たとえば、小池先生。
 彼の演出力を素晴らしいと思い、観る価値のある作品を創る人だと思っている。
 世界征服をたくらむ悪役が必ず出てくる、彼のオリジナル作品はかなりアレなんで置くとしても、原作付きとか翻訳ミュージカルなら、安心して初日を待てる演出家だと思う。

 イケコの作品は、わたしにとってはネズミの国のアトラクションに近い。
 バイオリズムに合っているというか、ひとの五感をアップダウンさせる術に長けていると思う。
 だから観るのはたのしい。観ている間、わくわくできる。

 が、根っこのところで彼とは相容れない場合が多く、楽しいけれどハマらない、ことがほとんどだ。
 ネズミーランドのアトラクションは、楽しいけど続けて何回も観なくていいや、になる。

 斬新な画面や最新のシステムでうわーきゃーっと楽しませてくれるアトラクションもいいけれど、とことん入り込んで心をひりひりさせて、泣いて苦しんで、それでも好きだと、世界に酔う小説とか映画とかの方が、好みだったりする。

 ……という位置の演出家だったりする、わたしにとっての小池せんせ。
 作品だけでいうなら、ものすごく好きだというわけでは、ない。

 しかし、作品だの芸風だのだけで、純粋に判断できないんだな。
 だってわたしはヅカファン、わたしにはご贔屓がいる。

 何故かイケコ作品では贔屓の扱いがイイ。
 みょーにイイ。
 だから、作品の根っこ部分に引っかかっても、贔屓の活躍見たさにマイナス部分には目をつぶってしまう。
 贔屓の扱いがうれしくて、1回乗れば十分なアトラクションに何十回乗ってしまうという……あああ、ヅカファンって。

 
 とまあ、こんなふーに、演出家の好き嫌いは、純粋に作品の出来とか好みとかだけでは計れない。

 贔屓が出ているから好き、があるのと同じように、贔屓が出ていなければ好き、もある。

 ええ、つまり。
 今回の2010年宝塚歌劇ラインアップ発表でいちばん引っかかったのは。

花組
■主演…(花組)朝夏 まなと
BOW MUSICAL
『コード・ヒーロー』

作・演出/谷正純

 なんですよ。

 谷せんせのバウには、好きなモノも多いっす。
 逆ツボも多くあるし、苦手なモノ、疑問なモノもあるけれど、面白いモノ、萌えなモノもいくらでもある。
 欠点を覆い隠すほどのパワーのある作品だって、あった。

 だから、谷せんせのバウ作品全部が嫌なワケじゃなく、新作を楽しみにするキモチは大いにあるんだけど。

 ……贔屓が、出ていなければ、なんだよなあ。

 前述のイケコの例と反対で。
 谷せんせの作品では、いつも贔屓の扱いがよくなくてね(笑)。下級生時代から一貫して。新公でもその前後の公演に比べ役付きが落ちていたり。

 路線外スターとして在団する以上、いずれはやってくるだろう、下級生スターを支える役。
 それがこの、まぁくんバウかもしれない。

 いずれ来る、はいいんだ別に。仕方ない。
 ただ、今回そうだったら、つらいなあ。

 と、演出家名を見て、思いました。

 バウと全ツ、どっちに出るかわかんないけども。
 どっちに出たからといって、同じくらいわくわくしない演目なんだが(笑)、それにしても谷せんせは苦手かもなあ。

 無碍な扱いはしないかもだが、演出家として苦手過ぎるイシダ作品でないだけ、マシなのか。

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