すべての男役スターは、クンバンチェロを歌い踊るべきだ。

 と、痛感しました。

 蘭寿とむコンサート『“R”ising!!』初日観劇。

 目に痛いよーなギラギラビラビラの衣装で、腰振って回して「クンバンチェロ」を熱唱すべきだ。
 それができてこそ、タカラヅカスタァだ。

 ……いやもお、すごかったです。
 濃ゆいのなんのって。
 なにをどうやっても濃ゆいわ。
 「クンバンチェロ」熱唱なんて、その1部。
 1部だからこそ、ある意味「全体」を表している。

 ラテン衣装着て厚化粧の日本人が「クンバンチェロ」歌って、たぶん今ここだけ切り取って一般人に見せたらドン引きすると思う。
 なんかトンデモナイ、ものすごい世界が展開されていることがわかる。

 でも、そのトンデモナイ、ものすごいモノが、「タカラヅカ」で。

 蘭寿とむは、まぎれもなく「タカラヅカ」のスターだ。

 
 んで、クンバンチェロ。
 これってものすごく、「スター力」を試されると思うのね。
 男役が出来上がっていない若者がやると寒いだけだし、技術があっても衣装や曲に飲まれる人がやると薄くなる。
 色気全開に客席釣りまくってアハン顔して、漢くささ爆発オラオラしまくって、客席を恥ずかしさで身もだえさせてくれないと。恥ずかしいけどかっこいい、と思わせてくれないと。

 たぶん「タカラヅカ」だけに存在する、まちがった「ラテン男」(笑)。ファンタジー、虚構の中の色男。
 現実にこんな男いねーよ、に、リアルに肉付けすることが、タカラヅカ・スターの力!

 だから、すべての男役スターは、クンバンチェロを歌い踊るべきだ。
 そーやって培ってきた「スター力」を示してみるといい。スベった人は修行し直し、ってことで(笑)。
 や、いろんなタイプのスターがいていいと思っているので、「クンバンチェロ」でスベって悲しい人、も個性のひとつだろーけど、個性とは別に基本スキルとしてクンバンチェロぐらいこなしてみせろ、とね(笑)。

 ちなみに、すべての娘役スターは、「私のヴァンパイア」を歌うべきだ、と思っている。
 初々しくかわいらしく歌わなければならないこの「かわいこちゃん曲」を、どんだけブリブリに……ぶりっこしてなおかつ女子の反感を買わず共感を生むキャラクタを確立できるか! を競うべきだ、と思っている(笑)。

 
 まあそんな、「スター登竜門」の話はともかく。
 『“R”ising!!』。
 
 えー、内容は、「蘭寿さんと一緒」の、バラエティ・ショー。
 らんとむを地球の中心に置いた、2幕構成のタカラヅカショーっす。

 ラテンもロックもJ-POPも懐メロも耽美(笑)もお笑いも、とにかく全部詰め込んである。全部やってのけている。
 そして、場面ごとにヒロインがチガウ。
 性転換も含め(笑)、いろんな女の子とらんとむが組んで踊っている。

 歌詞のものすごさ、台詞のものすごさもフジイくんクオリティなのかな。えーと、らんとむって松潤よりかわいいのか福山よりかっこいいのか、そうなのか。外タレと比べられても苦笑いだが、現役国内スターを列挙されると同じ地平にいるだけに思考が止まるというか。でもってダンシング・フェアリーなのか……フェアリー……らんとむもふぇありー……た、たしかにそうなんだけど……ふぇありー……。

 客席降りアリ、客席登場アリ、前見たり後ろ見たり忙しい。
 通路際美味しい。

 すずさんとかちゃの女装はマジ、十ちー大の女装はネタ……そして、いちくんの女装は……どっち?!
 ネタなのかマジなのかわかんなくて、口ぽかんと開いてしまったナリ……。

 フジイくんなので、見たことある場面、聴いたことある曲のオンパレード。
 チェンジBOXの代わりが魔法使いのまいらちゃんよねとか(いやその『シンデレラ』パロなのはわかるが)、しいちゃんが十でベニーが美月くんなのねとか(ペニーより有能そうなあたり……笑)、女の子の衣装も同じかいとか。挫折(死)→再生はフジイくんのお約束だとわかっちゃいるが、しかし、あの死に方は……思わず「ソコっ?!」と内心叫んじゃったよ。殺された彼も実際「俺かよ?!」と叫んでんぢゃないかと……。

 客席でうちわを振ったりスタンディングで踊ったりはなかったけれど、手振りはアリですよ。T・O・M・Rって、たぶん明日以降は本編内でファンも手振りするんだろう……よかった、初日で。
 や、初日狙って行ったのは、それ以降だとリピーターの間に入って浮くことになるのがわかりきっていたためです、はい。みんなが踊ってるときに、「はじめて見たからわかんない」と指くわえるのが嫌で(笑)。年寄り故、順応性低くて咄嗟に見よう見まねで混じれない(笑)。

 
 それにしても、オープニングがいろいろと恥ずかしくて。
 本人の名前連呼曲は恥ずかしいんですが、それにしてもらんとむ氏が歌う「ザ・青春ソング」が、恥ずかしすぎる。

 ベタなんですよ。歌詞がそのまんますぎる。ええ、本人が作詞作曲してるんですよ……。
 自分のことを歌っているんだって、飾らない正直な言葉なんだって、真のファンはそーゆーモノを聴きたいのかもしれないけれど、ヨゴレたファンハートしか持たないわたしは、客席でそのこっぱずかしさに身もだえしました。
 この歌、アンソニーがナンシーへ、「俺たちの愛の記念日」に歌ってイイ歌だよね、ってゆーかむしろそのものズバリだよね、フジイくんとスズキケイとらんとむさんの夢のコラボ作品だよね? ってくらい、恥ずかしかった。(アンソニーとスズキケイの恥ずかしさについては『摩天楼狂詩曲』感想で語ったので略)

 最初からこんな恥ずかしいモノ見せつけられて、どうしよう困ったな、と。
 「クンバンチェロ」の恥ずかしさはイイんですよ、あれは「タカラヅカ」の恥ずかしさだから。
 しかしこれは……いやこーゆー恥ずかしい歌を臆面もなく披露して「いい話」にしちゃうとこも、ある意味すっごく「タカラヅカ」らしい恥ずかしさだが……。

 と、とまどっていた、蘭寿さんのオリジナル曲。

 ああらびっくり、フィナーレでは泣けた。

 恥ずかしいの。
 ベタでストレートで「歯に衣着せろよ」な歌なのに、オープニングで聴いて「とほほ」だったのに、同じ歌なのに、コンサートの最後に聴くと、泣けるの。
 じんとするの。
 胸にアツいものがこみ上げるの。

 これぞタカラヅカ。これぞ蘭寿とむ。

 外の世界の常識とか目線とかをぶっとばし、異世界を構築する。その場所そのときだけ、別の世界にしてしまう。
 外から来たばかりだったわたしは、オープニングでは「うわっ、恥ずかし(笑)」と思った。それが2時間、彼の創る世界に浸っていると、彼が創るモノだけがすべてになる。外のことなんか忘れる。

 そして、彼の言葉に酔う。
 ベタで、ストレートで、恥ずかしい……飾らない愛と感謝の心に、酔う。

 らんとむ、かっけー。

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