「アーサーがすごいの。アーサーの声からはじまって、最後のカゲソロもアーサーなの。声がいいってのは、強いね。なにをするにも声音のクリアさと滑舌の良さ、なめらかな男役声が武器になって、目を引くのよ。そして声だけでなく姿もね、なんかキラキラしててね、アイドル的なものがあるのよ」

 と、わたしは『オグリ!』のことを語っておりました。壮くんを語り、ののすみを語り、そして話題はアーサーのことに。
 ハイディさん、nanaタンと『中田聖子・ヴァージナル・ライヴ』を聴きに行ったあと、ランチしながらだらだらしているときのことです。
 nanaタンは『オグリ!』観劇済、ハイディさんは未見、観劇予定無し。
 なにしろ『オグリ!』は人に語りたくなる、黙っていられない作品なので、観ていない人にもその魅力を伝えたくて伝えたくてたまりません。

「はああ、そんなにすごい新人さんが出てきたんですね。それは観てみるべきなのかしら」

 素直なハイディさんは、とても素直な声をあげてくれます。
 しかし。

「いや別に、アーサーそれほどすごくないし。声も歌もいいけど、別にキラキラしてないし、アイドルでもないし、ぶっちゃけ地味だし」

 nanaタンがニラニラしながらそう言います。

「えええ? アーサーいいじゃん、美形だしスタイルもいいし、アイドルっぽいじゃん」
「アーサーは好きだけど、地味な職人だし、芝居は能面だし、美形って感じでもないし」

 言い合うわたしたちに、素直なハイディさんが、素直な声をあげてくれます。

「あのう、おふたりの話されている人が、同じ人のことだとは思えません……」

 混乱させてごめん。
 でもでもっ、わたしの目にはアーサーがキラキラな若手かわいこちゃんに見えるのよ!(笑)

「ソレ、緑野さんの目がフィルターかかってるせいだから」

 そ、そうなの? わたしだけなの?
 たじろぐわたしに、nanaタンはさらに言う。

「アーサーって私には、めぐむと同カテゴリに見える。花組では長身で歌ウマで職人系実力派で、若さがなくて」

 めぐむかよっ?!(笑)

「そうよ、めぐむよ。アーサーがアイドルなら、めぐむもアイドルってことになるわよ?」

 …………すすすすみません、アレと同じだと言われると口が裂けてもアイドル・カテゴリとは……。
 いやその、めぐむくん大好きですけど。そしてnanaタンもアーサー大好きなはずですけど。好きだからこそ言いたい放題なわけですけど。

 歌ウマ職人かあ……。アーサーには是非新公主演してほしーんだけどなあ。カテゴリ違うのかなあ。

 『オグリ!』にて、アーサーってば大活躍です。数名をのぞいて全員何役も兼ねまくり、いろな役でいろんなところに出てきて大忙し!……なんですが、なかでもアーサーはいい役です。
 なにしろ「悪役」ですから。
 ただの悪役ぢゃないですよ? 美形悪役ですよ?!

「だから美形だと思うのは緑野さんが……」

 と言うnanaタンは置いておいて、わたし的にはほんと美形悪役なんだから!(笑)

 真の悪役というか、ラスボスはふみかなんだけど、その兄弟のアーサーもちゃんと悪役なんだってば。ふみかが色男なのはいつものことだけど、アーサーだって二枚目なんだってば。

 烏帽子姿も端正だけど、地獄場面だっけ、鬼コスプレしているときなんかもー、すげえビジュアル系で。
 能面だった顔にも、いろんな表情を浮かべることができるようになって。
 いやその、能面が基本の彼だから、小悪魔ぶった演技しているとことか、「アーサーのくせにそんな顔して!(笑)」と、ただそれだけで大ウケしてしまっているんですけどねええ。
 過剰反応しちゃってるだけなのかなあ。

 まっつオチして以来、「歌」と「声」への比重が大きくなってるんだよな、わたし的に(笑)。
 アーサーの「声」は大変好みであります。

 そーいやアーサー、キムシンの迷作『明智小五郎の事件簿』新公で、すげーソロ歌もらってたねえ……腹抱えて笑ったあのころは、まさかこんなにアーサーをかっこいいと思う日が来るとは、夢にも思ってなかったわ……。

 
 好きな生徒さんがたくさん出ている公演なので、目がいくつあっても足りなかった。萌子の役くらい目玉があれば、全部見られるんだろーか……てゆーかあの萌子の妖怪衣装にはびっくらしたが(笑)。

 ふみかの悪役っぷりは、「待ってました!」な感じ。悪役をたのしそーに極めていく彼が大好きです。
 まりん&さあや夫婦もまた「待ってました!」な感じ。こーゆー役で舞台を締めることのできる彼らがいるから、花組の未来は安泰だと思える。
 よっちはどんどん愛されキャラになっていってる気がする……(笑)。
 オグリ親衛隊はみんなイケメンぞろいだが、なかでも瀬戸くんがえらくオトコマエで眼福。顔立ちだけじゃなく、体格もいいよね、彼。逞しいというよりも、イマ風の細身おにーちゃん的体型が観ていて心地いい。

 マメ&じゅりあ夫婦もすばらしかったし、アドリブ含め彼らがたのしくて仕方ない!と息づいていることがわかり、それもたのしい。
 でもわたし、マメは悪徳夫婦役よりも、ちらりと出てくるだけの観音様とかの方がツボったわ(笑)。仰々しくポーズ取ってるだけで、納得させられてしまう!

 萬ケイ様もまたステキに色男で。やっぱ日本物はいいわあ。ぽわわん。

 もうひとりの専科さん、藤さんの存在に、「タカラヅカ」の奥の深さを感じる。この物語の語り部である藤さんは、男でも女でもない、不思議なオーラがあった。

 なんつーんだ、この『オグリ!』は、駄菓子屋で売っている得体の知れない蛍光色のお菓子みたいな感じなの。高級店のショーケースに鎮座している高価な芸術的なお菓子様ではなく、裸電球に照らされた縁台の上なんかに置かれているのよ。
 テラテラとしたきれいなんだか毒々しいんだか区別のつかない、あざやかな色の原材料のわかんないお菓子。どんだけそのチープさに大人が眉をひそめても、子どもにとっては宝物みたいな、この世のモノとは思えない美しい素晴らしいお菓子。
 どんな高級菓子よりも価値のある、「夢」と同意語のお菓子。
 ……藤さんの存在は、そのお菓子……物語を包むセロファンだな、と。
 セロファン越しに見える、あの色がいいの。触ったときの、手触りがいいの。

 
 すごくたのしかったけど、原作ゆえかまだるっこしくてダレる部分もあったし、主人公に感情移入するどころぢゃないし(笑)、いつものキムシン作ほどの中毒性はわたしにとってはなかったんだけど、そーゆーことも全部壮くんがぶっ飛ばしていったから、とりあえず拍手喝采。

 ただ、みつるの扱いだけは、もったいなかったと思う。

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