『バッカスと呼ばれた男』には、大劇版と1000days版と全ツ版と3種類あった。それぞれ改稿され、脚本からして別物だった。
 が、それともうひとつ。

 新人公演『バッカスと呼ばれた男』があった。

 こちらは改稿はされていないんだが、なにしろ新人公演なのでキャストがチガウ……のはとーぜんだが、キャラクタ配置が別物だったんだ。

 役者のことを考えず、脚本だけで見れば。

・元銃士隊隊長ジュリアン……清廉潔白な武人、つってもおフランスなので華やかな美形。自分の存在が王妃や国のためにならないと判断、身分を捨てて出奔。
・吟遊詩人ミッシェル……ロン毛の美青年。耽美コスプレまかせろ。主人公が武人なので、それと正反対の調子のいい優男。
・宰相マザラン……美形悪役。政治的にも、恋愛的にも、ジュリアンを敵視している。
・盗賊マンドラン……濃いめの色男。トリックスター。ジュリアンに惚れ込み、協力する。
・使者ラズロ……純真無垢な青年。愛する祖国のため、姫君のため、命を懸ける。

 てなキャラクタなわけですよ。

 しかし本公演では、この通りのキャラクタには見えなかった。
 ジュリアン@トドロキはたしかに無骨さもある美形なんだけど、どこか、胡散臭い。
 ミッシェル@タータンのロン毛の耽美コスプレはなんの罰ゲーム?!状態だし、マザラン@コウちゃんに美しさを求めるわけにも……。
 マンドランとラズロはいいとしても、上から3人がキャラ違いすぎて、落ち着きが悪いったら。

 それが、新公では。
 脚本通りのキャラクタになっていたんですよ!!

 ジュリアン@ハマコの包容力。
 おフランス的に美しい……かどうかはともかく(笑)、彼がデキる男であり、人望篤い隊長だったとわかる。人間的な魅力で周囲をまとめて来たんだ。
 子どもたちから「おじさん」呼ばわりが違和感のない、だけど少年の心を持った大人の男。

 そしてそして、なんつっても。

 ミッシェル@レアちゃんの、美貌!!

 ロン毛OK! 耽美OK! つか、「吟遊詩人」っつったらこうでしょ、コレでしょ!!
 金髪がまぶしい、ケーハクな吟遊詩人、プレイボーイの美青年。
 ジュリアンが骨太なおっさんである分、ミッシェルが若い美青年なのがまた眼福なコントラスト。

 花組育ちの、キラッキラのダンサー、蘭香レア。その美貌と華と存在感は、たしかに雪組にはナイもので。
 そのキャラクタが一気に花開いた感。

 一方的にジュリアンになつき、最後は愛の告白をするのに相応しい、キラキラした美形でした。

 でもって。

 マザラン@しいちゃんの、美形悪役ぶり!

 枢機卿の赤が似合う、眦の上がった美貌の悪役。長身に衣装が映え、大きな眼が台詞以上の心情を語る。
 前回の新公主演者が、脇の抑え役にまわるのは賛成。一度真ん中を務めた人の華と実力は、いぶし銀的配置にもっとも映える。

 これだけの色男なら、そりゃアンヌ王妃@まひるちゃんも恋に落ちるわ、と納得。

 太陽のしいちゃん、唯一の悪役。いや、正確には、唯一、成功した悪役。
 当時はまだ悪役が出来たんだねえ……。学年と共にキャラクタが確立していくと、いい人過ぎて悪役が出来なくなっていった……(笑)。

 この3人のバランスが、神。

 「ヒーロー物」として見たかったキャラ配置。
 包容力と男らしさの主人公、キラキラ美形優男の相棒、ダークな色男の悪役。

 痛快活劇『バッカスと呼ばれた男』なら、これが正しいキャラクタなんじゃないの?!

 いやその、雪組の当時のトップから3番手までの相性が良くなかった、ってことなんだけどね。個々の魅力を相殺する並びだったんだ。
 新専科制度で、2・3番手の顔ぶれが変わった途端、雪組のキラキラ度っつーか美貌度が一気に上がったしなー。(トド、ブン、ワタル、コム、ナルセ、かしげ……ってナニその美形尽くし←『パッサージュ』の顔ぶれ)

 『バッカスと呼ばれた男』新人公演は、いろんな意味で興味深かった。
 番手制度であんなことになっていたけれど、脚本本来のキャラクタはこうだよな、という感慨と。

 そしてもうひとつ。

 未来優希、新公主演。ということと。

 
 翌日欄へ続く。 

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