マヤさんは好きだが、過剰なまでの重用・多用には疑問を持っている。

 今回の作品でも、彼が2役やる意味がわからない。
 彼は体型にも声にも特徴があるので、ヅカ初心者にも判別がつきやすい。スタイル命の若者ばかりの舞台で、ひとり小柄で横幅もそれなりにあり、年配者であるわけだから、それだけで目立つんだ。
 そんな目立つ、初心者でも区別のつくよーな人が、重要な役をふたつやると、混乱が生じる。
 ディープなヅカファンなら「2役で、あれは別の人を演じている」とわかるが、ヅカどころか舞台演劇を見慣れない人には、咄嗟にわからないだろう。
 こんなに初心者向けで大衆向けの作品でありながら、初心者やヅカファン以外を無視した配役をすることに、強い疑問を持っている。

  
 てなわけで、新人公演『ZORRO 仮面のメサイア』では、問題のマヤさんの役を、ちゃんと別の人が演じていたのでウレシイ。
 役が多いわけでもない芝居で、他にいないならともかく役者は何十人もいるのに、作品壊してまで主要人物が2役やる必要ないもの。

 マヤさんの役は、インディアン長老@香音有希くん、マヤさん本領発揮のコメディアンパパ@詩風翠……って、ハウル?!!

 ハウルくんといえば、小柄で儚げな美少年ぢゃないですか。
 押し出しが強いというわけでもない、野に咲くすみれのやうなヒナギクのやうな少年が、いきなりあの超喋りまくり踊りまくりコメディアンを?!

 どーすんだこりゃ、と思っていたら。

 マヤさんの役は、さゆちゃんだった。

 さゆちゃんはそもそも、一原さんの役だ。つまり、コメディアンパパの奥さんで、お笑い一直線のパパに振り回される役。ツッコミですらなく、ただあたふたするだけ。
 このコメディアンパパと、そのなにもしない奥さんの役が、キャラが入れ替わっていた。

 …………やっぱりさあ、『ZORRO 仮面のメサイア』という作品で、主役以外でオイシイ役って、メンドーサでもガルシアでもなく、このコメディアン役なんだよねええ。
 専科さんばかりがオイシイ作品を作るのはどうかと思うよ、演出家の先生方。創作者だから、自分が苦労して生み出したものを、巧い人に演じて欲しいのはわかるけどさー。名前も知らない孫みたいな年の子より、長年つきあってきた気心しれた大人にやってほしいのもわかるけどさー。

 オイシイ役、である専科さんの役を新公で演じても、たしかにオイシイけど、路線としてのスキル上げにはあまりつながらないから、スター育成の意味でも専科さん重用過多はどうかと思う。

 とりあえず、その「オイシイ役」を悠々演じるさゆちゃんは、すごかった。
 新公ヒロ、バウヒロ、DCヒロ、本公演含むいろんな公演での準ヒロインと総ナメしてきたキャリアが光っている。キャリアだけでいえば、もう新公卒業していてもおかしくないもんねえ。
 なんかひとりだけ上級生が出演しているような、安定した貫禄だった。

 そのパワフルで空気読めない人の言うこと聞かない、しかし愛らしい奥様に、振り回されぶっ飛ばされている可憐な婿養子が、ハウルくんだった(笑)。

 わ、わかる。この役なら、わかるよハウルくん(笑)。

 婿養子だという説明はどこにもなかったが、メイドの報告する相手が奥様だったりすることから、この家の主人が奥様の方だとわかる。

 とんでもなくはた迷惑な奥様なんだが、押し出しよくチャーミングだし、気弱な旦那が奥様に惚れていることも、よくわかるんだ(笑)。
 てゆーかこのカップル、イイ。
 突撃奥様@さゆちゃん、儚げ婿養子@ハウル。
 さゆちゃんのパワフルっぷり、周囲見えないぶりが、突撃娘ロリータとDNAの濃さを感じさせる。
 ロリータ、ママ似だったんだ!!
 このママ、若かったら間違いなくコスプレしてゾロの追っかけしてるよ!!(笑)

 ただし、この場合のロリータは知性も理性もありそうな(ついでになにか裏がありそうな・笑)新公のみなこロリータではなく、考え足らずで爆走している本公演のとなみちゃんロリータね。

 さゆちゃんがとなみちゃんのママなんて、ヅカのスターシステム上ありえないが、ちょっと「夢の競演」として見てみたいわ。
 この母にしてこの娘あり!! と思わせてくれるだろう(笑)。

 また、「愛がすべて」のタカラヅカだもん、そんな人騒がせ突撃奥様に、婿養子が振り回されへとへとになりつつ惚れきっている様子は、微笑ましくて絶対素敵。

 そしてこの、婿養子@ハウルくん。

 かわいすぎて、どうしようかと。
 
 あの線の細い美貌で、へろへろへにゃへにゃといかにも儚げに弱々しく、マラカス持って踊ってるの。

 ええ、ここだけちゃんとマヤさんの役割を果たしている。
 マヤさんが踊っているあのみょ~~なダンスを、ハウルくんが婿養子の薄幸さ全開に、しかしたのしそうに踊っているのよ。
 うおおお、かわいいぃ~~。

 思わぬところでときめいた。
 強く活き活きしているさゆちゃんと、彼女の尻に引かれている儚げなハウルくん(笑)。
 お似合いのカップルでした。

 
 あと目に付いたのが、ガルシアの部下その2@煌羽レオ。……て、研1(4月から研2)かよ?!
 文化祭では日舞とダンスで目立っていたけれど、演劇は見ていない(文化祭の演劇は全員がWキャスト)ので知らなかった……芝居、好きなんだ。
 すっげー勢いで演じてた。台詞なんかろくにないんだけど、顔芸ハンパないよ。
 もっとこの子の芝居が見てみたいな。

 美形でウケたのが、神父@透真かずき。役としてはおっさんか老人なんだろうけど(ロリータ父と同年代か、それ以上?)、本役でもそらくんが美貌だけで演じている。
 新公でも美形くんで、年齢設定がどうあれこの役は正義のヒーローに助けられる、美貌の姫君ポジションだと判明。
 僧服を美しくストイックに着こなし、緊縛プレイに萌えさせることが条件てか?(笑)
 透真くんは今回、みっちゃんにもタニちゃんにも似ていた……気がする。

 ブラック・エルク@れのくんは、美貌のインディアン。派手な被り物に負けない美貌が素敵。


 で、最後になったが、ベルナルド@帆風成海くんと、夜の稲妻@ミミちゃん同期カップル。
 えーと。
 ミミちゃんはきれいに演じていました。ひとめでチャーミングなインディアン娘って、目を引くなー。
 
 帆風くんが、うまいのかどうかは、正直よくわかりませんでした。

 台詞なしで演じきる役は、ある意味オイシイ、重要な役なんだが。
 それは、ベテランがやるからオイシクて重要なんであって、抜擢下級生がやっても大変なだけなんじゃないかと。

 男役10年と言われるように、「男役」という型が出来上がるまでには、物理的な経験と時間が必要だ。
 着こなしや立ち居振る舞いもそうだが、スターとして主要キャラを演じるようになるためには「声」も必要。女の子声で女の子の喋り方ではダメなんだ。

 新公という貴重な実践の場で、「声」「台詞」を禁じられた役は、スキル上げという点ではあまり役に立っていないのでは?
 もちろん、台詞なしで表現するスキルはつくかもしれんが、ソレ、新公でなくても役ついてなくても、モブでもできるし。マイク通して声を出す、てのはほんと貴重な経験になるはずなのに。

 せっかく抜擢なのに、この役だとうまいのかどうかもわかんない。縦にも横にも大きいなあ、とか、がんばってるなあ、がんばれ~、とか、ゾロ@がおりくんといろいろ違いすぎで「影」になっていない気がする、とか、それくらいだもんなあ。
 あ、夜の稲妻と仲良さそうなのはわかった。ぺたっとした感じ(わかりにくい表現)。ヅカですから、カップルに愛があるのは、そしてそれが傍目にわかることは、良いことです。

 
 代替わりして最初の、研6までしか出演していない新人公演。
 脇を締める達者な88期が抜けたわりに、しっかりと芝居をやっていたと思う。89期が真ん中経験者・脇を含めしっかりしているのがうれしいっす。

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