みりおくんのおもしろいところは、本役のコピーにならないところだと思う。

 なんかここんとこずっと同じ公演の話ばっかしてる気がする……何日にも分けてだらだら書きすぎてるんや……にしてもとにかく、月組新人公演『エリザベート』の感想行きます。

 『エリザベート』の新公はいつだって大人気、チケ難必至。作品にネームバリューがあると、新公にも興味が集中する。
 『エリザベート』は、「枠を超えたサプライズ」を期待できる作品だ。役者の潜在能力まで引き出せるかもしれない。みんなそれを願っている。思いがけない感動に出会えるかもしれないと期待している。

 トート@みりおくんは組配属直後から手順を踏んで抜擢され続けてきた、安定したスターだ。無茶な抜擢で反感を買うこともなく、実力や学年に応じた正しい道のり。実力や人気の伴わない抜擢でスターの成長を損ない続けてきた劇団の、数少ない成功例のひとつだろう。
 美貌と実力。両方を兼ね備えた若者が、ひとつずつステップアップしていくのを見るのはたのしい。

 本役のルドルフも「みりおくんなら似合うだろうな」と思わせ、新公主演のトート役も「みりおくんのトート見てみたいな」と思わせる、期待の人。

 むしろ、「できる」ことも「美しい」こともわかっている分、最初からハードルが高くて大変だったかもしれない?

 わたしがみりおトートから痛烈に感じたのは、真ん中での光だ。

 そもそも彼には「できて当たり前」と見る前から安心している面があって、わりと俯瞰して「ふーん、こんなもんか」と思って見ていた。
 力強い存在感で「帝王」として舞い降りるトート閣下。クールだけれど、骨組みの強さが前に出ている感じ。ほおほお、こーゆートートなんだ。

 新公は短縮バージョンなので、本公演通りの場面をやるわけじゃない。
 プロローグがばっさりカットされているため、トート閣下の初登場は遅い。すごく、遅い。てゆーか小柳せんせ、なんでこんな演出なの? この間の雪組新公はプロローグにトート閣下登場してたじゃん。
 シシィが木から落ちてトートとはじめて会う場面まで、出番なしなのよ? ありえないっつーの。
 よーやく登場が、椅子にふんぞり返ってせり上がり。新公だけ初見の、ヅカファンでない出演者身内さんとかだったら、「この人誰?」な演出だな。
 そんな小柳せんせらしい、物申したいところ満載の演出でも、負けていないみりおトートに乾杯。

 新人公演って、本役さんのコピーになりがちなものなのに、みりおくんにはソレがまったくない。
 いつだってみりおくんの演技で、そこにいる。
 コピーしようとして足りていないのではなく、そもそもまったくチガウような。本役さんを軽んじて真似る気なんかナイよというのでもなく、そもそもまったくチガウ方を向いているので模倣する余地もないというか。

 頼ったり慢心するほどのテクニックもキャリアもないので、ただ夢中になって演じているその姿が、ひとつのカタチになっている。個性になっている。それは、強いよな。

 ふーん、そうなんだ。と、俯瞰していたところに。

 ぐーんと、光を増す。

 「最後のダンス」とか「ミルク」とか。
 トートが中心になって場を支配し、前に向かって爆発していいところで。
 彼から、光が出る。
 ぷわっと。

 う・わー……。

 こういうことができるから、すごいんだよな、みりおくん。
 物語の流れに従って、正しい場所で盛り上げることが出来るんだ。自分の感情や表現の盛り上がりとシンクロさせて、光を放てるんだ。

 「黄泉の帝王」トートとして、それが正しいのかどうかわたしにはわかんないんだが(笑)、それでも「タカラヅカの真ん中」に立つには、必要不可欠な才能だ。
 このままこのライトスタッフを磨いて、ビッグなスターになって欲しい。

 で、思った。みりおくんには毒がナイんだなと。
 彼が持つスキルは「英雄」。曇りなどナイ、強く輝く能力。
 トートは「黄泉の帝王」だからダークな要素をいろいろ持っていて当然なんだが、タカラヅカの『エリザベート』では「ヒーロー」役なので、んなもんなくてもかまわない。
 強く、真ん中としての仕事を果たせば、毒なんかなくても成立する。

 あさこトートとはまったく別人だが、「トップスター・トート」ぶりは同じかもしれない。
 スターだから、とそのスター力だけで、他の細かいこと全部ナシにしちゃうという(笑)。

 最後の挨拶も良かった。
 なんか、さららん以来のよく喋る挨拶だな、と(笑)。さららんも「今のキモチ」を「自分の言葉で」伝えようと必死になって、誤解されがちなトンデモ挨拶を長々やっていたが。
 みりおくんもまた、暗記してきた感謝の言葉だけのソツのない挨拶、ではなく、自分自身で話そうと必死になっていた。話している内容はさららんと大して変わらないだろーに、なんとも前向きに、プラスに響く挨拶だった。この差はなんだろう……キャラクタ?(同じ台詞も、まさきが言ったら傲慢に響くと思う・笑)

 いっぱいいっぱい苦しんだだろう、その末に、「自分がやりたいこと」を舞台で表現しようと決意するに至った、そしてそれを挨拶時に自分の言葉で伝えられる……そんなまっすぐな彼に、胸が熱くなった。

 そんなみりおくんだから、強く、まっすぐに光を放つんだろうな。

 
 エリザベート@しずくちゃんは、とにかくもお、肖像画から飛び出してきた最初の最初から、「うわっ、かわいい!」とほっこりした。

 「美貌」って大切だ。
 なんかもお、しみじみ。
 とりあえず出てきた瞬間、「ヒロイン、キターーッ!」と思えるって大事。

 そのあとの「パパみたいに」の歌で、椅子から落ちそうになったが。だ、大丈夫なのか、と、今よりこのあとに待ち構えるモノを想像して手に汗握る思いだったが、いちばんひどかったのがこの最初で、あとは尻上がりに良くなっていったので、ほっとした。

 トートとはじめて会ったときの、きょとんとした顔とか、すごくかわいい。
 なんの邪心もなく、ただ、目の前にいるトートを見つめて。恐れるでなく、拒絶するでなく。

 その「あるがまま」な存在に、トートは心惹かれたんだろう。

 表現できることがまだまだ少ないようなので、足りないところは山ほどあるが、2時間弱の舞台の上でどんどんシシィとして動き出しているのはわかった。
 動こうとしている。ただ、技術がソレについて行ってないので、もんどり打っている感じか。

 
 みりおくんとしずくちゃんの並びは、美しくてすごく「タカラヅカ」を見た、という気分にさせてくれる。
 同期ならではの空気感ってあるよね。

 ……そーいやこれで、89期は4人目のエリザベート? ねねちゃん、さゆちゃん、カチャくん、しずくちゃん。すげえなヲイ。

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