『麗しのサブリナ』『EXCITER!!』千秋楽。

 まっつファンのわたしにとっては、かなり特別な日。
 身構えっぷりがハンパない。落ち着け自分。力みすぎだ自分。

 えーとえーとそれで。
 とりあえず。

 らいらいは、やってくれた。

 壮さんとかみつるきゅんとか、今までなにかしらアクションしていた相手ではなく。相手役として踊るかわいこちゃん、いちかやはるちゃんではなく。
 いきなり、らいだった。

 千秋楽の組替えまっつに対するアドリブ。つか、スタンドプレイ。

 ハバナでファヌン様光臨後、心を入れ替えた人々が争いを捨て、許し合って踊り出す……その場面で、らいがまっつを、抱きしめた。

 ええええ。

 そこ?!

 直前までケンカしていたふたりが、まっつから声を掛けて和解する場面なんだが、いつもなら軽いスキンシップで終わるところを、らいがまっつを抱きにいった。
 真正面からだ。
 まっつはちょっと驚きつつも受け入れ、男ふたりで真正面からハグ。

 らいはなにしろ体格いいんで、まっつはすっぽり腕の中だ(笑)。

(注・らいらいの公式身長は172cmです。花組では長身。かつ、らいのいいところは適度な厚みのある体格だということ)

 まっつの照れた笑顔がくすぐったい。
 そーだよなー、そーゆーことする人じゃないもんなー。『舞姫』千秋楽にみわさんと抱き合ったときも、照れがあったよなああ。

 しかし、相手がらいってゆーのが。
 らいがイヤなわけではない、そんなことあるか、らいは大好物だ。
 ただ、らいはなにしろらいなので、いつもスタンドプレイ上等男なので(笑)、ここぞとばかりに食いついてきたことに、「うわ、らいだ!」という感じがしてイヤン(笑)。
 らい、GJ!!

 らいと抱きしめ合ったあと、すげー勢いで走り出すまつださん。
 時間くっちゃった分、次の位置に急いで行かなきゃいけないんだろうけど、照れ隠しみたいで萌え(笑)。
 やべ、らしくないことしちまった。べ、べつになんでもないからな、あんなこと!! ……てゆーツンデレ様の名に恥じない行動に見えました。

 そっから先のハバナダンスのやけっぱち……もとい、余力計算無し!って感じの本気の踊りっぷりもまた、すごかったです。
 勢いだけで踊りきるっていうか、なんかブチ切れてるってゆーか。

 いつも、この命の革命……フジイくんお約束の新世界場面のラスト、腕を上げたままの静止ポーズで肩で息をするまつださんを見るのが好きだった。

 誠心誠意踊りきって、肩を上下させるほど荒い呼吸で。なのに腕をおろし、ゆっくりと歩きはじめ……「♪ひとりで抱えきれない」と歌い出すときには、乱れなんか微塵もない整い方で。
 あの激しいダンス、そして呼吸……そこから数歩歩いただけで、この声?! この歌?!

 贔屓に惚れ直す一瞬。

 惚れ直すってのもチガウか、やっぱすごい人だ、とうなずく……再確認する。
 それは、しあわせな行為だ。
 公演を繰り返し観る。そしてそのたび、再確認する。この人が、わたしの好きな人だと。

 惚れ直すじゃないけど、「知っていた、素敵だってこと! 知っていた、すごいってこと!」を毎回毎回、観るたびに「うん、そうなんだよ!」と膝を叩く、その感覚。
 なんて幸福なんだろう。

 まっつは、舞台の上で自分の力を出す。
 そしてわたしは客席の片隅で、それを受け取る。

 それは、幸福な両思いだ。
 双方一方通行で、まっつはわたし個人に向けてなんかいないし、わたしがまっつになにか関与できるわけじゃないが、それでもこれは、両思い状態だと思う。
 舞台人としての彼が発するものと、観客であるわたしが受けるもの。
 それが互いを必要とし、つり合う……というか、同じ力量で引き合っているならば。
 同じ力量だよ? まっつが放出するものが大きければ大きいほど、わたしは「まっつすごい!」ってさらにわくわくするんだもの。

 客席にいる人たちみんなに向けて、舞台上の彼らはパワーを発し、観客ひとりずつが受け取っている。
 わたしだけでなく、きっとみんな、ご贔屓さんと「幸福な両思い」になっているんだろう。

 この公演中、わたしは幸福だった。
 まっつをすごいと思い、まっつを好きだと思う。
 会うたびに「好き」と思う……「好き」とか「しあわせ」とか、プラスの感情をもらう。
 それはとても、しあわせなことだ。
 人間として。生きる上で。
 どんだけ、救われることか。

 そして千秋楽。
 ただこの公演が終わるというだけではなく、まっつは組替えする。大好きな花組からいなくなる。
 その、ラストソング……まっつの「歌」を単独で聴ける場面が、命の革命から、明日への革命に移る場面。

 いつもより、肩の上下が少ない気がした。落とされた照明の中、腕を上げて静止したところ。
 あんなにあんなに踊っていたのに。
 どこかにある、緊張感。いつもと同じではない、と。

 人々が三々五々はけていき、舞台にはまっつといちかだけが残る。
 銀橋にはまとぶんと蘭ちゃん。

 夕暮れの光の中。
 まっつの「声」が、響き渡る。

 汗に濡れた頬。額にかかる黒髪。
 本人がどれほどナニを思いナニを抱えているかなんかわかりゃしないが、わたしたちの耳に届く「声」はいつもの澄み切り方で。
 光が差すように、まっすぐに、届いてくる。

 
 幕が下りたあと、組替え挨拶があるのは想定内。
 まだ東宝公演がある場合、組替え挨拶はあるときとないときがある。
 退団者が多ければ、組長が緞帳前で読むメッセージが長くなって時間稼ぎになるけれど、今回はちあきさんひとり。彼女が袴に着替える間を持たせるために、たぶんまっつはかり出される。挨拶をする。
 とはいえ、きっと大したことは言わないだろう。お約束通り、定型文通りのことを言うだけで終わりでしょう? 今の時代、言語統制が激しいから。

 そう思っていただけに。
 彼があんだけ喋るとは、意外だった。

 こだわりと、プライドを見た。

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