『ロミオとジュリエット』、こあらった目線の見どころベンヴォーリオ@まっつ、続き。

 ヴェローナ殺人事件の公判中。
 被害者マーキューシオ@ちぎ。その加害者ティボルト@ヲヅキはロミオ@キムによって報復殺害。
 街の最高権力者大公閣下@しゅうくんを裁判長に、有力市民たちが見守る中、被疑者ロミオの罪を問う場面にて。

 公演の最初の方は、このあたりのベン様は照明の外になってしまって、モブにまぎれていた。
 や、端に行きすぎなのが悪いのかもしんないけど。主要人物なのに、顔が見えにくくなる、そこにいることがわかりにくくなるのはどうかと思った、演出。
 んで、突然ソロを歌い出すあたりでよーやくライトもらって、その唐突感を変だと思ってたんだけど、途中からどんだけ舞台の端に行っても彼がちゃんと見えるようになっていたから、ライトもらえるようになったんだと思う。……なんで最初からライトもらえなかったんだ、「ベンヴォーリオ」役なのに。
 端に行きすぎてたのがいかんかったんかなあ。

 なにはともあれ、彼は突然歌い出す。
「僕たちのせいじゃない」と。

 大人の前では「僕」のベン様萌え。

 仲間同士のときは「俺」なのに。
 大人相手だと、「僕」。
 ごく自然に使い分けているところが素敵。

 上手端から一気に下手端まで行って、ティボルトの亡骸のそばまで行く。
 モンタギュー側で、ただひとり。
 ティボルトのもとへ行く。

 哀切に満ちた眼差しをする。

 ずっとずっと、ライバルだった。
 ケンカ相手だった。

 ただの同族とかより、敵である彼は、近しい相手だった。
 「青春」を共有してきた相手なんだ。

 キャピュレット卿@ヒロさんとモンタギュー卿@ナガさんがそうであるように、壮年になるまでケンカしいしいつきあうと思っていた相手なんだ。

 ベンヴォーリオがすがるように手すりを握り、ティボルトを見つめ、哀しく歌いながら天を仰ぐ。
 その一連の動作が好き。(階段の手すりを握るまっつの手に萌えその2)

 だけどそんな彼の言葉も嘆きも、憎しみの前には意味をなさない。モンタギュー夫人@かおりちゃんに罵られ、周囲の赤チームの人々に憎しみと怒りのはけ口にされ、ベン様はびびって(笑)退場する。
 いやここほんと、彼がびくっとなるのがイイから(笑)。かおりちゃんこええ。
 おびえてるわけじゃないだろうけど、渾身の訴えをこれまた渾身の怒りで否定されたら、びくっとするわな。

 これらの間、ロミオくんは自分の世界。少しはベン様も振り向いてやってくださいよ……キミのために闘ってるんですよ(笑)。

 キャピュレット側から退散したベン様は、中央のロミオのもとへ行き……声も掛けられず肩も抱けず、力無くそばで見守る。
 それしかできない彼のまともさ。
 いっそここでスタンドプレイ、傷ついた親友を抱きしめて慰撫してやるだけの、周囲見えてない勢いがあればいいんだけど。
 たぶんベン様はそーゆーことはしない。相手の立場や空気を読んで、自制してしまう。「ひとりにしてくれ」と言われたらひとりにしてしまうように。

 またしてもロミオと同化しているらしく、大岡裁き……ぢゃねえ、大公閣下のお裁きの言葉ひとつひとつに反応。
 死罪で悲鳴、追放でも悲鳴……声あげるわけじゃないけど。

 処罰が決まったあとは、現実ではなくロミオのインナースペースに入る。

 だから、ロミオひとりを残してみなさんが「はー、やれやれ」と退場していく……わけじゃない。
 1幕にも似た場面があり、仮面舞踏会に行くと決定してみんな一斉に手のひらを返したかのよーにロミオから興味を失って去っていく……のも、現実にそういうことがあったのではなく、あそこでロミオの心情風景に切り替わっているだけのこと。

 現実にはベン様は、ロミオをひとりにしていないと思う。
 てゆーか、モンタギュー夫妻も。
 その後ロレンス神父@にわにわのところに懺悔に行くことになるにしろ、本日限りで永久追放なんだ、家族と別れを惜しんだろう。モンタギュー卿はしばらく遊んで暮らせるだけのお金を渡しただろうし。

 「僕は怖い」でマーキューシオとティボルトの亡霊と踊るように、あれは現実ではない場面。
 ロミオが闇の中へ引きずり込まれていく場面。

 だから。

 現実と闇との狭間で、最後にロミオに触れるのが、ベンヴォーリオなんだ。

 ロミオは泣きながらベンヴォーリオの名を呼ぶ。
 ベンヴォーリオもまた、ロミオに手をさしのべる。
 だけどふたりは引き離される。

 ベン様はロミオからナイフを渡されるのみで、ひとりで上手へ走り去っていく。

 ロミオは、ベンヴォーリオを呼んだのに。
 助けてくれと。

 ベン様はここでも、友を救えないんだ。
 マーさんを止められず、伸ばした手が空を切ったように。
 泣いて助けを求めるロミオを残して、手を伸ばし合っているのに救うことが出来ず、別れてしまうんだ。

 1幕の「僕は怖い」で、ロミオは歌っている。友だちが消え、世界が闇に閉ざされる恐怖を。
 ロミオにとって、彼を現世につなぎ止めておくモノが、友だち……マーキューシオとベンヴォーリオなんだ。
 マーキューシオは今もう闇の底でロミオを手招きし、ベンヴォーリオは救ってくれない。
 ロミオは、ひとりで堕ちていくしかない。

 ベン様は、放してしまった。
 手を。

 親友の手を。

 マーキューシオの手はベン様の手からすべり落ち、ロミオもまた。

 嘆きのまま、手を伸ばし見つめながらも、腰がすでに退場する準備って感じのベン様。
 ナイフ受け取って去る、という仕事を全うするベン様の中の人!

 ええい、ここでロミオを抱きしめて闇から守ってやれ!!と、しみじみ思いますよええ(笑)。
 ベン×ロミならここですな。いやその、逆ギレロミ×許容ベンでもいいですが。(ってナニが)

 
 このあとベン様はただ遊んでいたんじゃなく、大公閣下に取りなしを願い出たり、仲間たちのフォローに回ったり、忙しく働いていたと思う。
 何度も話題に出して恐縮だが、芝居の最後で大公閣下とベン様が親密そうなので、なにかしら接点があったんだろうなと。
 両家の憎しみを、争いを嘆き、和解させたいと願う両者だ、手を取り合っていても不思議はない。
 このへんで大公×ベンもアリですな。(だからナニが)

 
 続く。

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