あいにくの雨。
 パレードの区切りがしてあるブロックに、傘無し合羽姿の会の人たちが場所取りスタンバイしている。レインコートというより、容赦なく雨合羽。
 退団者を見送るために協力し合う、タカラヅカの慣習。雨の中、ああやって立ち続けて、時間が来れば、退団者会の人と交代するんだろうなあ。

 『虞美人』千秋楽。
 割れんばかりの拍手に包まれた、あたたかい空間だった。

 緞帳がいつもとちがっていたから、まずそこに首を傾げていた。
 開演前はワコールの緞帳だったはず、だよね? なんで高砂なんだろう? わたしの記憶ちがいかなあ??

 そしたらワコールの緞帳は、別の箇所で使われていた。わたし今まで気にしたことなかったんだけど、緞帳って毎公演全部使わなきゃなんないの? それでワコール緞帳をサヨナラショー前に使いたい場合は、開演前と緞帳を入れ替えなきゃなんないんだ?
 うーん、知らないことがいっぱいあるなあ、タカラヅカ。

 ワコール緞帳は、サヨナラショーの前と、退団者挨拶前に使われていた。
 何故ならば、退団者の思い出のステージ映像投影に使われたからだ。
 高砂は凹凸がありすぎるし、加美乃素はカラフル過ぎる、つーんでワコールだったのかなと推察。

 いつも緞帳のことなんてまったく気にしたことないんだが、今回の舞台のセットが、開演前のワコール緞帳には合っているなあ、と思って見ていたから。
 舞台の両袖に、セットがはみ出てるじゃん? 今回は龍で、幕が開けば巨大な龍2頭が舞台の端から端までつながる仕組み。
 その龍の飾りが開演前の緞帳には合っていてきれいだなーと思っていたのに、幕間の緞帳の色彩に似合わず、1幕終了の緞帳が下りるたびにうわっ合わねーと思っていたんだわー。加美乃素緞帳って主張が大きいんだね。
 高砂緞帳は主張は少ないので、舞台の飾りの邪魔もしないけど調和もしないなーと。ワコールが今回はいちばん好みだった。

 その、『虞美人』にいちばん似合ったワコール緞帳をスクリーンにして、映像が映し出される。画像じゃない、映像。ふつーに動いている。
 思い出の舞台。
 音楽が、声が聞こえてきそうな。

 彩音ちゃんの映像には、オサ様がいっぱい。

 映像が流れる中、退団者からのメッセージを組長が読む。……ええ、カミカミですとも。自信がないのか舞台台詞ほどの明瞭な発声もなく、ぼそぼそしているのであちこち聞き取れない。
 あんまり噛み過ぎたせいか、映像が先に終わってしまい、緞帳もすでに上がり、カーテンだけのナニもない舞台がしばらく、組長が読み終わるのを待っている状態になっていた。

 彩音ちゃんの手紙でいちばんウケたのは、『ME AND MY GIRL』のサリー役が決まり、思ったことが、「どうしよう、あんなに早く喋れない」だったこと。そこかよっ?!と、笑いが起こっていた。

 サヨナラショーは、かわいかった。
 メインが『ME AND MY GIRL』のタップ場面、ちゃんとテーブルまで用意されて、ビル@まとぶんと主題歌1曲まるまる披露。
 中心が『ME AND MY GIRL』のカラー、ポップさに置かれるわけだから、全体として若く、かわいい作りになっていた。
 その人によってチガウものなんだなと思った。大人っぽくとかシックにとかゴージャスにとか、娘役さんのサヨナラショーひとつとってもいろいろあるが、彩音ちゃんが選んだのは「かわいく」だった。
 衣装も真っ赤なミニドレスとか、かわいこちゃん系。
 大人っぽい・カッコイイ彩音ちゃんを披露した『EXCITER!!』の銀橋は一瞬だけで、花男たちのコーラスに任せて退場。あとはひたすらキュートに。
 白虎デュエットダンスは正統派の白い衣装で、娘役集大成を端正に。

 退団する萌子、千桜ちゃんも見せ場有り。てゆーか、まずカーテン前にずらりと並んだ男たちの顔ぶれにびびり、そこに彼女たちが絡む姿にああ、同期なんだと思う。88期男たちは少人数口に勢揃いしても違和感ないけど、92期男子勢揃いは目に新しい(つか、丸い……・笑)。
 みんないい笑顔だ。

 たった1回きりのサヨナラショー。この一瞬のために、お稽古を重ねて。
 みんなみんな、笑って。『EXCITER!!』ではキザって。ええ、あのウインクを省略しがちなまつださんもウインクがんばっていて。

 愛が、あふれている。
 愛を、さけんでいる。

 客席も一体になって、「ありがとう」「大好き」を叫んでいる。

 サヨナラショーのあと、再び組長のカミカミタイム。
 さっきは范増先生姿だったけれど、今度はサヨナラショーの黒燕尾。

 花組は今日で最後、星組に行っちゃうれみちゃん……あああ、まっつのプリンセスちゃんが行ってしまう……の挨拶を経て。

 彩音ちゃんで時間を取りすぎたと反省したのか、今度はえらく巻いた印象の喋り。でもどっちにしろ、噛む。

 千桜ちゃんのメッセージに合わせてスクリーンに映し出されるのは……春風弥里の笑顔。
 すすすすみません、油断していたので、かなりキました(笑)。
 何故、みーちゃん……!!
 宝塚大劇場の巨大緞帳を使った広大なスクリーンいっぱいに歌い踊る、春風弥里。
 千桜ちゃんの初舞台が宙組の『NEVER SAY GOODBYE』なので、彼女の思い出・見せ場として、『ネバセイ』新公がかなり映っていたの。で、彼女が出ていたのがみーちゃんの場面だったため、チギではなくみーちゃんばかりが画面中央。

 えんえん続く宙組映像。そうか、まだ映像をチョイスしにくいくらい、若い若い女の子なんだねえ。下級生娘役さんだと映像もあまりないんだ。
 あまり映っていなくても、それぞれの作品にたしかに存在し、息づいていた。うれしかったことや苦労したことを、メッセージで教えてくれる。

 萌子、というのは『Young Bloods!! 』の役名。空気を読めないイマドキの女子高生役で、演出のサイトーくんは「アテ書きだから、普段のもえりでやればいいから」と太鼓判。それに対して萌子は「アタシ、空気読めてない?!」と、焦ったそうですよ。
 萌子のメッセージはあちこち愉快でした。思い出を綴る中にぽんと入っている彼女のコメントが、ツッコミ系で(笑)。
 スクリーンにブレザー姿の女子たちが映る。あああ、サイトー渾身のバカ芝居。これでいろんな花組っ子たちをおぼえた。「アタシ、萌子。萌え~~☆の、萌子よ♪」とゆー名台詞ゆえに、萌子もおぼえたさ。
 小林少年が子どもではなく美少年風だったこと、みわっちの相手役の大人っぽさ、色っぽさ……。
 まっつを殴る寸前で画面が切り替わったのが残念(笑)。

 巻きすぎたのか、メッセージ音読終了と共にぶちっと不自然に映像を終わらせたはいいが、まだ退団者挨拶の準備が整っていないという。
 その後準備が整うまで「まだのようです」と待たされる。……組長……(笑)。

 娘役さんばかりの退団挨拶、とてもかわいらしく、清楚に。花盾もかわいい。
 わたしは下手側の席だったので、きれいな笑顔で笑いながらも、真っ黒な涙を流しているらいらいが真正面に見えた。

 彩音ちゃんが挨拶で、「ふたりの相手役さん」と言ったとき、後ろのまとぶんが微笑んで「うんうん」とうなずいたところで、わたしゃ大泣きしました。
 オサ様にも触れてくれたこと、そしてそのことさえも、まとぶんが受け止めてくれていること……なんかもお、たまらんっす。大好きだ。

 カーテンコールで繰り返されるまとあやのラヴラヴっぷりに、癒されるやらアテられるやら。なんかもー、泣き笑い。
 今日に限らず、舞台でまとぶさんが彩音ちゃんに触れるときのものごっつーやさしい、大事に大事にしまくってる手つきがたまりませんでしたよ。

 良い千秋楽でした。

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