カサブランカ・ダンディ。@カサブランカ
 ゆーひくん、すみ花ちゃん、本拠地トップお披露目初日、おめでとう。

 宙組公演『カサブランカ』初日、どきどき……だけでなく、けっこう不安も抱きつつ座席へ駆け込む。開演前に花組本立ち読みしたり(購入は某FC入ってる友人を通すので、一般売りでは買えない)友人と会ったりで忙しくて。

 満員御礼のお披露目初日。満ちる熱気と緊張感。
 「宙組の大空祐飛です」のアナウンスに沸き上がる拍手。
 この音は、緞帳の向こうのキャストに届いているはず。……奈落にいるゆーひさんには、届いただろうか? や、リック@ゆーひくん、上手セリからのせり上がり登場だったからさ……あっ、ヒョンゴ@まっつと同じ登場だ。(だからナニ)

 いつもトップお披露目初日は、素直にわくわくしている。不安を感じることはまずないんだけど、今回は多分ゆーひくんだからなんだろうな。
 わたしがゆーひくんを好きな分、いろんなことを考えすぎてしまうんだと思う。

 ぶっちゃけ作品の出来を、いちばん心配していた。

 トップの魅力を生かすも殺すも、作品次第。
 どんな駄作も力技でねじ伏せるのがトップの仕事だが、それはトップとしてのキャリアを重ねてからの話で、お披露目で駄作だったりすると目も当てられない。 
 
 トップお披露目の「駄作」というのは、単に作品が壊れてるとかつまらないとかいうだけに留まらない。いや、壊れててもつまらなくてもイイ。
 トップスターを、盛り立てているかだ、いちばん重要なのは。

 生まれてはじめてトップスターになり、大劇場の真ん中に立つわけだ。
 はじめてなんだから、補助輪は必要だ。なくても立てるにしろ、あった方が安全だ。
 駄作でもイイから、とにかく、トップスターの格好良さを表現する、それだけだ。あとは全部置いておいて、これだけを心してかかってくれれば、「お披露目作品」は成り立つ。
 トップスターは組の中心であり、屋台骨だ。とりあえず彼を中心に船出したんだから、沈没しないためには彼がしっかり踏ん張れるだけの力を得なければならない。

 どうやったら、このトップスターが最も魅力的に見えるか。

 ……お披露目公演を書く演出家が、いちばん最初に考えなければならないことだ。

 それは衣装だったり、役の設定だったり、この仕草、この台詞を言わせることだったり。
 そのスターの格好良さを、いちばん引き立たせることをさせる。そのように演出する。
 他は2の次でいいから、まずそれだけを。

 や、そりゃ作品がイイに越したことはないが、ヅカの場合駄作なのはほぼデフォルト(……)だから、話壊れててもつまんなくてもいいからせめて、スターだけは魅力的に見せてくれという、最低限の心の叫びですな。
 慣れたトップならともかく、初心者マーク付けたトップには、演出の底上げをしてくんないと、駄作が救いようもなくただの剥き出しの駄作になって、誰のファンであるかを問わず観客全部が悲しいことになるので。

 つい昨年、お披露目だってことをなーんも考えずに、スターの魅力や売りなんか一顧だにせず自分が書きたいモノを書きたいよーに書いて、もちろんふつーに駄作でつまんない作品を見せられた記憶が焼き付いているもので。
 頼むよ、駄作なだけでもつらいのに、スターの魅力も無視した作品でお披露目は勘弁してくれよ、と、祈るようなキモチだった。1本モノだと、逃げ場がないし。

 で。

 小池修一郎、すげえ。

 カタチにならない不安を抱いての観劇だったのに。
 イケコが、それをぶーんっと吹っ飛ばした。

 わたしは作家のイケコ自体はあまり得意ではないんだが、それにしたって、やっぱりすごい人だ。
 好みを超えて、彼の非凡さに、舌を巻く。

 うまいわ、この人。

 『カサブランカ』。有名映画が原作。
 ……といっても、無知なわたしは未見です。1942年製作って、干支一巡以上昔じゃん……小説ならともかく、映像作品でその古さだとたぶんもう目にすることはないでしょう。
 「♪ぼーぎーぼーぎー、アンタの時代は良かった♪」と、子どものころテレビを見て口ずさみはしていたけれど、「ぼーぎー」がなんなのかはまったくわかっていなかった。人名とは思ってなかったな、だってまったく知らない音だったから。わたしの周囲では耳にすることもない名前だった。
 もう少し大きくなってから、ソレが「ハンフリー・ボガートのことだった」と知ったけれど、だから曲名が「カサブランカ・ダンディ」だと知ったけれど、知ったからといって「で?」でしかないほど、わたしとは無関係な世界(笑)。

 なのでわたしにとっては、オリジナル新作も同じ。原作、カケラも知りません! ボギーでバーグマンで「キミの瞳に乾杯☆」しか知らぬ! 無教養上等!! 原作熟知してなきゃ楽しめないモノはエンタメぢゃねえ!!

 そんな人間が観劇して。

 面白い。

 ちょっとちょっと、面白いですよ奥さん!(誰)

 見ていて感心したのは、この地味な話を、80人以上のキャストを使って、2500人劇場の舞台に、遜色なく載せていること。

 やろうと思ったらコレ、小劇場で舞台セットはカフェひとつで、キャスト4人くらいでできんじゃね?
 本筋的には十分じゃん?

 なのにそれを、この規模に嵩上げしてミュージカル化って……イケコ、すげえよ。

 地味で動きのないメロドラマを、「大作」に祭り上げる。エンタメにする。
 演出力だけで。

 『NEVER SAY GOODBYE』とか、ほんとはこーゆーものを目指していたのかなと思った。
 アレはせっかくの壮大な話を、地味で動きのないただのメロドラマにしてしまった失敗作だと思うけど。(音楽がいいだけに残念)
 目指していたのは、コレだったのかと。

 そして、最初の話に戻るが、コレはお披露目公演である。
 作品がどうあれ、座付き作家の仕事は「トップスターが魅力的に見える」演出をしなければならない。

 イケコは、コレを見事に果たしていた。

 リック@ゆーひが、かっこいい。

 めちゃくちゃかっこいい。
 とことんかっこいい。

 てゆーか、今のゆーひくんがもっとも魅力的に見える役、衣装、設定、台詞etc.
 よくぞここまで、ってくらい、これでもかとおーぞらゆーひ。

 いやその、ゆーひくんってできる役の範囲がせまい人なので、コレしかないから間違えようがない、つーのはあるかもしれないが、それでも平気で間違えてくるのが劇団じゃん?
 なのにイケコはなりふり構わずど真ん中ストレート来ましたよー!

 あまりにゆーひの比重が大きく、2番手は辛抱役だわ、3番手はメタボオヤジだわ、他のスターに割喰わせちゃってるけど。
 らんとむもみっちゃんも、そーゆーマイナス面で揺らがない実力と魅力を持った人たちだからこそ、これだけの割り振りができたんだろうな。

 役はまったくナイのに、それでも下級生たちの出番も見せ場も多く、思わぬ人が台詞を言ったり歌ったり。
 脇使い、群衆使いの巧さも、さすがイケコ。たしかにモブにしか過ぎないのに、モブでもそれなりにおいしさはあるという。
 また、宙組のコーラス力が活かされてる。

 ヒロインのイルザ@ののすみもまた、相変わらずの女優ぶりだし。

 ののすみが泣くと、全世界が泣く。……何度も使ったこのフレーズまんまに、泣かされる。

 
 良い作品だ。良いお披露目だ。

 新生宙組スタート、おめでとう。

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