『ロミジュリ』が忙しいわたしですが、そのかくんの『Dancing Heroes!』ははずせません、行ってきました。
  
 そのかが、かっこよかった。

 も、このひとことに尽きる。
 桐生園加というタカラジェンヌがいること、ダンサーがいること。
 そのことを感謝し、誇りに思う、そういう公演だった。

 学年を考えても当然のことなんだが、他の出演者とそのかとの格差がすごい。
 ただ踊れている、ということと、空間を牽引する・客席を掌握する「スター」との違いを見せつけてくれた。

 バウ公演は新しい出会いの場、下級生をおぼえて帰るぞー!という意気込みもあったんだが、途中で完敗宣言、無理。
 そのか見てるだけで、いっぱいいっぱい。

 複数回観られるならそれもアリだけど、チケット1枚しかないなら、もうここはそのかを見よう、そのかに酔おう。それこそ本望ってもん。
 や、それでも第一目標の「せめて男の子たちだけでも、全員顔を見分ける・おぼえる」は達成したのでヨシとしよう(笑)。
 
 バウで行われたダンス公演、『Young Bloods!!』や『ハロー!ダンシング』も全組観てきたけれど、今回のような確固たる「スター!」の率いる公演ではなかった。
 スターが主役を務める、通常のバウ公演。
 構成演出も通常公演っぽいというか、「所詮ワークショップ」という甘えのない真っ向勝負なものに思えたけれど、これは単に演出家のちがい?
 ハコがバウであるということを除けば、ふつーに大劇場でやっているショーの感覚で観られた……演出的に。

 ええ、そのためでしょうか。

 主役は、歌も歌わなければならない(笑)。

 ダンス公演だし! ふつーのヅカショーぢゃなくてもいいんだし!
 誰もそのかの歌に期待してないんだし!

 何故、歌わせる(笑)。

 タカラヅカ・ショーというテンプレートには、「ここでこうスターがばーんと出てきて、出てきたらまず主題歌歌って」とか書き込まれているのね。それ以外はナイのね。
 だからものすごーくかっこよく登場! かっこよく踊るそのかさん!が、……歌い出すので、もお、大変。

 その落差の大きさときたら(笑)。

 踊るそのかがめちゃくちゃかっこいい、素敵すぎるだけに、歌い出した瞬間のとほほぶりに椅子に沈み込んじゃうよ(笑)。

 歌は宇月くんに任せるとか、全部録音にしておくとか、方法はあるだろーに、「タカラヅカだから!」とテンプレ重視。
 や、そこがタカラヅカの愛しいところであり、そのかの愛しいところでもある。

 何故そのかに歌わせるのか。
 これが外部なら絶対彼は寸劇の台詞以外に声を出すことなく、踊りだけだよね。陳腐な歌よりはるかに、そのダンスで言葉を表現できるのだから。

 だけど歌う。
 決してうまくない……ぶっちゃけかなりとほほな歌を。

 でもそれが「タカラヅカ」。
 この公演はダンス・パフォーマンスを観に来る公演ではなく、タカラヅカスター・桐生園加を見に来る公演だから。
 そのかが歌うことで作品のクオリティが下がってもかまわない、彼が歌も踊りも務めることでそのか主演公演としてのクオリティが増すならば。
 観点の違い。作品クオリティより、スターの見せ場重視。
 それが正しいとか間違っているとかいう次元じゃない、それが前提、それが「タカラヅカ」。

 プロ歌手の素晴らしい歌唱と楽曲のテープを流してそれに合わせて無言で踊るよりも、ヅカスタッフの手によるチープな曲と詞をとほほな歌声でスターが歌いながら踊るのが、タカラヅカ。
 それが、愛しい。

 なんでそのかに歌わせるかなー、黙って踊らせときゃいいじゃん。と、幕間も終幕後も仲間内で言い合うけれど、だからといってそのかの歌を否定する人はいないと思うんだ。
 あの歌声も含めて「そのか」だから。

 てゆーかプログラムの写真も含め、踊るそのかがかっこよすぎて、美しすぎて、歌でもなけりゃ、やってられないよ?

 この人完璧?! 神?! な勢いを、歌うことで「ああ、完全無欠な人なんていないのね」とほっこりさせてくれるってゆーか。

 手の届かない神々しい人が、一気に近しい存在になるというか。

 そのギャップにいちいちきゅんと来ます(笑)。

 下級生たちも良かったしがんばっていたし、発展途上の彼らを率いて公演を打つことに意義があるのもわかってるけれど、もう少しスキルのある人たちでこの公演を観てみたかったなと、特に「タカラヅカ」スキルが必要な場面を観ると思いました。
 ダンスの善し悪しだけなら文化祭や発表会でもいいの、でもここタカラヅカだから、という。
 フロックコートの男たちが妖しく絡む場面なんかもお、女子校の文化祭を観る気恥ずかしさに満ちていて、もおどうしようかと(笑)。耽美な萌え場面なんだろうけど、萌える以前だわ、男役としての技術(ハッタリ含む)が足りていない人たちで観ると。
 それも含めて、大満足の公演なんだけどね(笑)。

 宇月くんがいてくれて良かった。彼ひとり、他の子たちと一線を画していた。いろんな意味で。まんちゃんも踊っているときは安心。

 ラストの「奇跡」はそのか自身の振付らしい。
 予備知識なく観ていたんでそんなことは知らなかったが、観ながら「そうにちがいない」と思った。すごーく創作ダンスっぽいというか(高校時代のダンスの授業を思い出した)、スカステの『ダンス魂』でそのかが踊っていた創作ダンスとテイストが激似だったので。

 そのかのこの公演に対する意気込み、熱意のすごさがわかる。

 全編通してものすごーい「サヨナラ公演」演出で、あまりに際立って「サヨナラ」なので、チガウ意味でとまどう。

 これが2番手以上の公演なら、「ああ、次で卒業なんだ。トップスター以外は事前に告知できないから発表されていないだけで、これがサヨナライベントなのね」と思えるけれど。
 そのかはそうじゃないし。
 ここ20年ほどの間で、サヨナライベント公演をしたのは、トップスターのみ。新専科の樹里ちゃんは日生劇場主演したけれど、作品ありきで樹里ちゃん個人のイベント公演ではなかったし。
 たかちゃんの『W-WING-』とか、ワタさんの『Across』とかコム姫の『アルバトロス、南へ』とか、かしちゃんの『I have a dream』とか、そーゆーの。
 ゆみこですら、DSがあったのみで、イベント公演はなかった。

 立場的にサヨナラ公演作ってもらえる人ではないので、あまりに「サヨナラ」一色なのでとまどう。
「そのかだから、『ナニか感動的なものを』って考えたら、サヨナラっぽくなっちゃったんじゃね?」
 とか、友人たちと話してましたが。

 集大成とサヨナラは、たしかに似ているので(卒業するスターは大抵インタビューで「男役**の集大成をお見せします」とか言う)、それでこんなことになっちゃった……というオチであることを、心から祈る。

コメント

日記内を検索