『虞美人』張良@まっつは、好敵手・范増先生@はっちさんを死へ追いやる。

 同じ次元で対峙することのできた唯一の相手を、張良自身がゲームから降ろさせてしまった。

 それを機に、張良は変わる。

 傲慢かつ野心家である張良は、それでも主君・劉邦@壮くんの前ではその牙を隠している。敵に対しては容赦なく慇懃無礼というか腹黒さ全開だが、劉邦に対しては礼節を保ってきた。

 それが、范増先生を失ったあとは、チガウんだな。
 劉邦相手にも容赦ない。

 ナニあのわっかりやすい冷淡さ。

 劉邦に対して愛情がないこと、利用していること、隠してませんがなっ?!

 項羽の背後を突けと、裏切れとそそのかす。ヘタレる劉邦への侮蔑っぷりがすげえっす。それが計算であれ本心であれ、嫌味ったらしさMAX。
 劉邦に戦う決意をさせるというだけの意図ならば、同じ台詞でも愛情たっぷりに言うことは可能なはずだ。愛を持って理を説く、それゆえに人の心が動くことはある。……つーか今までそうやって劉邦を手のひらの上で転がしてきたんじゃないの? 同じことを言っている韓信@みわっちは誠実さ、正しい進言である意識が全面に出ているのだから、それに乗ることもできたはず。

 劉邦を守ることは、できたと思うんだ。
 戦争に勝つことだけでなく、劉邦の心を傷つけずに裏切りへ誘導すること。

 キレイゴト並べ立てればいいんだもの。
 これ以上犠牲を増やさないためとか、騙し討ちではなく油断している項羽側が悪いとか。
 あるいは理詰めでたたみかけ「張良が言うから仕方ない(オレのせいじゃない、オレの決断じゃない)」と思い込ませる。
 劉邦を傷つけず、望みの結果を選ばせることくらい、張良には簡単だろう。行動に対する、逃げ道を作ってやればいいんだから。

 なのに。

 わざわざ、突き放す。追いつめる。

 決めるのは、劉邦自身だと。

 これまでさんざん自分が手綱握ってきたくせに。
 もっとも最悪なカタチで、劉邦を突き落とした。

 こわいんですけど、この人。
 冷たいだけでなく、必要以上に残酷なんですけど。劉邦に対して。

 自分が選んだ、駒に対して。
 最後の最後に。

 プレイヤーのいなくなったこのゲームを、一気に終わらせるつもりなんだ。さっさと駒を進める気なんだ。

 失ってはじめて、気づくのだろう。
 欲しかったのは優秀な駒でも己れの栄光でもなく、戦い甲斐のある強敵(とも、とふりがな)なんだと。

 范増先生を失って、その手にかけて、はじめて張良は変わるんだ。

 明かしたのは、本性だろうか。
 劉邦への残酷さは、張良本来の性質か、あるいは強敵を失った自棄ゆえか。

 罪と、孤独を抱いて。
 さらに、冷酷に。

 范増先生が息絶えたあの荒れ地に、張良もまたいるんだ。今も。
 きっと。

  
 張良ってその後、政治から身を引いて隠居生活するんだよね? 大好きだった、生き甲斐だった、陰謀策略ゲームを降りて。
 范増先生の予言通り劉邦も変わってしまったんだろうけど、それにしても良ちゃんってほんっとーに劉邦に一定以上の愛情なかったんやなと(笑)。一貫してるわー。

 史実がどうかは関係なく、この舞台で描かれている「范増と張良」は人生というアクション面だけでなく心の変化・流れまできっちり起承転結されててすげえ。
 ……だから、がんばれまっつ。

 
 わたしとしては、はっちさん相手より壮くん相手に心の絡みを見たいです(笑)。脚本がどうあれ、演出意図がどうあれ。
 で、好きなように見ていいのがフィクションの醍醐味なので、勝手に劉邦相手に萌えておくことにします(笑)。

 1幕の劉邦のために必死になっているところと、2幕最後の劉邦に裏切りを強要するところの、張良の態度の差がすげえので、それこそをオイシクいただきます。

 劉邦は「愛されるけど、愛したことがない」と途中ヘタレて泣いていたけれど、アレってある意味仕方ないと思えるのよ。
 劉邦の妻・呂妃@じゅりあにしろ、軍師の張良にしろ、劉邦を利用しているだけじゃん。表面的には「劉邦LOVE」な振りをして、ほんとのところは利己心優先。
 無意識に感じ取っていたんじゃないの? 「愛なんて信じられない」って。
 あんな連中に囲まれ、「愛愛愛」って洗脳されてたんじゃねえ。

 だからこそ、ドS期待。

 張良×劉邦だよね? いぢめてナンボだよね? 項羽を裏切ってしまったことでびーびー泣いてる劉邦を、良ちゃんが手のひらで転がすんだよね、イロイロと(笑)。
 

 まあ、腐った話はともかく、張良っつーのがマジ大役過ぎてびびる。いやその、まっつ的に。上から4番目扱いになると、こーゆー役が回ってくるターンもあるのか。(同じく上から4番目でも、前回の植爺は……・笑)

 プログラムに主要キャストのインタビュー載ってるじゃないですか。
 まっつは前回はじめての掲載で、わたしはそれだけで大喜びしていたんですが。

 ただ……苦いキモチもあったのね。たった4人しか載っていないインタビュー記事なのに、これを見た一般人のほとんどが「この4人目の人、芝居のどこに出てた?」と首を傾げただろうな、ってことに。
 ショーではきっと見分けつかないだろうし。ただ形式的に誌面を割いてもらってる、というのが丸わかりなのが、苦いなと。

 それが今回は、ちゃんと見つけてもらえる。舞台を見た一般客が「あの軍師役の人」と思ってプログラムをめくると、ちゃんとインタビューが載っている……そんなことが、うれしくてならない。

 ……今回そのまっつ記事の隣に並んでいるのがめおみつではなく、まぁくんだということにも、震撼しましたが。いつかまっつも、こーゆーところの扱いすら、抜かされる日が来るんだろうなあ……遠い目。

 未来がどうあれ、今回、パレードの階段降りがひとりでうれしい。
 あのとびきりイイ声が響いた瞬間、ぞくぞくした。あああ、やっぱこの人の歌声が好き。

 でもって、最後の銀橋!
 まっつが、彩音ちゃんと挨拶してる~~っ!!
 びびびびっくりしたーっ。
 最後にトップスターさんと会釈するのは、スターさんだけの特権だと、まっつに回ってくることはナイと考えるまでもなく信じ込んでいた。

 ありがとうキムシン!
 や、幕が開く前はどんな扱いされているか、戦々恐々だったから。
 まっつにとっての前回のキムシン作品……『明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴』にて、下級生のみつるくんより下の扱いされてたからなー。キムシン的には使う気になれない役者なのかと不安だった。評価されていないわけでも、嫌われているわけでもなさそーなので、ほっとした。
 つか、今回たまたまにしろ、破格の扱いだよ、ありがとう。

 あー、まっつかっこいーなー。ファンの欲目です、盲目状態です。とにかく張良さんがかっこいいので、それでいいんですよ(笑)。

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