世界の全てが今、音を立てて崩れて行く・1。@ロミオとジュリエット
2011年1月11日 タカラヅカ それは、まっつの声の調子の悪い日のことで。
前日からファルセットがなくなり、見守るファンも心穏やかでなかった日。
実際歌声は抑え気味というか、いつもの心地よいクリアさに不意にざらつきが混ざったり、のびるはずのところで不用意にオチたりしていた。
もちろんファルセットもなかったし、聴かせどころのソロ「どうやって伝えよう」の最後の歌い上げの音が下がっていたりした。
相当キツイんじゃないかコレ、と、まっつの中の人の心配を、マジにした。
といっても、台詞声はふつーだし、歌だってリピートして通常時の歌声が耳に焼き付いているから「あれ?」と思うだけで、初見の人には不調なんてわからないだろうレベル。
いちばんわかりやすいファルセットの有無だって、「へえ、こうまとめるのか」と、その違和感のない終わらせ方に感心したほどだ。
(後日、ちゃんとファルセットで歌い、なんの問題もなく美声を響かせているそうなので、この2日だけだったらしい)
生身の人間の生の舞台だから、いろいろある。
観ているこちらも、そのときどきによって違った受け止め方をするし。
だからコレは、このとき限定だったのかもしれない。
調子が悪いから勢い任せにガンガン飛ばしていく、とかそーゆー選択肢は最初からなかった結果なのかもしれない。
中の人の都合はわからないが、とりあえずわたしは1観客として、舞台上に見えるモノがすべて。
その日の『ロミオとジュリエット』、ベンヴォーリオ@まっつは、いつもにもまして、抑えの効いた人に見えた。
激しさがなく……まとっている空気に熱はあるのに、声のトーンは抑えられていて。
2幕の最初の方、ロミオ@キムの裏切りを責めるベンヴォーリオとマーキューシオ@ちぎの場面で。
激昂するマーキューシオの横で、ベンヴォーリオは。
かなしそうだった。
言っていること自体は強い、キツイ、脚本通り。いつものように、ロミオを責めている。
なのに、そこに怒りの表情はなくて。
抑え気味の声、熱のこもった言葉、責める、詰問する歌、まっすぐな眼差し。
でもそこに浮かんでいるのは、哀しい表情。
責めながら詰問しながら、泣きそうな顔をしている。
今までだって、怒りにまかせて責めているのではなく、友人を心配して説得しようとしているのがベンヴォーリオだった。
怒りに過剰反応するマーキューシオや、他の人々の中で。
哀しいベンヴォーリオ。
怒りより不信より、悲しみなんだ……傷ついているんだ……。そういう、人なんだ……。
哀しい顔で、でも強い言葉で親友を責める姿に、泣けた。
ベンヴォーリオの痛みが、鋭角に突き刺さった。
強いからこそ、そこに満ちる悲しみが痛い。つらい。
そうやって痛々しい姿を見せていたから、次の場面でベン様が笑いながら登場して「おおっ、笑ってる!」とびっくりした。(いや、デフォルトですから)
でもベンマーコンビは、毛を逆立てたティボルト@ヲヅキの姿を認めて、一気に表情を改める。
そして「決闘」場面になる。
挑発するマーキューシオ、苛つき臨界点突破のティボルト。
ひとり離れたところに坐り込んで、なりゆきを眺めているベンヴォーリオの横顔が……かなしげに見えた。
もちろん冷笑したりウザそうにしたりと、いつものことは一通りしているんだけど。
冷え冷えとした眼差しが、ふと寂しげに見えて。愁いを帯びているように見えて。
こうやってティボルトと、キャピュレットたちとぶつかるのは、ベンヴォーリオたちの「日常」。生まれたときから敵のいた彼らは、こうやって生活してきた。
親友ロミオがやったことは、この「日常」を破壊することだ。否定することだ。
ベンヴォーリオにとっては大切な仲間、日常なのに。
親友だと思っていた男は、それを否定した。
「君たちを愛している。でも彼女への愛はもっと深い」……俺たちをアイシテル? そんなの言い訳じゃん。
マーキューシオみたいに怒りに転嫁して発散も出来ない……だからベンヴォーリオはひとり離れたところにいる。
冷えた目つきで騒ぎを眺め、嗤い、ふと、哀しい瞳をする……。
冷静なベンヴォーリオが、出遅れている。
ティボルトの様子がいつも違うこと、狂気じみていること……もっと早く察するべきだ、そしてマーキューシオを止めるべきだった。
シャレにならない空気の中、元凶のロミオが飛び込んで来、説教なんかはじめるからティボルトの狂気はさらに加速。ティボルトの怒りはマーキューシオにも火を付ける。
哀しい目で沈黙していたベンヴォーリオも乱闘に加わりながら、積極的な戦いではなく、制止する目的で動く……いつものように。
そしてロミオの言葉に耳を傾ける。
哀しい顔はしない。
親友をまっすぐに見つめる。
力強い歌声を返す。
あ、哀しくなくなった……と、思った矢先に。
マーキューシオが、刺される。
せっかく、立ち直ったのに。
ロミオに裏切られた傷、捨てられた悲しみ、否定された痛みから、愛ゆえに立ち直ったのに。親友を赦し、彼の心ごと受け入れようとしたのに。
続く。
前日からファルセットがなくなり、見守るファンも心穏やかでなかった日。
実際歌声は抑え気味というか、いつもの心地よいクリアさに不意にざらつきが混ざったり、のびるはずのところで不用意にオチたりしていた。
もちろんファルセットもなかったし、聴かせどころのソロ「どうやって伝えよう」の最後の歌い上げの音が下がっていたりした。
相当キツイんじゃないかコレ、と、まっつの中の人の心配を、マジにした。
といっても、台詞声はふつーだし、歌だってリピートして通常時の歌声が耳に焼き付いているから「あれ?」と思うだけで、初見の人には不調なんてわからないだろうレベル。
いちばんわかりやすいファルセットの有無だって、「へえ、こうまとめるのか」と、その違和感のない終わらせ方に感心したほどだ。
(後日、ちゃんとファルセットで歌い、なんの問題もなく美声を響かせているそうなので、この2日だけだったらしい)
生身の人間の生の舞台だから、いろいろある。
観ているこちらも、そのときどきによって違った受け止め方をするし。
だからコレは、このとき限定だったのかもしれない。
調子が悪いから勢い任せにガンガン飛ばしていく、とかそーゆー選択肢は最初からなかった結果なのかもしれない。
中の人の都合はわからないが、とりあえずわたしは1観客として、舞台上に見えるモノがすべて。
その日の『ロミオとジュリエット』、ベンヴォーリオ@まっつは、いつもにもまして、抑えの効いた人に見えた。
激しさがなく……まとっている空気に熱はあるのに、声のトーンは抑えられていて。
2幕の最初の方、ロミオ@キムの裏切りを責めるベンヴォーリオとマーキューシオ@ちぎの場面で。
激昂するマーキューシオの横で、ベンヴォーリオは。
かなしそうだった。
言っていること自体は強い、キツイ、脚本通り。いつものように、ロミオを責めている。
なのに、そこに怒りの表情はなくて。
抑え気味の声、熱のこもった言葉、責める、詰問する歌、まっすぐな眼差し。
でもそこに浮かんでいるのは、哀しい表情。
責めながら詰問しながら、泣きそうな顔をしている。
今までだって、怒りにまかせて責めているのではなく、友人を心配して説得しようとしているのがベンヴォーリオだった。
怒りに過剰反応するマーキューシオや、他の人々の中で。
哀しいベンヴォーリオ。
怒りより不信より、悲しみなんだ……傷ついているんだ……。そういう、人なんだ……。
哀しい顔で、でも強い言葉で親友を責める姿に、泣けた。
ベンヴォーリオの痛みが、鋭角に突き刺さった。
強いからこそ、そこに満ちる悲しみが痛い。つらい。
そうやって痛々しい姿を見せていたから、次の場面でベン様が笑いながら登場して「おおっ、笑ってる!」とびっくりした。(いや、デフォルトですから)
でもベンマーコンビは、毛を逆立てたティボルト@ヲヅキの姿を認めて、一気に表情を改める。
そして「決闘」場面になる。
挑発するマーキューシオ、苛つき臨界点突破のティボルト。
ひとり離れたところに坐り込んで、なりゆきを眺めているベンヴォーリオの横顔が……かなしげに見えた。
もちろん冷笑したりウザそうにしたりと、いつものことは一通りしているんだけど。
冷え冷えとした眼差しが、ふと寂しげに見えて。愁いを帯びているように見えて。
こうやってティボルトと、キャピュレットたちとぶつかるのは、ベンヴォーリオたちの「日常」。生まれたときから敵のいた彼らは、こうやって生活してきた。
親友ロミオがやったことは、この「日常」を破壊することだ。否定することだ。
ベンヴォーリオにとっては大切な仲間、日常なのに。
親友だと思っていた男は、それを否定した。
「君たちを愛している。でも彼女への愛はもっと深い」……俺たちをアイシテル? そんなの言い訳じゃん。
マーキューシオみたいに怒りに転嫁して発散も出来ない……だからベンヴォーリオはひとり離れたところにいる。
冷えた目つきで騒ぎを眺め、嗤い、ふと、哀しい瞳をする……。
冷静なベンヴォーリオが、出遅れている。
ティボルトの様子がいつも違うこと、狂気じみていること……もっと早く察するべきだ、そしてマーキューシオを止めるべきだった。
シャレにならない空気の中、元凶のロミオが飛び込んで来、説教なんかはじめるからティボルトの狂気はさらに加速。ティボルトの怒りはマーキューシオにも火を付ける。
哀しい目で沈黙していたベンヴォーリオも乱闘に加わりながら、積極的な戦いではなく、制止する目的で動く……いつものように。
そしてロミオの言葉に耳を傾ける。
哀しい顔はしない。
親友をまっすぐに見つめる。
力強い歌声を返す。
あ、哀しくなくなった……と、思った矢先に。
マーキューシオが、刺される。
せっかく、立ち直ったのに。
ロミオに裏切られた傷、捨てられた悲しみ、否定された痛みから、愛ゆえに立ち直ったのに。親友を赦し、彼の心ごと受け入れようとしたのに。
続く。
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