新人公演『ジプシー男爵』の感想行きます、まず新公主演おめでとー!!の、宇月くん。

 本公演を観たとき、まずオープニングのえんえんえんえん続くデュエットダンスに、これを新公でやるんだ!と、ワクテカした。

 トップスターさんたちは、毎公演何カ所も「自分たちだけで場面を作る」「場面の芯になる」経験をしているから、今さらナニをしても「今回の演出」でしかない。
 でも、番手外の人たちは、大劇場で1場面を任されることなんて一生ナイ。
 芝居なら新公を含め機会が皆無ではないが、ショーは本公演しかないし、本公演で場面の芯を演じる可能性はとても低く、それがカーテン前の場つなぎでもなく、本舞台を使ってたったふたりだけで歌い踊る、なんてまずありえない。

 そのありえないことが、起こる。
 「本編とは無関係のオープニング・ショー場面に時間を費やし、本編が破綻する」という特質を持った演出家作品の新公ならば。
 その昔、『パリの空よりも高く』という作品のオープニングを見て、「新公では貴重な経験になるだろうな」と思ったように。

 たったふたりだけで、あの広大な空間を埋める。
 芝居ではなく、ショーで。

 ふつーの新公ではありえない、貴重な出来事。

 それを、大型新人秘蔵っ子掌中の珠扱いだったみりおくんとかがやるのではなく、研7最後の最後に滑り込み主演が決まった宇月くんがやる、つーのが興味深い。

 さて、わたしは最近めっきり宇月くんスキーで、新公のたびに彼にきゃーきゃー言ってる気もするが、最初の印象自体はあまりいいものではなかったんだ。
 個性的な顔だなあと。
 舞台で認識するよりも、スカステでニュース読んでる姿が先だったもので。
 まるまるぷくぷくでないのはいいけど、なんでスカフェなんだろう、美貌枠ではなさそう(失礼)だから、劇団推しか成績か。
 その前後の新公や『ハロー!ダンシング』で、それなりに役や出番があるので劇団推しなのかと思った。卓越した実力は、ごめん、感じられなかったので。
 『ホフマン物語』で歌えることはわかった・そうか、歌の人だったのか、てなもんだったけれど、それも学年にしては歌える、って感じで、感動には至らなかったし。
 美貌でもなく実力でもなく、でも扱いのイイ若手って、苦手だなあ。
 とまあ、そんな印象からスタートしました。

 ……見る目ナイですね(笑)。

 結局のところ、わたしが彼に注目し出したのは、「芝居」によって。
 彼の作る役が、人物が、なんか好きだった。
 扱いがイイったって、下級生だから芝居をちゃんと見られるようなモノではなかったのね、それまで。
 新公その他で彼の「芝居」を、キャラクタとして生きているところを見る機会が増えるに従って、傾倒していった。

 芝居が好みで、あとそこそこ歌えるとなると、俄然好き度が上がります。
 最初個性的だと思った顔も、どんどんハンサムに見えてくる(笑)。

 ええ。
 今、声を大にして言おう。

 宇月颯、かっこいー。

 彼の身長やスタイルをどうこう思ったことが一度もなかったので、ただ漠然と小柄な部類の男役って印象だったので、帰宅後に「おとめ」を開いて確認しちゃったよ。
 168cmだって。
 きりやさんと1cm違い。

 …………えーと。
 きりやんに限らず、ジェンヌの公式身長にツッコミ入れるのは野暮だとわかっちゃいるが、ずいぶん違って見えました、身長もスタイルも。前回のたまきちぐらい元からちがってりゃ、別物と割り切って見ているけれど、今回はニアリーイコールな分、いろいろと混乱が(笑)。
 いやいや、きりやんがどうこう、ではなく、宇月くんが小顔ですっきりかっこよかったっす。さわやかさんなので、小柄なことも気にならなかった。

 実力は心配してない。『HAMLET!!』 の成果ゆえに安心。
 だからあとはひたすら、華。

 大劇場は不思議なところで、どんだけ実力があったって、「真ん中は似合わない」と思ってしまう新公があるんだ。(ええ、その昔、『La Esperanza』って作品の新公を観たときにね、主演の人がすごーくうまいことはわかったんだけど、真ん中にはちょっと無理ってな地味さがゆんゆんしていてね……泣)
 実力に破綻のない人の場合は、ひたすらそっちが気になる。

 宇月くんはきれいでうまくて、「新公」主演として遜色ない人に見えました。

 「絶対真ん中!」という強烈な吸引力は今現在なくても、この学年とキャリアでこのラインあれば及第点ぢゃね?というところには達していると思うの。
 「向いてないよ」とは、思わないもの。
 今後の育ち方に期待。

 ただ、今回のシュテルク役は、宇月くんの得意分野ではなかったかなと思う。
 歌える、踊れる、コスプレもできる、だから十分得意でしょ、ということではなく。
 宇月くんの本領は、大味でプリミティヴな言動の男ではなく、もっと繊細な部分にあると思う。
 内面よりも外側(外見ではなくて、言動)の説得力が必要な役は、得意ではなくても経験としては貴重。いかにも「大劇場」な主役だもの。

 なんつーんだ、シュテルクの言動の説得力が薄い気がした。

 きりやんで見たときは、気にならなかった展開の強引さ(笑)が、宇月くんだといちいち気になった。
 きりやんシュテルクならアリだと思えることも、宇月くんだと「や、キミはチガウでしょ」と思えてしまう。
 本役さんまんまの役作りである必要はないけれど、物語の荒唐無稽さと宇月くんの繊細さや、神経質さがハマりきっていない気がした。

 きりやんシュテルクには、いい意味での愚鈍さがあるんだよなあ。きりやん自身は賢い役者さんだけど、だからこそ今回の役ではおとぎ話ならではなの、無神経さや図太さを醸し出している。
 それくらいでないと、この変な物語を転がしていけない。

 そこが、宇月くんの「真ん中」向きではない部分かもしれないな。
 現状では。
 未来はわからない。

 でもほんと、最初のえんえんえんえんデュエットダンス、良かったよ。きれいだったよ。
 ライトがついた瞬間、舞台にきれいな人がいる、スターさんがいる、と素直に思えた。

 新公主演を経験して、チェックポイントとして通過して、これからどう変わっていくのかが、とても楽しみだ。


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