたの描く「女性」を、もっと見せて。
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