すべての不幸は彼からはじまる。@ロミオとジュリエット
2011年2月6日 タカラヅカ 舞台の上には、死@咲ちゃんがいる。
タカラヅカ版『ロミオとジュリエット』には、象徴的に死と愛@せしるが踊っている。
だけど。
それとは別に、ほんとうの「死」は、マーキューシオではないのか?
マーキューシオ@ちぎはトラブルメーカー。悲劇の発端は、いつだって彼だ。
仮面舞踏会へ行こうと誘い、それによってロミオ@キムとジュリエットが出会ってしまう。
ティボルト@ヲヅキに殺されることで、ロミオが復讐し、ヴェローナを追放になる。
いつだって、きっかけはマーキューシオ。
とまあ、これは周知のことで今さら確認することでもない。
それとは別の部分。
ストーリーのキーとなる出来事として、まず「ティボルトがマーキューシオを殺害」というのがある。これは原作にある通り。
でもこのヅカ版ではティボルトはジュリエットを愛していて、彼女がロミオに奪われたためロミオに対し殺意を持った、という流れになっている。
おかしいじゃん。ティボルトが殺そうとしたのはロミオ、なのに何故マーキューシオが殺される?
「決闘」場面ではロミオもいるのに、積極的に闘っているのはティボとマーさんだ。ティボはマーさんを挑発するのに忙しくてロミオなんか眼中にない感じ。ロミオを羽交い締めにしてマーさん煽るとか、そんなことしてるヒマがあったらとっととロミオ殺せよっていう。
ティボルトのロミオへの憎しみは、ぶっちゃけモンタギュー関係ないんだよね。
ふたつの家が長年争っていて、それによって若者たちが殺し合うことになった……つーストーリーの大筋とは無関係。
ただの失恋逆ギレだもん。
相手がロミオでなくても、ティボルトは殺意を持ったと思う。それこそパリス@ひろみでも。政略結婚であてがわれたのではなく、ジュリエット自身が心から愛する男と結ばれる、てなことになれば、ティボルトはやはりキレていただろう。
ティボルトはそこまで、追いつめられていた。
ロミオが原因ではなく、代々続く憎しみの連鎖に囚われ歪んでいく自分自身に。ジュリエットを救いとしていた、彼女を愛することでなんとか現実と折り合いをつけていた……のだから、最後の砦を失ったときに彼は破滅するしかなかった。
では、ティボルトを狂わせた「憎しみ」とはなにか。
ろくに口をきいたこともない、話に聞くだけのヴァーチャルな存在に対し憎しみを発酵させていたんだろうか?
もちろん「反モンタギュー教育」を生まれる前からほどこされ、洗脳されて育ったんだから、嫌悪し憎んでいるのだろうけど。
話で聞くだけでなく、日常の中で実際にモンタギューを憎む、積み重ねがあったんじゃないか。
体験に勝る教育はないですよ。
「悪い奴らだ」とただ聞かされるより、実際にそいつらに悪いことをされたら、実感を伴って納得するじゃないですか、「本当に、悪い奴らだ」と。
ティボルトを日々苛つかせ、憎しみを煽っていたのは、マーキューシオじゃないの?
ええ、ティボルトに感情移入して見ると、マーキューシオがちょうウザいんだわ。ムカつくんだわ(笑)。
むっきーっ、て感じでアタマにくる。だからケンカになることを、納得してしまう。
ドラゴンをやっつけるヒーローを夢見る、ふつーの男の子だったティボルトを、歪ませてしまった憎しみの直接的原因は、マーキューシオじゃないのか。
ムカつくヤツがいる、だから殴る。……ふつーはここで大人が止める、叱る。ムカついたからといって暴力はいけません、人はひとりずつチガウのだから、あなたがムカつくからといって相手が悪いとは限りません、他人を理解し許し合いましょう。
しかしモンタギューとキャピュレットの確執ゆえに、大人は誰も止めない、どころか煽る。ムカついたのは正しい、だってアナタは正義、相手は悪、悪を攻撃するのは正しい、さあ暴力を!!
大人たちの洗脳によって、少年は戦士となる。正義の名の下に暴力を行使する、歪んだ戦士に。
それってチガウんじゃないかな、と聡明なティボルトが首を傾げることがあっても、目の前にムカつくマーキューシオがいて、わんわん吠えている。うざいから思考をやめて、とりあえず殴る。
その繰り返し。
そんな習慣づけで成長したティボルトはもう、自分を止めることが出来ない。ムカついたら殴る。即暴力、即ナイフ。
おかしい、と思っても止められない。マーキューシオを見たら攻撃せずにはいられない。
ロミオへの殺意は、ただの記号でしかない。
ロミオでなくてもいいのだから。
それがパリスだったとして、パリスを殺すということは、ティボルトはもうすべてを捨て、愛するジュリエットさえ捨て、死へ向かって走り出したということ。
「本当の俺じゃない」と苦しんでいた彼は、「偽りの世界」を破壊し尽くし、滅びようとした。
だからこそ。
ティボルトの刃は、マーキューシオに向かう。
ティボルトを病ませていたのは、モンタギューへの憎しみ。大人たちの教育を基盤に、実体験を重ねて燃え上がった。
その現実の憎しみ相手……マーキューシオ。
ティボルトを壊した、憎しみの権化。憎しみの象徴。
だから仇のロミオを前にしても、ティボルトはロミオなんか眼中になく、マーキューシオを挑発する。マーキューシオと闘う。
すべての不幸は、マーキューシオからはじまった。
仮面舞踏会にロミオを誘ったのも、ロミオに殺人をさせたのも。
だがそれ以前に、ティボルトの人格を壊すほどの憎しみを与え続けた。なにかしら特別なことではなく、日々の蔑みや嘲笑、暴力で。
でもそれは、マーキューシオにとっても同じ。
ほんとのところ、マーさんもまた憎しみに支配された自分たちに疑問は持っている。
自分が死ぬのはティボルトに刺されたからというよりも、両家の憎しみゆえであると。
死の間際に彼は本心を吐露する。
憎しみに踊らされる現実を受け入れ、それゆえある意味道化を演じていたことを。
それらを打破するために、ロミオにジュリエットを愛し抜けと告げる。
ティボルトにとってのマーキューシオ、マーキューシオにとってのティボルトは、同じだった。
大人たちの洗脳と、等身大の現実としての憎しみ相手。
死@咲ちゃんにふたりそろって翻弄されて、ロミオの前に現れるように。等しいふたり。
ただマーキューシオにはロミオとベンヴォーリオ@まっつがおり、ティボルトほど追いつめられていなかった。友だち偉大。
てことで。
ティボとマーさんが同じだったとしても、悲劇の口火を切るのはぼっち星人のティボ。
ティボを苛つかせるのはマーさん。ロミオは言い訳。
すべての悲劇は、マーキューシオから。
マーさんこそが、「死」。
彼こそが、ヴェローナに巣くう「憎しみ」の具現。
マーキューシオ自身にはそんなつもりも悪意もない。
彼はふつーにかわいい、ありがちな不良少年だ。彼はただ自分の人生を、彼らしく生きている。
でもそれゆえに、それこそが、「死」。
悪意なんか、自覚なんか、あるわけないよ、「死」に。
ただ、そこに「在る」ものだもの。
タカラヅカ版『ロミオとジュリエット』には、象徴的に死と愛@せしるが踊っている。
だけど。
それとは別に、ほんとうの「死」は、マーキューシオではないのか?
マーキューシオ@ちぎはトラブルメーカー。悲劇の発端は、いつだって彼だ。
仮面舞踏会へ行こうと誘い、それによってロミオ@キムとジュリエットが出会ってしまう。
ティボルト@ヲヅキに殺されることで、ロミオが復讐し、ヴェローナを追放になる。
いつだって、きっかけはマーキューシオ。
とまあ、これは周知のことで今さら確認することでもない。
それとは別の部分。
ストーリーのキーとなる出来事として、まず「ティボルトがマーキューシオを殺害」というのがある。これは原作にある通り。
でもこのヅカ版ではティボルトはジュリエットを愛していて、彼女がロミオに奪われたためロミオに対し殺意を持った、という流れになっている。
おかしいじゃん。ティボルトが殺そうとしたのはロミオ、なのに何故マーキューシオが殺される?
「決闘」場面ではロミオもいるのに、積極的に闘っているのはティボとマーさんだ。ティボはマーさんを挑発するのに忙しくてロミオなんか眼中にない感じ。ロミオを羽交い締めにしてマーさん煽るとか、そんなことしてるヒマがあったらとっととロミオ殺せよっていう。
ティボルトのロミオへの憎しみは、ぶっちゃけモンタギュー関係ないんだよね。
ふたつの家が長年争っていて、それによって若者たちが殺し合うことになった……つーストーリーの大筋とは無関係。
ただの失恋逆ギレだもん。
相手がロミオでなくても、ティボルトは殺意を持ったと思う。それこそパリス@ひろみでも。政略結婚であてがわれたのではなく、ジュリエット自身が心から愛する男と結ばれる、てなことになれば、ティボルトはやはりキレていただろう。
ティボルトはそこまで、追いつめられていた。
ロミオが原因ではなく、代々続く憎しみの連鎖に囚われ歪んでいく自分自身に。ジュリエットを救いとしていた、彼女を愛することでなんとか現実と折り合いをつけていた……のだから、最後の砦を失ったときに彼は破滅するしかなかった。
では、ティボルトを狂わせた「憎しみ」とはなにか。
ろくに口をきいたこともない、話に聞くだけのヴァーチャルな存在に対し憎しみを発酵させていたんだろうか?
もちろん「反モンタギュー教育」を生まれる前からほどこされ、洗脳されて育ったんだから、嫌悪し憎んでいるのだろうけど。
話で聞くだけでなく、日常の中で実際にモンタギューを憎む、積み重ねがあったんじゃないか。
体験に勝る教育はないですよ。
「悪い奴らだ」とただ聞かされるより、実際にそいつらに悪いことをされたら、実感を伴って納得するじゃないですか、「本当に、悪い奴らだ」と。
ティボルトを日々苛つかせ、憎しみを煽っていたのは、マーキューシオじゃないの?
ええ、ティボルトに感情移入して見ると、マーキューシオがちょうウザいんだわ。ムカつくんだわ(笑)。
むっきーっ、て感じでアタマにくる。だからケンカになることを、納得してしまう。
ドラゴンをやっつけるヒーローを夢見る、ふつーの男の子だったティボルトを、歪ませてしまった憎しみの直接的原因は、マーキューシオじゃないのか。
ムカつくヤツがいる、だから殴る。……ふつーはここで大人が止める、叱る。ムカついたからといって暴力はいけません、人はひとりずつチガウのだから、あなたがムカつくからといって相手が悪いとは限りません、他人を理解し許し合いましょう。
しかしモンタギューとキャピュレットの確執ゆえに、大人は誰も止めない、どころか煽る。ムカついたのは正しい、だってアナタは正義、相手は悪、悪を攻撃するのは正しい、さあ暴力を!!
大人たちの洗脳によって、少年は戦士となる。正義の名の下に暴力を行使する、歪んだ戦士に。
それってチガウんじゃないかな、と聡明なティボルトが首を傾げることがあっても、目の前にムカつくマーキューシオがいて、わんわん吠えている。うざいから思考をやめて、とりあえず殴る。
その繰り返し。
そんな習慣づけで成長したティボルトはもう、自分を止めることが出来ない。ムカついたら殴る。即暴力、即ナイフ。
おかしい、と思っても止められない。マーキューシオを見たら攻撃せずにはいられない。
ロミオへの殺意は、ただの記号でしかない。
ロミオでなくてもいいのだから。
それがパリスだったとして、パリスを殺すということは、ティボルトはもうすべてを捨て、愛するジュリエットさえ捨て、死へ向かって走り出したということ。
「本当の俺じゃない」と苦しんでいた彼は、「偽りの世界」を破壊し尽くし、滅びようとした。
だからこそ。
ティボルトの刃は、マーキューシオに向かう。
ティボルトを病ませていたのは、モンタギューへの憎しみ。大人たちの教育を基盤に、実体験を重ねて燃え上がった。
その現実の憎しみ相手……マーキューシオ。
ティボルトを壊した、憎しみの権化。憎しみの象徴。
だから仇のロミオを前にしても、ティボルトはロミオなんか眼中になく、マーキューシオを挑発する。マーキューシオと闘う。
すべての不幸は、マーキューシオからはじまった。
仮面舞踏会にロミオを誘ったのも、ロミオに殺人をさせたのも。
だがそれ以前に、ティボルトの人格を壊すほどの憎しみを与え続けた。なにかしら特別なことではなく、日々の蔑みや嘲笑、暴力で。
でもそれは、マーキューシオにとっても同じ。
ほんとのところ、マーさんもまた憎しみに支配された自分たちに疑問は持っている。
自分が死ぬのはティボルトに刺されたからというよりも、両家の憎しみゆえであると。
死の間際に彼は本心を吐露する。
憎しみに踊らされる現実を受け入れ、それゆえある意味道化を演じていたことを。
それらを打破するために、ロミオにジュリエットを愛し抜けと告げる。
ティボルトにとってのマーキューシオ、マーキューシオにとってのティボルトは、同じだった。
大人たちの洗脳と、等身大の現実としての憎しみ相手。
死@咲ちゃんにふたりそろって翻弄されて、ロミオの前に現れるように。等しいふたり。
ただマーキューシオにはロミオとベンヴォーリオ@まっつがおり、ティボルトほど追いつめられていなかった。友だち偉大。
てことで。
ティボとマーさんが同じだったとしても、悲劇の口火を切るのはぼっち星人のティボ。
ティボを苛つかせるのはマーさん。ロミオは言い訳。
すべての悲劇は、マーキューシオから。
マーさんこそが、「死」。
彼こそが、ヴェローナに巣くう「憎しみ」の具現。
マーキューシオ自身にはそんなつもりも悪意もない。
彼はふつーにかわいい、ありがちな不良少年だ。彼はただ自分の人生を、彼らしく生きている。
でもそれゆえに、それこそが、「死」。
悪意なんか、自覚なんか、あるわけないよ、「死」に。
ただ、そこに「在る」ものだもの。
コメント