私は名もなきキャピュレット家の者です。
 この小さな胸にしまい込むことができない、ある秘密を聞いてください。王様の耳はロバの耳、ここではき出すことで封印したいのです。

 キャピュレット家の次期当主、後継者のティボルト様は、いつもナイフを持っていらっしゃいます。
「俺には軍神マルスがついている」
 そう言ってナイフをかざして見せたり。
 荒々しくも魅力的な、頼もしい方です。

 でも、あの。
 見てしまったんです。

「なあ、マルス。マーキューシオのヤツ、マジでムカつくよな。今度こそがつんとやらなきゃだよな。ん、お前もそう思うか」

 ティボルト様が、ナイフに語りかけているのを!
 てゆーか、ナイフと会話してらっしゃるんです、ナチュラルに、ふつーに、日常的に。

「ジュリエットはピンクが似合うよなあ。うんうん、そうだろ。……えー、ナニ言ってんだ、バカだなあ。ははは」

 「軍神マルスがついてる」って、比喩じゃなくて、ほんとにあのナイフが「軍神マルスくん」なんです、名前なんです、いつも一緒の友だちなんです。

 あの人ほら、友だちいないから。ぼっちだから。
 子どもの頃からいつもひとりで「ヒーローごっこ」とかしていたけれど。
 あのトシでソレって……あの図体で、あのキャラで……。

 ……秘密ですよ?! こんなことを喋ったとわかったら、殺されます! あの人クソ真面目でシャレとかツッコミとか、ぜんぜん受け入れられないんですから!!
 ああでも、黙っていられなくて! 王様の耳はロバの耳!

 今日もひとりで、「マルスくん」に話しかけてますよ。
 友だち、できるといいですね。
 人間の。


               ☆

 えー、愛してやまない、雪組版『ロミオとジュリエット』のあれやこれや。

 なんか機嫌良く週3日ペースで通ってしまったので、その間いろいろ思うところあり。

 出演者たちが日を追うごとに生き生きとその世界で息づいていくさまを楽しく眺めたり、また声が嗄れていくことにハラハラしたり。

 台詞噛んじゃう・間違えちゃうNo.1は、わたしが観ているときに限って言えば、ぶっちぎりで乳母@コマくんでした(笑)。
 てゆーかキミ、噛まずに終われる日は来るのか?と思うくらい、毎回なにかしらやらかしてくれた。
 でも公演後半は噛まなくなってた。

 コマくん、なんでお化粧変えちゃったのかなあ。
 初日と翌日ぐらいまではおてもやんだったのが、濃いめのチークなだけになり、公演が進むにつれそれすら薄くなり、顔だけ見てるとふつーにきれーなおねーさんになっていった。カラダはおでぶのままなんだけど。
 初日のおてもやんも好きだったんだけどなあ。男役が乳母だと、ここまで汚していいものなのか、と。

 乳母の言い間違いで愉快だったのは、ロミオ@キムくんとはじめて会ったときに、彼のカラダを触り、「うん、逞しいわ」と言うところ。
 「たくましいわ」が正解なのに、「たのもしいわ」と言っちゃったんだな。
 間違いじゃない。間違いじゃないんだけど。

「ちえちゃんなら『たくましい』だけど、ケイちゃんだからそれはまずいと思って『たのもしい』にしたのかと思った」
 と、その回を観た友人が真顔で言っていたよーに、ソコを変えてしまうと星組版との差異がええっと。
 キムくんだって、たくましいと思う。うん。

 乳母のソロは大変なんだなあと思う。
 コマは歌える人なのに、あの音域は相当難しいんだな。新公は娘役で歌ウマのさらさちゃんがやっていたけれど、彼女もまた高音と低音の両方は出なかった。
 コマ乳母は地声で高音まで無理から出していたので、いつ声が途切れるかハラハラしっぱなしだった(笑)。
 そして、公演が進むにつれ……やばくなっていった、歌。音程とか声量とか、もういろいろと。
 それでも、彼女の歌声が好きだ。
 乳母はコマくんでなきゃ!と思う。

 千秋楽の3日前くらいだったかな、乳母が裏声でソロを歌っていたときがあって。
 びっくりしたよ、え、なんで?と。裏声使うことにしたんだ? と思ったら、それ1回きりで、そのあとはまた地声で歌うようになっていた。
 チャレンジしてみて、やっぱり違ったのかな。

 
 公演を通してキャラクタ変わったかなーと思ったのは、神父@にわさん。
 最初はほんとエマくみちょの台詞回しまんまで首を傾げてたんだけど、どんどんにわさんの神父になっていった。
 エマさんのあのひょうひょうとした感じはエマさんだからであって、にわさんはチガウよなー。
 変に奇をてらわず、ふつーにおじーさんっぽくしているときが好きだった。わりとその日によってチガウんだけど。
 枯れてる方が好みだよー。

 
 マーキューシオ@ちぎくんが「歌劇」や「BINGO」で自ら告白していたナイフ落とし事件やナイフ忘れて絞殺未遂事件は、わたしは観ていない。

 マーさんの失敗でわたしのツボにはまったのは、ちょっとした言い間違い。

 「決闘」場面にて、マーさんはティボルト@ヲヅキに「キャピュレットの貴公子のお出ましだぜ」と声を掛ける。
 んで「モンタギューの飼い犬か。ロミオはどこだ」「色男が女あさりに飽きたのか」とつながるわけだ。

 この「キャピュレットの貴公子」を、ちぎくんが「キャピュレットの色男のお出ましだぜ」と言い間違えた。
 んでもう一度そのあとに、「色男が女あさりに飽きたのか」と言う。

 大切なことだから2回言ったんですね。
 ティボルトは色男。ティボルトは色男。

 いやその、ティボルトがかなめくんならいいんですよ、でもほら、ヲヅキさんじゃないですか。
 ご本人がすでに「最初は色気を出そうと考えてたけど、ソレはもういいかと思うようになった」と語っておられる、色気より人間臭さのティボルトさんですよ。

 2回言われてもねー(笑)。

 マーさんはティボルトを色男だと思ってるんだー。ふふふ。
 や、いいですな、ティボ×マー。(かけ算はやめなさい)

 わたしはティボ×ベン一押しですが。(だからかけ算は……)
 さらに言うと、ティボ×ベン→マーだったりするんですが。(数式はもっとやめなさい)


 そーいやベン様@まっつ、「綺麗は汚い」の場面の最初、ヒメと踊らなくなったのはなんで?
 最初の方は振付?ってくらい必ず踊っていたのに、後半はナシだった。
 女ったらしのベンヴォーリオ様としては、ヒメはタラす相手に含まれないの??
 いやその、相手が相手なので、ベン様の方が食われちゃいそうでドキドキしていたことは、ナイショですよ(笑)。

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