病みが広がる。@虞美人
2010年4月26日 タカラヅカ 未だに、心は『虞美人』です。
項羽@まとぶんが好き。彼の不器用で苛烈な生き方が好き。
でもって。
思うんだ。
劉邦って、どうよ?
融通の利かない項羽に対し、人を活かすことを知っていた劉邦@壮くんは結果として天下を手に入れる、わけだが。
前にも書いたように、現実に項羽と劉邦がいたら、わたしは項羽にはこわくて近寄れない。無能だから絶対切り捨てられる。でも劉邦なら、こんなわたしにも居場所をくれそうな気がする。
劉邦に人気があって、項羽が滅んだのもわかる。
が。
そーゆー話ではなくて。
わたしは、劉邦の無邪気さが、こわい。
「私は誰も愛していない」と泣き崩れる劉邦だが、わたしとしてはそれ以前のところで「オマエ、こわいよ」と思う。
衛布@みつるという男がいる。彼は野心家で、自分こそが天下を取る器だと思っている。
会稽の太守・殷通@めぐむの部下だが、上役に対してなんの思い入れもない。いずれオレが取って代わる、程度にしか思っていない。……ので、殷通が殺されても平気。太守の仇を討つどころか、早々に敵に寝返る。
この衛布と、劉邦にどれほどのちがいがあるのか。
野心と敵愾心を顕わにしている分、衛布の方が健康だ。
劉邦はただの一度も項羽を愛していない。
なのに、なーんも考えずに、義兄弟の契りを結ぶ。
男にとっては一夜限りの遊びだった。だが、女は運命だと思った。……てなぐらいの、温度差。
義兄弟だからと項羽は劉邦を許し続けるけれど、劉邦はそんなことは頓着なく、項羽を殺すことしか考えていない。
「私も龍」と歌って楚の軍に加わるときも「項羽は当分は味方」と、言下に「いずれ殺すけどね」と匂わす。
先に咸陽に入れば、項羽のことなんか関係なく門を閉ざす。
僻地とはいえ領地を与えられて漢王となったあとも、とってもナチュラルに「楚を攻める日は近い」と兵隊の訓練にいそしみ、懐王を弔うという大義名分を得て兵を挙げる。
項羽が都を不在にすると、ここぞとばかりに進軍。
終始一貫彼は、項羽を敵とし、殺してその地位を奪うことしか考えていない。
なのに彼は、とても善良そうに見える。項羽との間に友情があるようにさえ見える。
陰でいじめグループを指揮しながら、当人の前では「オレたち親友だろ!」とにっこり微笑んでいるくらい、やっていることに裏表がありすぎる。
でもって、この親友ぶって陰でいじめ、てのは衛布がやっていること止まりで、劉邦はさらにものすごいことに、悪意がないんだわ。
自分でこっそり友だちの上靴を焼却炉に放り込んでおきながら、「上靴がない? ひどいな、オレも一緒に探すよ」と、心から親切で言って、一緒に探してやるのよ。自分がそのひどいことをしているんだという、自覚がないの。
こーわーいー。
義兄弟だ、と無邪気に言いながら、その同じクチで楚を攻める話をする。戦争を吹っ掛けるってことは、項羽を殺すことなんだけど、そのへんは気にしてない。
項羽は義兄弟である劉邦を、自分から攻めたりしない。いつもいつも、劉邦が攻め、項羽が怒る。で、項羽の方が強いから、劉邦が「ごめんなさい」して許してもらう。
項羽は「私には羽がある」と英雄ソングを歌う。劉邦は「東へ」と英雄ソングを歌う。
だが、項羽は野心を歌うことで誰も裏切らないが、劉邦は「項羽を殺すぜ! ヤツを殺してオレが上に立つぜ!」と歌っている。西の地へ追いやられた劉邦は、東へ攻め入る予定だからだ。
「義兄弟」でなければ、べつにそれでいいんだけど。衛布がどんだけ野心を持っても健康であったように。
項羽個人を慕っているようなのに、それと同じハートで項羽を殺すことをにこやかに歌う劉邦の、病みっぷりがこわい。
項羽への好意と、項羽を殺して天下を取ることは、劉邦の中で別物になっている模様。
……ふつうは、葛藤とかわだかまりとか、ありそーなもんだがね。劉邦にはそういう「闇」の部分がない。いつもからっと明るい。
という、闇。
鴻門の会で范増先生@はっちさんに命を狙われてなお、「まだ義兄弟に別れを告げていない」と言い募るあたり、ほんとに項羽のこと、素で好意を持ってるんだよね。
そんな相手を殺すことしか考えていない、それを変だと思わないって、どんだけコワレてるんだ、劉邦。
そんな人だからこそ、「私は誰も愛していない」になるわけだな。
愛せるわけないじゃん。アンタ、人としておかしいよ。
……されど、人としておかしい人こそが、天下を取ることが出来るんだろう。
ふつーの神経持ってたら、裏切り続け利用し続け、血で血を洗って屍の山の上に国を作ろうなんて思わないって。
とはいえ、このこわさは、ひとえに演じているのが壮くんだからだと思う。
壮くんの得難い才能なんだ。
彼の光には、影がない。
どんな光にも、影はできる。物理的にいって。
しかし、壮一帆の輝きには、そんなもんが存在しないのだ。
そんな壮くんがあっけらかんと突き抜けた明るさで演じるから、劉邦はあんなに可愛らしく、魅力的な人物になっている。
それと同時に、いびつで、キモチワルイ人間になっている。
や、1回観る分には、劉邦の闇は見えないというか、気にならないんだけど。だって劉邦、可愛いんだもん。
繰り返し観ていると、誠実そうにきらきら笑いながら、めちゃくちゃダークな言動しかしていないことに、背筋が寒くなっていって。
もっと深刻な持ち味の人が演じたら、屈折や裏が感じられるキャラになるんだろうけど、なにしろ壮くんだから。
ぴかーっ、とか、てかーっ、という明るさゆえに、やってることのひどさが伝わりにくい。ふたつが乖離しまくり、とても病み&闇が広がっている。
大好きだ、劉邦。
こんな無邪気さがコワイ人、愛さずにはいられません。
歪んだ人は大好物だ。
いずれ楚軍と戦う、と英雄みたいに語っている漢王サマのキラキラぶりに心奮える。「義兄弟を殺すよ~♪(笑顔)」って言ってるんだよねー。項羽は劉邦を傷つけることなんか、一度も考えてないのに。劉邦ってば項羽を殺すことしか考えてない、なのに項羽のことはふつーに好きで義兄弟だと思ってるんだよー。すげーすげー。
悪意なんかないから、項羽に「義兄弟を裏切るなんて、酷い奴だ」と責められたら、「ごめん、オレが悪かった」って心から謝るんだぜえ。
劉邦はナチュラル・ボーン、いつだって誠実なの。二心なんてないの。
劉邦がきらきらと無邪気に美しければ美しいほど、心奮えます、彼への愛しさがつのります(笑)。
……項羽ってばほんとに不幸。なんでこんな病んだ男を愛したんだか(笑)。
項羽@まとぶんが好き。彼の不器用で苛烈な生き方が好き。
でもって。
思うんだ。
劉邦って、どうよ?
融通の利かない項羽に対し、人を活かすことを知っていた劉邦@壮くんは結果として天下を手に入れる、わけだが。
前にも書いたように、現実に項羽と劉邦がいたら、わたしは項羽にはこわくて近寄れない。無能だから絶対切り捨てられる。でも劉邦なら、こんなわたしにも居場所をくれそうな気がする。
劉邦に人気があって、項羽が滅んだのもわかる。
が。
そーゆー話ではなくて。
わたしは、劉邦の無邪気さが、こわい。
「私は誰も愛していない」と泣き崩れる劉邦だが、わたしとしてはそれ以前のところで「オマエ、こわいよ」と思う。
衛布@みつるという男がいる。彼は野心家で、自分こそが天下を取る器だと思っている。
会稽の太守・殷通@めぐむの部下だが、上役に対してなんの思い入れもない。いずれオレが取って代わる、程度にしか思っていない。……ので、殷通が殺されても平気。太守の仇を討つどころか、早々に敵に寝返る。
この衛布と、劉邦にどれほどのちがいがあるのか。
野心と敵愾心を顕わにしている分、衛布の方が健康だ。
劉邦はただの一度も項羽を愛していない。
なのに、なーんも考えずに、義兄弟の契りを結ぶ。
男にとっては一夜限りの遊びだった。だが、女は運命だと思った。……てなぐらいの、温度差。
義兄弟だからと項羽は劉邦を許し続けるけれど、劉邦はそんなことは頓着なく、項羽を殺すことしか考えていない。
「私も龍」と歌って楚の軍に加わるときも「項羽は当分は味方」と、言下に「いずれ殺すけどね」と匂わす。
先に咸陽に入れば、項羽のことなんか関係なく門を閉ざす。
僻地とはいえ領地を与えられて漢王となったあとも、とってもナチュラルに「楚を攻める日は近い」と兵隊の訓練にいそしみ、懐王を弔うという大義名分を得て兵を挙げる。
項羽が都を不在にすると、ここぞとばかりに進軍。
終始一貫彼は、項羽を敵とし、殺してその地位を奪うことしか考えていない。
なのに彼は、とても善良そうに見える。項羽との間に友情があるようにさえ見える。
陰でいじめグループを指揮しながら、当人の前では「オレたち親友だろ!」とにっこり微笑んでいるくらい、やっていることに裏表がありすぎる。
でもって、この親友ぶって陰でいじめ、てのは衛布がやっていること止まりで、劉邦はさらにものすごいことに、悪意がないんだわ。
自分でこっそり友だちの上靴を焼却炉に放り込んでおきながら、「上靴がない? ひどいな、オレも一緒に探すよ」と、心から親切で言って、一緒に探してやるのよ。自分がそのひどいことをしているんだという、自覚がないの。
こーわーいー。
義兄弟だ、と無邪気に言いながら、その同じクチで楚を攻める話をする。戦争を吹っ掛けるってことは、項羽を殺すことなんだけど、そのへんは気にしてない。
項羽は義兄弟である劉邦を、自分から攻めたりしない。いつもいつも、劉邦が攻め、項羽が怒る。で、項羽の方が強いから、劉邦が「ごめんなさい」して許してもらう。
項羽は「私には羽がある」と英雄ソングを歌う。劉邦は「東へ」と英雄ソングを歌う。
だが、項羽は野心を歌うことで誰も裏切らないが、劉邦は「項羽を殺すぜ! ヤツを殺してオレが上に立つぜ!」と歌っている。西の地へ追いやられた劉邦は、東へ攻め入る予定だからだ。
「義兄弟」でなければ、べつにそれでいいんだけど。衛布がどんだけ野心を持っても健康であったように。
項羽個人を慕っているようなのに、それと同じハートで項羽を殺すことをにこやかに歌う劉邦の、病みっぷりがこわい。
項羽への好意と、項羽を殺して天下を取ることは、劉邦の中で別物になっている模様。
……ふつうは、葛藤とかわだかまりとか、ありそーなもんだがね。劉邦にはそういう「闇」の部分がない。いつもからっと明るい。
という、闇。
鴻門の会で范増先生@はっちさんに命を狙われてなお、「まだ義兄弟に別れを告げていない」と言い募るあたり、ほんとに項羽のこと、素で好意を持ってるんだよね。
そんな相手を殺すことしか考えていない、それを変だと思わないって、どんだけコワレてるんだ、劉邦。
そんな人だからこそ、「私は誰も愛していない」になるわけだな。
愛せるわけないじゃん。アンタ、人としておかしいよ。
……されど、人としておかしい人こそが、天下を取ることが出来るんだろう。
ふつーの神経持ってたら、裏切り続け利用し続け、血で血を洗って屍の山の上に国を作ろうなんて思わないって。
とはいえ、このこわさは、ひとえに演じているのが壮くんだからだと思う。
壮くんの得難い才能なんだ。
彼の光には、影がない。
どんな光にも、影はできる。物理的にいって。
しかし、壮一帆の輝きには、そんなもんが存在しないのだ。
そんな壮くんがあっけらかんと突き抜けた明るさで演じるから、劉邦はあんなに可愛らしく、魅力的な人物になっている。
それと同時に、いびつで、キモチワルイ人間になっている。
や、1回観る分には、劉邦の闇は見えないというか、気にならないんだけど。だって劉邦、可愛いんだもん。
繰り返し観ていると、誠実そうにきらきら笑いながら、めちゃくちゃダークな言動しかしていないことに、背筋が寒くなっていって。
もっと深刻な持ち味の人が演じたら、屈折や裏が感じられるキャラになるんだろうけど、なにしろ壮くんだから。
ぴかーっ、とか、てかーっ、という明るさゆえに、やってることのひどさが伝わりにくい。ふたつが乖離しまくり、とても病み&闇が広がっている。
大好きだ、劉邦。
こんな無邪気さがコワイ人、愛さずにはいられません。
歪んだ人は大好物だ。
いずれ楚軍と戦う、と英雄みたいに語っている漢王サマのキラキラぶりに心奮える。「義兄弟を殺すよ~♪(笑顔)」って言ってるんだよねー。項羽は劉邦を傷つけることなんか、一度も考えてないのに。劉邦ってば項羽を殺すことしか考えてない、なのに項羽のことはふつーに好きで義兄弟だと思ってるんだよー。すげーすげー。
悪意なんかないから、項羽に「義兄弟を裏切るなんて、酷い奴だ」と責められたら、「ごめん、オレが悪かった」って心から謝るんだぜえ。
劉邦はナチュラル・ボーン、いつだって誠実なの。二心なんてないの。
劉邦がきらきらと無邪気に美しければ美しいほど、心奮えます、彼への愛しさがつのります(笑)。
……項羽ってばほんとに不幸。なんでこんな病んだ男を愛したんだか(笑)。
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