東宝公演スタートですね、『虞美人』。観に行きたいなー。
 

 桃娘@だいもんはとてもいいキャラクタなのに、きちんと書き込みがされていないため、とてももったいない。衛布@みつるとの関係、衛布の野心についてもだし、なにより韓信@みわっちがえらい割を食っている。
 もう少しなんとかならんかったんかなあ、と思うけれど、まあそれゆえに、観ている側が脳内補完にいそしむことはできる。
 エピソードとエピソードの間を埋められるくらい、それぞれのキャラが立ってるからさ。

 つーことで、桃娘関連の我らが張良さん@まっつの話。

 張良先生は、衛布と桃娘の関係を知っていた、と思う。

 桃娘と衛布の関係。……つったらもちろん、アレ。毎夜毎夜、衛布元気だな、の、アレ。
 ……毎晩だと台詞で名言はされていないようだが(友人と「毎晩って言ってたよね?!」と盛り上がったのは妄想? 笑)、虞美人様@彩音ちゃんの「夜中に出歩いている」という言い方は、1回限りではなく継続的かつ日常的な出来事を連想させるので、間違ってはないんでしょう。

 そのことを、張良せんせは知っていたと思う。……桃娘が、隠しているつもりでも。
 

 桃娘を楚陣営へ送り込んだのが呂@じゅりあである以上、早い段階から張良の耳には入っているだろう、虞美人お気に入りの童が、桃娘だと。張良は桃娘の働いていた居酒屋にも出入りしていたわけだから、顔は知っているだろーし。
 で、ちゃっかり項羽@まとぶんの配下に収まった張良は、桃娘にコンタクトを取っているはず。
 鴻門の会で、桃娘が劉邦を守るために剣舞へまざっていたことも、わかっているのだし。
 項羽のお膝元で自由に暗躍(笑)するために、味方には働きかけているだろうから。

 2幕冒頭にて、張良は当たり前に桃娘に話しかけている。すべてを知り尽くした顔で。
 桃娘も張良の言動にはなんの疑問も持っていない。「この人嘘をついている?」とか「言葉に裏があるのでは?」なんて、みじんも考えない。まるっと鵜呑み。

 張良は、見事に桃娘を手なずけている。

 桃娘と張良が直接言葉を交わすようになるのは、鴻門の会以後だと思う。
 1幕ラストと2幕冒頭がどれくらい時間経過しているのかわからないが、その間ですっかり懐柔(笑)。桃娘は張良の手のひらの上。

 やっぱ隙を見て張良から、「今は項羽に従っているふりをしているが、心は劉邦様のモノ(笑)だ」と話して、安心させたんだろうなと。オマエのことは呂妃から聞いていると。項羽は共通の敵であると。

 単身敵地に乗り込んでいる桃娘にとって、事情を知っている味方の存在は心強いだろうし、また、張良ならば「心強い味方」であると世間知らずのおじょーさまに思い込ませることなんかたやすいだろう。

 てことで桃ちゃんは衛布のことを、張良に告げていると思う。
 「父の部下であった衛布には顔が知れているため、私の正体も知られてしまっている。でも、自分が項羽に成り代わろうと狙う衛布は、あえて黙っているようだ」……てな、「表面的な事実」を。
 項羽を討つために必要な情報を、劉邦の軍師に伝える。呂に恩を感じている桃娘はそれくらいするだろう。

 衛布に「なぐさみものにされている」ことは、死んでも言わないだろうけど。

 でも張良は、気づくと思う。
 衛布の野心にも、そして彼に対する桃娘の恐怖にも。

 ナニが行われているか、正しく察して。
 その上で、ナニも言わないだろう。

 助けません。ええ。
 藪をつついて蛇を出すわけにはいかないので。罪のない娘をひとり救うことで、事を荒立てるわけにはいかない。娘には引き続き犠牲になってもらって、まずは自分の任務優先。

 そーゆー人だよね、張良先生。

 時間経過はよくわからないが、范増先生@はっちさんが懐王@王子のところへ行っている間、桃娘が「先日の剣舞をお褒めいただきました」と言っているから、ほんとーに大した期間ではないのかもしれないが。
 
 衛布と桃娘の歪んだ関係。そして、黙って見ている張良。
 ……というのは、萌えなんですが(笑)。

 短い期間だとしたら、そんな間に桃娘の信頼を得、項羽陣営でも幅を利かすよーになっている張良先生ってどんだけ優秀なん(笑)、という。

 ハンゾー先生からの報告書を、わざわざ張良が持ってくるってどういうこと? ボスへの機密文書を取り扱っていいんだ、ついこの間の鴻門の会までよそ者だった張良が。

 項羽が待ち望んでいたハンゾー先生からの手紙。使者ではなく、張良が運んだ。……これってつまり、そーゆーことなのかねえ。
 解答は提示されなかったけれど、張良が手紙をすり替えて懐王暗殺へと誘導したってことかねえ。懐王が武将たちに国を分けることに反対したまでは事実だと思うんだけど(そのあとの場面で、ハンゾー先生がそのことについてスルーしているから)、事実が歪められている可能性があるよな。使者ではなく張良さんがメッセンジャーボーイをやっているなんて、怪しすぎる。
 この物語では項羽が曲がったことはしないことになっているので、悪!な所行は別キャラの策略になる傾向がある。だからこそ、あの善良な王様を暗殺するのは項羽のせいではない、と。悪いのは張良ですよと。

 ついでに言うと、「韓信を殺せ」もほんとーにハンゾー先生の言葉だったのかどうか。
 韓信を劉邦側に寝返らせるための策略じゃなかろうか。
 それをわざわざ、桃娘に聞かせているあたり、アヤシイ。

 ええ、とーぜん張良さんは知っていたのでしょうとも、桃娘が韓信を慕っていることを。ある意味桃娘と同時期に韓信を見初めたんだもの、例の股くぐりで。

 張良なりのやさしさかもしれない。
 桃娘の今の身の上……父の仇を討つために、好きでもない男の愛人やりながら耐えている日々。無事に仇を討てたとしても、殺されることがわかっている。
 その現実に、別の道を指し示す。父への思いを忘れろ、捨てろというのではなく、恩人を助けるのだ、と。桃娘のまっすぐな心の軌道を、変えさせる。歪めるのでも曲げるのでもなく、向きを変えさせたんだ。

 だって、漢への抜け道を教えるなら、韓信に直接言ってもいいんだもの。このままここにいたら殺される、この地図の通りに漢へ逃げろと。なにも桃娘に託す必要はない。
 桃娘を救うために、わざとやったんだよね、張良。

 だからこそ余計に、「張良は、衛布と桃娘の関係を知っていた」と思う。
 黙って見て見ぬフリして、そして、さっと助ける。……すごいな。

 で、なにがすごいって、優しい行いのはずなのに、やっぱり悪だくみしているよーにしか見えないことでしょう、良ちゃんってば(笑)。
 
  
 桃娘が衛布を殺してしまったのは、突発事項。さすがの張良先生も、これは計算していないと思う。

 桃娘が韓信と駆け落ち(笑)したとなると、残された衛布はどう思っただろう。
 そして張良は、そんな衛布をどうさばくつもりだったんだろう。なにかしら算段はあったんだろうし。

 衛布VS張良。
 見てみたかったな。

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