ずっとずっと欲しかったモノが、与えられた。

 欲しかったのは、わたしだ。
 このだいもんを欲していたのは、わたしだ。

 彼が走り出すところを、見たかったんだ。
 渇望していたんだ。

 『BUND/NEON 上海』にて、望んでいたモノが今たしかに与えられ、客席で悶絶する(笑)。
 恥ずかしい。や、だいもんの全開演技って、なんかこー、いたたまれない恥ずかしさがあるっ。
 彼の表現欲がハンパないから、彼の欲望の赤裸々さに触発されて、照れてしまうのだと思う。

 クールなことがかっこいい、謙虚が美徳だとされるこの社会で。
 だいもんはいつも、欲望垂れ流しだ。
 彼が望んでいること、欲していることは、まっすぐに伝わりすぎる。その温度、湿り気。

 そして、ここまで欲望丸出しでありながら、彼には、邪気がない。
 表現することでオイシイ思いをしようとか、かっこつけることで人気を得ようとか、前に出て誰かを蹴落とそうとか、そーゆーキモチがない。
 や、それを邪心というのはおかしい。舞台人である以上、そういった欲求を持って当然で、わたしはそーゆーキモチをギラギラ出している人が好きだ。また、だいもんにそれらが皆無だとも思わない。
 ただ、だいもんの場合、そーゆー出世欲よりも、ほんとうに「表現欲」の方が勝っているのだと思う。
 まず表現したい。内側からわきあがるエネルギーを発散したい。それだけに気を取られている気がする。……だから、あれだけうるさい芸風なのに、悪目立ちして叩かれることがなかったんだろう、今まで。

 そのナチュラルボーンな表現欲のまま、トランス状態のよーなぶっとばし芝居を見せてくれるから、恥ずかしくて仕方ないんだ(笑)。

 リビドーをそのまま見せつけられたら、恥ずかしいです(笑)。

 本能まんまなんだもん。
 剥き出しのだいもんなんだもん。
 恥ずかしい(笑)。

 そして、愛しい。

 えーらいこっちゃにイッちゃってるだいもんを見て、愛しさがこみあげる。
 こんだけ楽しそうに演じている姿を見たら、うれしいって。
 たのしいって。
 愛しいって。

 ナニも隠してない、全部ぶちまけてるじゃん。
 クールに澄ましたりして、自分を守ってないじゃん。
 全部全部さらけ出して、「舞台が好き!」と叫んでいる、そんな子、そんな役者、好きにならずにはいられないじゃん……!

 しかも、技術はありまくるし。キモチだけで空回っている素人ではなく、こんだけ高いスキル持った男が、はじめて場を与えられて快感の叫びを上げてるんだよ。
 愛しいって。でもって、恥ずかしいって(笑)。

 そして作品が『BUND/NEON 上海』で、役が劉衛強で。
 どっちもまあ、とても恥ずかしいモノで。作品も役も、中二病系というか男子の夢爆発ってゆーか。
 だいもんに合ってる、いろんな意味で(笑)。

 タイトなオールバック(気合いのシケ付き)、コートやチャイナ服。クールさとハードさが、彼の大振りな造作の顔立ちに合う。美形でしょう、彼。若干大きめだけど、顔立ちはとてもきれい。
 今まで顔をくしゃくしゃにする三枚目や子役しか当たってこなかったけれど、温度を落とせば美貌が全面に出る。

 温度を落とす、というか、硬度を増すと。
 硬く研ぎ澄まされることで金属の冷たさをまとうだけで、ほんとのとこ、冷たくはない。高温のまま。

 だから、慟哭だの愛情だのが、濃く湿度高く展開される。

 香雪@ゆまちゃんとの「純愛」ぶりがいじらしく、ラヴっていよーとどうしようと、根底にある飢えや澱みがちらちら見えるのがいい……し、ある意味その生真面目な多重演技が恥ずかしい(笑)。
 だってもお、おま、そこまで徹底して、いちいちくどくど、やるのかよ!という。

 嬉々として作り込んでいるのが伝わる。それがうれしく、気恥ずかしい(笑)。

 劉の見せ場である、テーブル越えで銃を構えるところ。
 や、かっこいいよ! マジあれは見せ場でしょう、ごちそうさま、生田せんせ。
 かっこいい! とときめく傍ら、笑いツボを刺激されるのも事実。だってもお、そんなわざわざ!という。

 アレだな、ジャンプ系とかラノベとかで萌えな美形キャラがゴシックな萌え衣装でこれみよがしなポーズ決めて立ってる扉絵を見る感じだな(笑)。

 かっこいいし、ニーズにドンピシャだし正しいんだけど、正しいがゆえにおばさんには気恥ずかしいわ、という。

 や、だいもんの芸風に合ってるから!

 クール+ハードで黒系で、慟哭とドMまでやって、そしてさらに、狂気へ手渡す。

 見たことがあったわけじゃないのに、なんか最初からわかっていた。
 だいもん、狂うと絶品だぞと。

 熱と狂気にトリップした姿に、ぞくぞくした。
 あの眼がこわい。

 狂気の合間にちらちら見える、荒廃。自棄。
 望んでいないはずなのに、魂が磁場に吸い寄せられる、そしてまた立ち戻ろうとする、振り子のような姿。

 脚本穴だらけなのに、わけわかんないのに、ひとりでぶっとばす空気無視さ加減もツボ。
 アクセル踏んだらもお、止まり方知らないんだ、クラッシュするのみなんだ。
 クリストファー@まぁくんごめん、この2番手、キミに合わせる気毛頭ないよ、や、本人がどう思っていようと、本能が走り出して周囲見てないから(笑)。

 ようやくめぐり逢った、表現欲を解放していい役だから。ブレーキの存在、アタマにないらしいよ。

 だいもんが暴走しているのに、それに揺るがない、迎合もしないまぁくんの真ん中スキルの高さにも感心した。や、おかげで作品自体がなんともわけわかんない芝居になっていたけども。もとの脚本のアレさに拍車を掛けたというか。

 まぁくんの白い光はほんと真ん中に相応しいモノだけど、だいもんの濃ゆい赤面な高温度も、「真ん中」に立つ力があるんだ。
 フィナーレ、カーテンが開くなり男たちの真ん中で踊るだいもんは、「劉」を引きずったまま、意志を客席へ放っている。
 ショーのだいもんが常々見せる表現欲を、役のまま。

 センターOK、そこに何人いたって関係ない。いちばん濃いのが彼。いちばん貪欲なのが彼。「表現」することに。

 そんなだいもんが、ラストのご挨拶後のダンスはだいもんに戻る。
 劉ではなく、だいもん。
 大劇場で、ショーで見せている、望海風斗。
 にかっとした笑顔、ぱかっと開く口。

 その、あざやかなコントラスト。

 ほんとのとこ、わたしがだいもんオチしたのは、ここでかもしれない。
 彼が巧いこと、狂気が絶品なことは、見る前からわかっていた。期待通りのものを見せられた。
 長年切望していたものを見せてもらって、それこそ胸ヤケするくらい(笑)おなかいっぱいいただいたあとで。
 ニカッといつものだいもんに戻った、そのときに、恋は訪れた(笑)。

 だいもんはだいもんのまま、劉の面影皆無で歌い踊る。笑う。
 あの闇も狂気も、演技でしかない。虚構でしかない。

 「ファンタジー」を、見せつけた。

 それこそが、わたしがもっとも求めていたモノかもしれない。

 ……てことで、だいもん萌え。
 劉という役が、ではなく、望海風斗が萌えなの。

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