『ソウル・オブ・シバ!!』は良いショーだと思う。派手でキャッチーで、観客が取っつきやすい。何度も再演されるのはわかる。
 だが。

 初演のアテ書きの壁は越えられないんだなと、痛感。

 コレは出演者のことを言っているわけじゃない。作者・フジイくんのことだ。

 初演はトド様降臨公演だった。そのため、通常の「タカラヅカ」の力関係・構成で作ったショーではなかった。
 トップコンビがいて、2番手男役がいる、番手や学年できれいにピラミッド状態になった、「タカラヅカ」のお約束。
 初演はそのピラミッドとは別に、もうひとり「主演男役」がいるというイレギュラー公演。
 「主演男役」様であり、トップ・オブ・トップのトド様を無碍な扱いにしてはならず、かといって単純にトップスターをトドにして組トップのワタさんを2番手に降格して作ればいいってもんじゃない。それを簡単にやってしまう植爺とかイシダとかより、フジイくんは世間が見えているんだろう。

 とゆー難しい状況から作り上げられた初演『シバ魂』。
 トップスター・ワタさんと相手役の檀ちゃん、2番手トウコ、そして組子たちのピラミッドはそのままにして、イレギュラーなトドをその「外側」に置いた。
 ワタさんたち人間たちの物語とは無関係に存在する、「神様」として。

 ダンサーを夢見る主人公、彼が憧れる大女優、主人公をショービジネス界へ引っ張り上げるプロデューサー。プロデューサーは大女優に片想い、そして主人公は順調にサクセスし、やがて大女優と愛し合う……。
 トップコンビと2番手男役の役は見事に三角関係。
 彼らの物語とは別次元に存在する、シバ神。

 これは、うまい設定だった。
 今までのどの作家より、トドをうまく使っていた。フジイくんGJ!

 ……そして、次に『シバ魂』は全ツで再演される。
 今度は組子だけだ、トド様はいない。組子とは別の、神様ポジションが空いてしまった、どうしよう?
 新たにトップ娘役となったとなみちゃんのお披露目も兼ねて、トドの演じた「シバ神」を「シバの女神」に変更し、それをトップ娘役に演じさせるという。
 もともとトップ娘役が演じていたヒロインの大女優役もそのままなので、主人公が憧れる女優と導く神を同一人物が演じるなんて「深い」設定になった……と思ったら。

 ヒロインと、「トップ以上の立場の役」をトップ娘役が演じてしまうと、いろいろいろいろ障りがあるんだろうな。それじゃトップスター以上の扱いになってしまうし?
 どんな事情があるのか知らないが、いなくなったトドの役割をそのままとなみちゃんにスライドするのではなく、部分的にやらせただけで、あとは別の人たちに分担し、お茶を濁した。

 それゆえに、「物語」は壊れた。

 ……もともとフジイくんなので、起承転結の起承転、まで書いて広げて盛り上げて、でも決着をつけることは出来ずなしくずしにめちゃくちゃになって終わっていた物語だ。
 まっさらの状態からパワーバランスに沿って作られたときですら壊れていたのに、それを別のバランスで書き直せと言われて、出来るわけがない。
 初演以上にめちゃくちゃになって終了。……それが再演『ソウル・オブ・シバ!!』。

 でもって今回、再々演の『ソウル・オブ・シバ!!』。
 再演段階で相当ヤバい感じに壊れていたのに、まだ上が来た!(笑)

 繰り返すが、再演で壊れたのは「キャストのパワーバランスが変わったため」だ。タカラヅカにはお約束がいっぱい、「いちばん目立つ、いちばん重要な役はトップスターしかやっちゃダメ」「その次が2番手男役とトップ娘役」と、役割の順番が決まっている。
 「トップと同じくらい、トップとはちがうけどオイシイ」トド様の役を、トド様以外が演じることはタブーだった。タカラヅカ的に。だからトドがいなくなると、この役を全部そのまま誰かが演じることも、他の役と兼任することも、できなかった。
 それゆえに壊れたのに。

 再々演でさらに、「2番手男役」まで封じられた!!

 トド-トップスター-トップ娘役-2番手男役……と、重要な役割からふたつも消されて、作品が無事であるはずがない。物語を回すキャラの半分を禁じられたら、物語自体立ち行かなくなる。

 今回のれおくん全ツ『ソウル・オブ・シバ!!』で、何故2番手が禁じられたのかはわからない。
 足を骨折したかなめくんに、プロデューサー役でタップを踏ませるわけにいかなかったのかもしれない。

 トドがいない、だけで通常の「トップコンビと2番手男役」のいるふつーのタカラヅカ布陣だ、ふつーに再演のときと同じようにすればいい。それなら壊れ具合は再演時の程度で済む。
 なのに何故か今回は、2番手男役まで封じられ、さらにパワーバランスがものすごいことになった。

 物語的にプロデューサー役はどう考えたって単独2番手、準主役。
 なのにその役を2番手に演じさせないで、2番手は他の役割で2番手っぽく見せようと取り繕うから、もおぐたぐた。手が付けられない(笑)。

 
 わたし、フジイくんはキャストに合わせて柔軟に自作をアレンジする作家だと思ってきたのね。
 再演されるたびに、ちゃんと微調整されているから、そのへん安心していたの。

 だけど、ちがったんだよね。
 役名を生徒に合わせていじる程度で、作品自体はなんも変えられない人だったんだ。
 根本的な構造自体をいじり、別物へ作り直すことは出来ない人だった。
 そもそも起承転結をきちんと書けない、広げた風呂敷をたたむ能力ないもんなー、フジイくん。

 住む人に合わせて部屋の壁紙の色を変えたり家具を別のモノに置き換えたりは出来ても、リフォームは出来ないよな、設計自体出来ない人には。

 『Apasionado!!』と『ソウル・オブ・シバ!!』と、キャストのパワーバランスが変わるなりめちゃくちゃになっている再演を続け様に見て、目からウロコです気分的に。
 そーだよなー、フジイくんだもんなー、そりゃそーだ、ストーリー収束する構成力のない作家に、ナニを求めてるんだ、できっこないじゃん最初から。ははは。

 「再演でも、フジイくんならステキなアレンジをしてくれるに違いない」って何年も思い込んでいたけれど、ほんと、部屋のカーテンを変える程度のことしかしてくれないマンション管理者だったのよ。
 住む人に合わせてリフォームからやってくれるのは、オギーくらいのもんだった。

 
 とまあ、さんざん好き勝手言ってますが。

 壊れていたって、『ソウル・オブ・シバ!!』は良い作品ですよ?

 「物語」としてはぶっ壊れてるんだけどねー、辻褄合わないことだらけなんだけどねー(笑)、それはもおいいのよ、芝居だったら許容範囲を超えてるけどコレ芝居じゃないから、ショーだから!

 ショー作家のフジイくんは良い作家だし、ショー『ソウル・オブ・シバ!!』は楽しい作品だ。
 これは事実。

 つーことで、楽しみました、再々演『シバ魂!』。

 ……てな話はまた翌日欄へ続く。

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