まりもちゃんは真ん中向きなのかもな、と、はじめて思った。

 『コインブラ物語』を観て。

 ご、ごめん、はじめてだ。
 わたし的にまりもちゃんは、路線娘役だということはわかっているけれど現時点でまだ未知っちゃーか「これから」の子で、今すぐどうこうという子じゃなかった。
 ふたつのWSヒロインも『Kean』ヒロインも新公も、全部ナマで観てきているし、毎回ふつーにうまいと思っていたけれど。(あ、最後の『太王四神記 Ver.II』新公だけ観てないや)
 うまい、及第点である、ということと、「今すぐトップOK」とか「この子を真ん中にしないでどうするの」と思うこととは、まったく別で。
 わたしが「トップ娘役」に求めるものを、まりもちゃんはまだ満たしておらず、それは「若いから」「下級生だから」ってことで、「トップ候補生」としては目に入っていなかった。

 今のわたしがトップ娘役とその候補に求めているモノは、「ガーリッシュな輝き」なんだなあ、と、改めて思った。
 
 わたしは、「女の子」が好きなんだと思う。
 「女の子」というイキモノが持つ、顕著な部分。
 かわいくてキラキラしていて自己愛と狭い視野から生じる小悪魔的な部分があって。オシャレがダイスキで自分を飾ることに何時間でも費やせて。
 与謝野晶子の歌にある「おごりの春」というフレーズが似合う、今まさに美しい、とびきりガーリーな存在を、愛おしく思う。

 そこに、「タカラヅカ」的清く正しく美しくのスピリッツをブレンドした感じが、わたし好みの「路線娘役」なんだと思う。
 たとえばそれは、この公演で退団してしまうちゃきちゃんとか、『ラスト プレイ』で好みど真ん中な女の子を演じている蘭はなちゃんだとか。
 今、星組娘役トップとして花開いているねねちゃんだとか。
 ああ、女の子っていいな、かわいいな、と思う「やわらかさ」「華奢さ」に萌えるらしい。
 きれいに巻いた長い髪、小さな頭の上にマボロシのティアラが載っているよーな、「プリンセスちゃん」な女の子が好きだ(笑)。

 好みは変動するモノなので、あくまでもわたしの現在の萌えだけど。

 今のわたし的に、まりもちゃんは「トップ娘役」という狭い範囲のタイプに合う人ではなかった。

 うまいことはわかっているけれど、わたしが彼女から感じるのはうまさより美しさより「骨太さ」で。
 ずっしりどっしり本物系っていうか。
 それは骨格とか背が高いとか太っているとかいう話ではなくて。

 芸風的に、どうにも「重く、太い」と感じていた。

 わたしがタカラヅカ娘役に求める「きらきら」「華奢」な感じがしなかったの。あくまでも、芸風に。
 若手のバウや新公だと、まりもちゃんの「実力」……骨太さは頼りない主演少年を支える「力」となる。だから諸手をあげて歓迎したけれど、ヒロインではない、準ヒロとして出演したときはそれらが裏目に出る。
 『ハレルヤ』や『ブエノス』での準ヒロイン位置の女性を演じているのを見て、安定した巧さに感心すると同時に、その重さ……軽やかさのない堅実な芸風、きらきらよりは輝度の低い渋い色が強く印象に残った。
 実力があるから、重要な役で出てくれるとうれしい。でも、骨太すぎて場に沈むなあ。というのが、わたしのまりもちゃん感。
 彼女が登場しても、「キラキラな女の子キターー!」という昂揚感がない。

 実力に破綻がないことはたしかだから、真ん中に立つ人になっても文句はない。月組トップ娘役に決まったことはよろこばしいことだし、実力派のきりやんに相応しい実力派娘役ということで、高品質の舞台を約束されたよーなもんで、一観客としても心からありがたい。
 おめでとう、と思ったことに嘘はない。

 でも、わたし好みの「真ん中」さに欠けていると思っていたのも、たしか。

 それがなんか、覆されたというか、「真ん中アリぢゃね?」と思ったんだ、『コインブラ物語』を観て。

 トド様の相手役、イネスちゃんを演じる姿は、ひたすらいじらしく、かわいらしい。2役の盗賊娘ミネルバも、イネス役との対比でこれまた強くはじけて魅力的だ。
 そういや、『Kean』のときもかわいかったなと思う。
 わたしが路線娘役に求める「ガーリーさ」があったなと。

 脇役とか別格風味のヒロインやらせるから、ダメなんじゃね?
 と、開眼。

 真ん中で、いかにもなヒロインを演じるなら、それも「主演男が頼りないから支えなきゃな姐さん女房ポジ」ではなく、経験豊かな主演男がどーんと構えて、その腕の中で自由に泳がせてもらえる女の子なヒロインなら、ふつーにガーリッシュなヒロインちゃんですよ!!

 むしろそうなると、なまじちゃんとうまいだけに、安心して世界に酔えますよ。

 イネスちゃんきれい~~、かわい~~、健気~~。
 ミランダちゃんキュート~~、キラキラ~~。

 そうか、この優等生委員長が女の子っぽく見えなかったのは、男たちが悪いんだな。
 最近の男たちはもお、なよなよした草食系ばっかでさ。きれいでやさしいのはいいけど、甲斐性がないんだよ。だからこーゆー「強い」女の子はわりくっちゃって、「あねご」になっちゃうんだな。
 いかにもなキラキラした女の子たちの横で、「強い女」「頼れる存在」として、女子カテゴリから外されてるんだわ。

 と、妄想走っちゃうくらい、どーんとキましたね。
 だってだって、まりもちゃんの嫁入り先はきりやさんですよ? 大人の男ですよ、経験豊富ですよ。まりもちゃんのこと余裕で受け止めて、腕の中で自由に泳がせてくれるよねえ?
 彼女の、とびきりかわいらしい「女の子」な顔を、引きだしてくれるよねえ?

 と、未来にドキドキするくらい、トド王子25歳(笑)に愛されるまりも嬢はかわいらしいプリンセスちゃんでした。

 実際、「イネス」という役は「ヒロイン」という要因以外なにもないよーな、どうしようもない役で。
 タカラヅカのヒロインに求められている「美しさ」「清らかさ」「健気さ」とあくまでも外的イメージのみを求められ、そこだけで完結してしまったような役。……作った人が、そーゆー漠然としたイメージだけで脚本書いて終了しちゃってるのがよくわかる、気の毒な役なんだが。
 だからこそ、「タカラヅカ娘役力」をとんでもなく求められ、発揮する必要があった。

 まりもちゃんは見事にこなしていたと思う。
 や、すげえすげえ。

 そして、対するミランダの躍動感。
 こちらは作者云々よりも演出家の色付けかなと思うんだが、はすっぱなんだけれど清潔感のあるかわいらしい女の子を演じていて、ヒロイン力が更に高まった感じ。

 観ていてたのしかった。気持ちよかった。
 ああ、「タカラヅカ」だわ、と思えた。
 ほんときれいになったねえ、まりもちゃん。女の子だねえ。かわいいねえ。

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