「相変わらず美しい」
 金の力で伯爵家に入り込んできたグザヴィエ@澄輝は、自分の獲物に向かってそう言った。フランシス@蒼羽は、眉をひそめた。男を無視して部屋を出ようとし、呼び止められる。
 男はフランシスにプレゼントだとリボンのついた小箱を差し出した。
「私たちは兄弟になるんだ」
 グザヴィエは空々しい笑いを浮かべて言う。
 彼は伯爵家の負債を肩代わりすることを条件に、フランシスの姉イヴェット@愛花と婚約した。
 兄弟……この男が、兄?
 フランシスは慇懃に小箱を受け取り、立ち去った。
 グザヴィエからのプレゼントは豪華な腕時計だった。……身につけざるを得ない、のだろう。金で買われた獲物としては。いっそ指輪なら、突き返すことも出来るものを。
「少しずつ犯されていくみたいだ」
 フランシスは拒めない。伯爵家を守るために姉はこの政略結婚を受け入れるつもりでいるのだ。男の目的が美貌の弟の方だと知りながら、それでも家のために、彼女はただのお飾りとしての結婚を飲む覚悟なのだ。
 姉の決意と献身を前にして、フランシスになにが言えるだろう……。
 
 あきらめるしか、ないのか……。
 フランシスは唇を噛みしめた。

 
 その後。
 伯爵家の負債がなくなり、グザヴィエとイヴェットの結婚がナシになったとわかったとき、フランシスは「めでたい飲みたい♪」と大喜びで歌い踊りましたとさ。

      -完-


              ☆

 ……て話に思えて、びびりました、新人公演『薔薇に降る雨』
 なるほど、さすが「薔薇」な話だな。って、チガウか。

 とりあえず、フランシス@りくくんが、大層美しゅうございました。

 グザヴィエ氏の登場シーン、彼を見て、次にフランシスの美貌をオペラでぼーっと眺めていたら、そこへ「相変わらず美しい」というグザヴィエ氏の台詞が入って来たので、「うん、美しいよな」と素直に肯きました。

 てゆーか、姉と婚約したからって弟にプレゼントすることないよな。モノで釣ろうとする浅はかな男、って設定なんだろうけど、それにしてもなんかヤラしいじゃん、変に。
 や、本公演では、あり得ませんけど。いやその、みっちゃん相手にソレはないだろう、いくらなんでも。(失礼な。……ん? 失礼なのか?)

 しかし新公のフランシスなら、アリだ。
 ぶっちゃけ姉よりも美し……ゲフンゲフン。てゆーか姉があまり美しく……ゲフンゲフン。

 
 正塚芝居はなにより新公が大変なことになる。
 派手な衣装や舞台がかった台詞で底上げできず、シンプルな着こなし力だとかナチュラルな演技力が必要になる。
 そして、主要人物だからといって特別な衣装は着せてもらえないので、自力で輝かないと、背景に埋没する。

 大変だよな、ほんと。

 その大変さを思えば、みんなよくやっていたかと。

 しかし正塚せんせ、この脚本やっぱタルいっす(笑)。
 盛り上がりに欠けるというか、本公演がどれだけ出演者の力で持っていたか、よくわかった。
 新公だと場が保たない、沈む。
 なんともとっかかりのない、目の覚めるような場面のない話だなと。

 初主演のジャスティン@かいくんはほんと、大汗かきながらがんばっていた。
 今まで特に意識したことなかったけど、なんかみっちゃんに似てるなあ……、顔。
 ふつうにうまかった、よね?
 挨拶が素晴らしかった。このままオペラでもはじまりそうな勢い(笑)。何度も何度も繰り返す感謝と感動の言葉。いい子だ。ほろり。

 男爵@いちくんは……いっそヒゲがあればいいのに、と思った。すごく専科さん風味っつーか。『ME AND MY GIRL』のジョン卿みたいだ。
 この役を「2番手役」として輝かせているのはらんとむのスター力なんだなと再確認。

 グザヴィエ@澄輝くん、えーと、本役と衣装同じだった? ちがっていたよーな気がするんだが。ヤラしかったが、イヴェットをどう思っているのかはよくわかんなかった。
 や、わたし的にはそこがたのしかったが(笑)。
 エロダンス男担当だったようだが、エロダンス女@れーれに釘付けになっていたので、そっちはよくわかんにゃい……。

 クリストフ@星吹くん、顔芸すごいなヲイ。イヴェットパパ@香翔くん、はじけてた……けど、コメディは難しいなぁ。

 今回、役名あるのかどーか知らないが、やたらいろんなとこに出ている光海舞人くんの顔が好みだと思った。や、今「おとめ」で確かめたんだが、多分この子だと思う。

 公爵夫人@百千さん、イヴェットママン@えりちゃん、うまいなー。

 ヘレン@せーこちゃんは、ラヴ度が高くて、びっくりした。
 本役さんはなんつーか、もっとヘレンとジャスティンの関係が「生活の一部」っぽいのに、新公では「恋愛中」に見えた。
 カフェの場面が「デート」って感じで……ジャスティンと会って話していることがうれしくて仕方ないっていうか……。
 主人公とわかりやすく恋愛しているため、彼女のヒロイン度が上がっているんだが、それは見ていてたのしいが、作品バランス的にはどうなんだろう。
 ジャスティンがより一層「不実な二股男」に見えるんだが……ヘレンがいじらしすぎるよーっ。

 せーこちゃんは「タカラヅカのヒロイン」にしては、キャラクタ的にちょっとチガウ部分があるんだが、とりあえず派手な人……目立つ人だと思う。それは、バウヒロイン経験者であるっていうキャリア面もあるんだろうが。
 真ん中向きではないかもしれないけど、この存在感を活かしていって欲しいと思ったナリ。

 ベロニカ@れーれは、ほんと、かわいいわ……。登場すると、素直に「あ、かわいい子がいる」と思える。それは大きな武器だよなあ。
 ロリっぽいのもまたヨシ(笑)。彼女が大胆なエロシーンを演じているもんで、おもわずがっつり食いついてしまった(笑)。

 イヴェット@ちさきちゃんは、ふつーにうまいと思う。でも、やっぱ「タカラヅカ」って大変だよなあ……大劇場でヒロイン張るってのは、難しいんだと思った。
 そしてやはり、水しぇんに似ていると思った……。口とか顎とか。

 
 個人的に、カフェのボーイにツボった。

 開演ぎりぎりまで友だちと喋ってたんで、キャストのチェックができないまま観劇したんだが、役ついてるんじゃん、研1生。
 えらそーなでかいボーイ@輝月ゆうま、ただ立っているだけの美形ボーイ@柚香光。
 輝月くんはすぐにいなくなるのに、レイくんはそのままずーっとただ突っ立っていることに、ウケる。美貌を正しく使っているわ(笑)。

 ひろ香祐くんはどこにいてもわかるし、またちゃっかり上級生群舞の末席にまざっていたりするのね。

 つーことで愛希れいかくんも探したんだが、ほとんど出てないな、彼。
 パーティ場面で1回ターンしただけではけていくカップルと、もう1回のパーティでいちばん後ろの隅にただいるだけの人……。最後の挨拶では泣いてた?
 顔が幼すぎて、まだ男役以前……。若い子はどんどん顔が変わるから、これからどう成長するのかまったり眺めていよう。
 
 研1が加わっているため、本公演より人数の多い新公だったような?
 いやあ、最後の挨拶時の人口密度の高いこと。
 舞台に人のいらない正塚作品だっつーのに。たとえにぎやかしであろうと、人数の必要な『太王四神記 Ver.II』とかの方が研1さん的にも観客的にもよかったのでは?と、思ってみたり。

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