『哀しみのコルドバ』のアルバロ@まっつの役について、勝手にいろいろ考える、続き。

 脚本に描かれていることから、アルバロ像を考えると、大きく分けてふたつのパターンが導き出される。
 

その1.エリオLOVEなアルバロさん。

 エリオ@まとぶを熱愛し、それゆえに彼の周囲をうろちょろしている人。
 エリオの前ではふつーに同僚の顔だが、彼がいないところでは絶賛しまくり。エリオを誉める人がいるとうれしい。

 エリオに対しての野心もあるから、ビセント@みわっちが邪魔。こいつさえいなけりゃオレがエリオの親友になれる、てなもんでビセントの不倫をアントン@はっちさんに密告。騒ぎを大きくしてエリオの耳にも入れ、真面目なエリオがビセントと決裂するよーにし向ける。
 ビセントのラヴシーンを目撃したのは、本人が「見た」と言っているから、アルバロなのよ。最初に騒ぎ出したのはアルバロなのよ。ビセント自身に忠告すれば済むことなのに、アントンに報告し、ぺぺ@めぐむに知らせ、アンフェリータ@いちかにも教える。そこまで言いふらして大事にしたあとで、さも大事だと言わんばかりにエリオに言いに来るって、すげえよ。
 アルバロがビセントを良く思っていない……あるいはどーでもいいと思っているのは、よくわかるよな。
 ビセントの決闘を心配する仲間たちの間で、深刻な話題をチャラけたお笑いで終了させているし。

 ビセントがいなくなり、チームでの自分のポジションも上がるし、エリオの親友にもなれるし一石二鳥の完全勝利。
 と思っていたら、今度はエリオが女とのごたごたでチームを辞めるという。ちょっと待て、それじゃオレの苦労は?!
 若手たちと一緒になって「そりゃないよエリオ!」とやるけれど、責めることはせずにすぐさま「オレだけはお前の味方だ」って言いに行ったんだろう。
 だからエリオの決闘に立ち合うことになった。

 そしてエリオの事情をたったひとり知ることになり、もちろんエリオの希望通り誰にも秘密は漏らさずにいる。
 エリオを愛するがゆえに、アルバロの心中もいろいろ複雑なはず。それでも頭を切り換えて舞台に臨み……エリオの死を目の当たりにして号泣するところでエンド。

 エリオの覚悟をアルバロがどこまで察していたのか。
 エリオの決心を遂げさせてやりたいと思ったか、これからの人生を友人として支えることを望んでいたのにあんなカタチで裏切られてしまったのか。
 このへんはいくらでも展開できるが、大筋としては、「エリオLOVE」なアルバロ。
 友愛でも心酔でも、ずばり恋愛でもイイ(笑)。

 ほんとに脚本から考えると、アルバロの言動はそーゆーことになるよなー。冒頭の「エリオ万歳ソング」からラストの「這いつくばって慟哭」まで一貫して。

 
その2.エリオアンチのアルバロさん。

 愛と憎しみは裏表。愛の反対語は憎しみではなく無関心。
 エリオが最後、自ら死を選ぶかもしれない……のに、それを止めることが出来た唯一の男が、アルバロである。
 だが彼は、止めなかった。
 それって……。

 エリオの出生の秘密判明愁嘆に居合わせた者たちの中で、誰がエリオを止めることが出来た?
 家族たちは当事者で精神的にいっぱいいっぱい、ロメロ@ゆーひとその甥フェリーペ@めおはエリオがその後どうしようが口を出せる立場じゃない。
 ロメロはそれでも、わざわざ闘牛場の控え室にまで来て、エリオに言葉を掛けている。彼は十分紳士的だし、やれる範囲のことをしている。

 エリオが選ぶ結末を、予感することができた人……その中で直接、「バカなことは考えるな」と止めることが出来たのは、アルバロだけだった。言葉だけではなく、実力行使だってできた。

 ビセントのときは迷わずアントンに報告したくせに、このときのアルバロはナニもしない。
 エリオが「誰にも言うな」と言ったことは関係ない、出生の秘密には触れずに、「エリオが自殺するかもしれないから、闘牛には出すな」とアントンに言えば、それで済んだはず。

 だがアルバロはそうしなかった。
 黙って、エリオの好きにさせた。

 …………これが故意に、だとしたら?

 エリオを見殺しにする。それこそが、アルバロの望みだったとしたら?

 「その1」で書いた「エリオ大好き」な部分が全部、本心の裏返しになる。

 「エリオ万歳ソング」を歌って、エリオに憧れる人々を鷹揚と眺めるのも、実は彼を憎んでいるから。心の中に鬼を棲まわせ、表面では微笑む。憎しみが深いからこそ誉め称える。本心でないからこそ、なんでも言える。

 エリオの親友ビセントを陥れ、エリオの傍から消し去る。エリオを精神的に孤立させる。
 相談できる親友がすぐそばにいれば、エリオもパトロン持ちの女と三角関係にならなかったかもしれない。

 仲間たちからも糾弾され、後ろ盾も婚約者も失ったひとりぼっちのエリオに近づき、決闘の介添えを申し出る。
 彼の最期を、見届けるために。

 決闘で死ぬことはなかったけれど、出生の秘密を知り絶望したエリオが死を決意したことを察しつつも、口を出さない。
 自らの手は汚さず、敵が自滅するのを待つ。

 ……憎む相手のことは、なんでも知っているから。万歳ソングを歌うくらい、エリオのことばかり見つめて、知り尽くしているから。
 エリオなら、こうするだろう。ビセントのときも、エバ@彩音に対してどう恋するかも、そして秘密を知ってしまったこのときも、エリオがどうするか、アルバロにはすべてわかる。
 恋人より家族より、この世の誰よりエリオを見つめ続けてきたのだから。憎しみを持って。

 すべては、エリオのために。
 エリオを、憎むがゆえに。

 その死に膝を折り慟哭しながら……ライトの当たらない、陰になってしまい誰にも見えないあのラストシーン、最後の最後に唇の端をわずかに上げて、嗤っているかも、しれない。

 ねえ?
 脚本から考えると、アルバロの言動はそーゆーことにだって、なるよなー。冒頭の「エリオ万歳ソング」からラストの「這いつくばって慟哭」まで一貫して。

 もちろん、憎しみゆえに全部やって来たけど、最後の最後、実際にエリオを失ってはじめて「憎んでいたんじゃない、実は愛していたんだ」と気づき、号泣しているのでもかまいません(笑)。
 また、憎しみの理由がコンプレックスだとか、人間の人間ゆえの汚いドロドロしたもので、最後はそんな自分の醜さに号泣しているのであっても、かまいません(笑)。

 
 いやあ、たのしいなあ、アルバロさん。

コメント

日記内を検索