だらだら感想途中だが、そしてだだら感想の続きでもあるが、ちょうど1幕終わりだからインターミッション的に、今回の『エリザベート』の、外側の話。

 や、所詮わたし個人の感想なので、内も外もないんだが。

 1幕のラスト、『エリザベート』の最大の見せ場である、シシィの鏡の間。
 肖像画のドレスを着て「エリザベート」として毅然と登場するシシィ@カチャ。

 ……とりあえず、このときだけはぺた靴かどうか確認できなかった。

 いやその、結婚式その他、いかなるドレス姿であろうと踵と呼ぶより靴底と呼ぶのが相応しいような、TPOを無視した靴を履いている皇后様なのでつい、こちらもずっとチェックしてしまいました。
 鏡の間のドレスは、作品中もっとも動きが少ないので、足元はまったく見えませんでした。
 でも、きりやんと並んだ感じからして、やはりここでもぺたんこ靴を履いていたのではないかと推察。2幕でも、とにかく一貫して靴底しかない靴を履いているか、あるいは裸足だったので、鏡の間もそうなんだろう。

 この、「美貌ですべてを圧倒する」場面ですら、女性を美しく見せるためのヒールのある靴を履けないなんて。
 

 以前「変身写真館」でシシィのドレスのレプリカをうれしがって着たことがあるんだけど、わたしの場合は、わたし自身がでかすぎて、せっかくのドレスが寸足らずだった。ふつーにしていると、足先が見えてしまうの。
 で、「ドレスの中で足を広げて立って下さい」と言われ、そうしたんだけど……そんなことしたら、脚が短く、顔が大きく見える。
 小柄な人は、台の上に立って写真を撮る。台はドレスにすっぽり隠れるから外からはわからず、顔が小さく脚が長く見える。
 なのにわたしは、わざわざ背を低く、脚を短くして写真を撮らなければならなかった。
 ドレスを着ることはたのしかったけれど、それはしょぼんな出来事だった。どうせなら、きれいになりたいよ……。

 小柄な人が乗る台は、いわばヒールの代わりだ。写真館は靴を脱ぎ、裸足で入るところなので。
 写真館のレプリカ衣装は、平均身長の女性がハイヒールを履いて、ちょうど美しく着こなせるサイズに作ってあるんだろう。

 せっかくのドレスなのに、ヒールを履けない。足が短くなるカタチで背を低くして、結果頭身が下がりスタイルが悪く見える、ようにしか写真に残せない。

 それはとても、寂しいことだ。女として。

 
 今回の『エリザベート』の出来がどうとか、他組からの特出がどうとか、上演時期がどうとか、そーゆーことを全部置いておいて。

 美貌を武器に戦い抜いた皇后エリザベートが、自分の美しさを損なうぺたんこ靴しか履けないという一点だけをもってしても、今回の公演に疑問を持っている。

 「エリザベート」なら、ヒールを履くべきだろう。
 たとえそれで、トートやフランツより大きくなってしまったとしても。
 誰よりも美しくあるために、壮絶な努力をしていた人なんでしょう?

 小学生の上履きのような、容赦ないぺた靴を履いて、豪華なドレスを着て天下一の美女を演じるなんて、変だよ。いびつだよ。

 そうまでして、何故『エリザベート』を上演しなければならなかったのだろう?

 カチャが月組全員を超えた、タカラヅカ全組を超えたただひとりの「エリザベート役者」であるというなら、彼女のエリザベートのために、彼女に合わせたキャスティングをすればいい。
 彼女より背の高い男たちで固めた『エリザベート』を。

 それくらいの特別扱いをしてもいいだろう。そこまでして彼女でなければならないのなら。

 そうではなく、あくまでも月組の今の布陣のなかでの『エリザベート』ならば、やはり主要キャスト全員より長身の男役をエリザベートにするのは、無理があるだろう。

 シシィがぺたんこ靴で豪華なドレスで現れるたびに、この公演への疑問がわき上がって閉口した。

 
 もちろん、そんなつまらない、外側のキモチをぶっ飛ばしてくれるくらい、素晴らしいシシィならば、良かったんだが……。

 カチャ自身はよくやっている。
 前代未聞の状況で、負けずに演じていたと思う。
 はじめての女役で、はじめての組で、はじめての真ん中で、はじめてのタイトルロールで……十分、及第点だと思う。

 思う、けれど。

 ぺたんこ靴の皇后エリザベート、という冷水を蒸発させるほどの爆発的な感動は、得られなかった。

 もちろんシシィには興味があるから、出てくれば注目して見ていたんだけど。
 なんだか、途中でシシィに飽きてしまった。

 彼女の物語で、彼女の人生を追体験しなければならないのに。
 シシィを追ってもあんまりたのしくないので、心が動かないので、別の人を見るようになってしまった。

 シシィとして、エリザベートとして、ふつうにできているのだけど。
 規定演技はできているのだけど。
 ぺたんこ靴履いてまでエリザベートをやるには、あまりにふつう過ぎて。

 カチャは華のある美しい人だけれど、このエリザベート役で、彼女の魅力を存分に発揮できているのだろうか。
 『殉情』でそのかっこよさに瞠目したところなのになあ。

 よくやっている、できている。
 悪くない。いいと思う。
 ……それだけだと、プラスにならないんだ。目に見えるマイナスがあるため、相殺されてゼロ、「ふつー」になってしまう。

 こんなにふつーだと、話もキャラもよくわかっているんだから、なにも彼女だけガン見しなくてもいっか、なキモチになる。

 彼女でなければならい、その理由がわからなくて。
 どうして彼女なんだろう、というのは、靴を見るたび思ってしまうのに。

 
 また、立ち読みしたプログラムの、出演者写真。
 タイトルロールのヒロインが、最後に小さな写真で載っている、というのは純粋に、変だ。
 プログラムはヅカファン専用グッズぢゃない。一般のお客さんも買うのに。
 他組の下級生をエリザベート役にする、というのは、タカラヅカ95年の歴史を、スターシステムを覆す行為なのに、なんか中途半端だ。
 ナニやってんだろうな、歌劇団。

 
 舞台や演技の話ではないので、外側の話。
 ジェンヌさんに含みはなく、ただ、劇団に対して疑問がある。

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