と、前日欄で真面目に衛布さんについて語りましたが。

 はい、次は衛布さん萌えの話です。ええ、衛布@みつる×桃娘@だいもんですよ!!(笑)

 『虞美人』にて語られる衛布は、第2ヒロイン桃娘に対しては「悪漢」でしかない。
 衛布は桃娘の父の部下で、裏切り者。父の仇を討とうと男装して現れた桃娘を手籠めにする。桃娘の秘密をネタに、どーやら継続的に関係を強要していたらしい。で、ついには桃娘に殺される。

 桃娘の方は韓信@みわっちを慕っていたし、衛布を嫌っていることがわかるのだが、衛布が桃娘をどう思っていたのかは、まったく語られていない。
 表面的なものから読みとれば、悪役らしく桃娘を利用していただけで、彼女に対してなんの思い入れもないのだろう。

 が、なにしろなにも描かれていないので、観客が勝手に想像できる。

 悪漢の手を逃れたお姫様が、恋しいダーリンとハッピーエンド、というだけでも十分だろうし、原作が書かれたという今より1世紀も前ならばそれで良かったのかもしれないが、ここはタカラヅカで今は21世紀だ。
 三角関係、とするのも、ぜんぜんアリだろう。

 衛布が桃娘を愛していた、愛と呼べないまでもなにかしら執着していた、とするならば。
 韓信と桃娘、そして衛布の位置関係は、恋愛モノの定番である。

 力尽くで女を捕らえる男、利害関係から仕方なく従っている女、されど愛しているのは別の人……力尽くでどうこうしていた男だって、本当は女のこと愛してるんだよ、それしか方法を知らないだけなんだよ……しかし女は真実の恋人の元へ戻ってハッピーエンド。女がふたりの男に猛烈に愛されるという、女子の大好きな物語。
 今隣のバウホールでも、まさにソレをやってますね、の黄金パターン。

 好きな女を権力でしかつなぎ止められない、最後は振られる色男、ってのは、実に萌えですな。

 男ふたりに女ひとり、という設定でも実に美味しいのですが、さらにここに、「BLの定番ネタ」とゆーのがある。
 ここでは三角関係である必要はナイ。男(攻)と女(受)だけで成り立つ。
 金(権力)で攻に買われる受、ソコに愛はなく、利害関係のみのふたり。攻はなにかにつれ「**(カラダとか、地位とか、対外的なモノ)だけが目当てだ」と受を貶め、受はそんな攻を嫌い抜きながらも言いなりになるしかない。
 が、ほんとーのところ、攻は受を愛していて、強引に受を手に入れたのはそのため、でも嫌われていることを知っているので愛は決して告げない。
 また、受もほんとーは攻のことを愛していて、そもそもこんな関係になる前に好意を持っていたのに、「こんな人だったんだ、見損なった」とか思って心を閉ざしているの。

 BLにこのネタが顕著なのは、行為までファンタジーとして描けるからでしょうな。読者が女性である以上、女性が酷い目に遭うのはNGだし。
 Hナシでなら少女マンガでもいくらでもある。名目だけの夫婦(婚約者)で指一本触れないけど、対外的には妻としての振る舞いを要求される系のヤツ。
 男(攻)が権力で強引に関係を強要し、女(受)は男の目的が別のところにあり自分は利用されているだけだと思い込んでいる。
 ……この話が女子の好む定番としてもてはやされているのは、男が美貌・権力・富の三拍子を持ち、さらに女を愛しているため。権力は振りかざすけれど、愛に対しては少年のように臆病かつ不器用で、素直に表現することができない。また、女は自分を力で支配する男を実は、愛しているのが鉄板。しかし愛されていない、利用されているだけだから胸の内は死んでも明かさないと決意。愛し合っているのに、心はすれ違ったまま表面のみ夫婦だったり濃ゆい肉欲関係だったりする。
 ヅカの名作『はばたけ黄金の翼よ』もまさにコレですな。

 衛布と桃娘に萌える、とよく耳にするのはまさに、「女性が好む恋愛フィクションのシチュエーション」だから。
 あくまでもフィクション。現実だと受け止めて怒る人とは立っている次元がチガウ。誰だって現実なら嫌でしょう、戦争も、男の邪魔にならないよう自殺する女も。フィクションをフィクションだと割り切って、ドラマティックな戦争モノやアクション、愛のために死ぬ物語を楽しんでいるわけで。
 衛布と桃娘も同じ意味でのファンタジー。

 最初衛布にとって桃娘は上司の娘、お嬢様、お姫様。高嶺の存在。
 それが下克上して、命すら自分の手の中。
 この逆転現象が萌えを発動させる。

 たんに今ソコで桃娘の秘密を知って脅しました、じゃないのよ。
 桃娘の美しい姫時代を知っているからこそ、手を出すわけよ。

 衛布は、桃娘を愛しているんじゃ? と、思わせるから、萌えが発動するのよ。

 身分違いの姫をひそかに愛していた、ならば女子向けロマンスとして鉄板設定ですから。
 愛までいかなくても、少年にしか見えない桃娘を速攻襲うくらいに興味を持っていた、なにかしら執着があった、と思わせることが。

 舞台上にあるシチュだけならば、ロマンス物の定番。その上衛布が自分の心を語る部分がまったくないために、観客は、萌え放題。

 演出家がどう思ってとか役者がどう思ってとか関係なく、舞台上にあるモノだけで、ロマンスGOGO!

 衛布は、桃娘を愛していた。
 当人が愛とは思っていなくても、執着はあった。手の中に転がり込んできた小鳥を弄ぶくらいには。
 なにしろ、毎晩ですから。
 お優しい虞美人様@彩音ちゃんが「この子ったら毎晩出歩いているのよ、おませさん♪」と証言。
 毎晩って、衛布、どんだけ桃娘に夢中なん。
 でも自分では「利用しているだけだ、こんな小娘に興味はない」って思ってるのよね。端から見ると「めろめろですやん」状態でも、本人だけは「オレって悪だな、フフフ」と思っている、と。
 
 たーのーしーいー(笑)。

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