星組の『ロミオとジュリエット』と、雪組の『ロミオとジュリエット』の、いちばん大きな違いはなんだろう?
 ハコもチガウし演出もチガウし、違っていて当然なんだけど、それにしても。

 わたし的にいちばん大きな違いは、「ロミオとジュリエットのラヴラヴ度」だと思っていた。
 星組版を観たときは、そりゃーもー、ロミオとジュリエットにめろめろだったさ。ちえねねが好きだ、ちえねねが好きだって、ふたりがしあわせそうにしている、愛を語っている、それだけでだーだー泣けて仕方なかった。

 ところが雪組版を観ても、そういう意味でのときめきは感じられなかった。
 天下のラヴロマンスなのに、ジュリエット役はふたりだしさ。トップスター・キムくんの相手役は決まってないしさ。
 星組で感じられた、トップコンビのお似合いぶり、ラヴラヴっぷりに没入する感覚、それが雪組にはなかったんだ。
 他のタイトルならそれでもいいのかもしれないけど、なにしろ『ロミオとジュリエット』だよ? 世界でもっとも有名なラブストーリーでなんで、主役カップルの恋愛に酩酊できないの?

 キムくんの持ち味的に、女の子にデレデレに恋愛するタイプじゃないしなあ。こんな状況じゃ、仕方ないか。
 そう思って、そのへんはあきらめていた面があったのだけど。

 雪組『ロミオとジュリエット』東宝千秋楽。

 ロミオ@キムとジュリエット@みみに、泣けた。

 ロミオとジュリエットが、ロミオとジュリエットであること。
 ふたりが出会い、恋に落ち、愛し合う。
 その過程のひとつひとつに熱いモノがこみ上げ、泣けて泣けて仕方なかった。

 バルコニー場面から泣きっぱなしですよ。
 ナニこいつら、かわいすぎる。
 ロミオの笑顔がきゅんきゅんする。

 ふたりがいじらしく、抱きしめたくなる。
 この恋を、このふたりを応援したいと思う。
 生きて、しあわせになるふたりを見たい。
 心から、そう思う。

 だから「私に勇気を下さい」と歌う乳母@コマにもさらに泣ける。
 感情移入半端ネェ。
 へたれるロミオに渇を入れ、立ち上がれと歌う神父@にわにわにも泣ける。
 救いたい、力になりたいんだ。

 神はまだ、見捨てていない。
 彼らを。わたしたちを。

 しあわせを欲し、愛を欲し、懸命にあがく。努力する。それらは無駄ではないはず。未来へ、希望へつながるはず。
 そう信じて。望んで。渇望して。

 キムみみが好きだ、キムみみが好きだ。
 ふたりがふたりで過ごし、歌い、踊る、それを見るのが好きだ。

 ジュリエットの強さと美しさ。
 これが「ジュリエット」ではない、別の女の子だったとしても、わたしはこの子が好きだ。
 そう思える魅力。
 この子だからこそロミオは一目惚れして、ティボルト@ヲヅキが長年片恋を続け、乳母が味方をしたんだろう。

 ヒロインを好きだと思える物語は、楽しさがチガウ。
 わたしは女性だからこそ、ヒロインには共感できるものが欲しい。ヒロインを愛せる物語は、ヒーローが素敵であること以上に物語を豊かにする。

 霊廟で「ふたりのパラダイス」を歌うジュリエットに号泣。
 その迷いのない、強い意志。
 狂ったのでも悲しみや依存ゆえでもなく、誇り高く愛を選び取る姿。

 あのロミオが、愛した少女。
 あのロミオを、愛した少女。

 それを納得させてくれる。

 
 ロミオはねえ、「世界の王」から泣かせてくれてさぁ。
 マーキューシオ@ちぎが下手の階段で仮面付けてふざけていて、そこへ奥からロミオが「やあ」と現れて。
 モンタギューの仲間たちが「ロミオー!」と迎え入れるんだけど、ここが、もお。
 みんなすごい勢いでロミオにまとわりついていって。
 抱きついていって。

 まさかの、ショーストップ。 

 数秒のことであっても、舞台進行止まってた。
 
 キムを迎える、仲間たちの姿に。

 次々抱きついてくる仲間たち、それを赦して、舞台が止まる。
 それが終わるまで、物語が止まる。

 ああ、大変だったね。いろんなことがあったね。
 だけどみんなで乗り越えてきたね。
 キムくんを中心に。
 雪組トップスター、音月桂を中心に、彼を信じて、彼を愛して。

 昼公演を観たとき、「世界の王」で早々に手拍子が入るのに驚いた。てゆーか違和感。盛り上げたいのはわかるけど、曲がもう少し盛り上がってからでもいいんじゃね? なんでスタートと同時に手拍子なの? と思ったんだが。
 千秋楽ではそんなこと感じなかった。

 舞台の上で、キムと雪組っ子たちが輝いている。
 愛があふれている。
 そのことに励まされ、勇気づけられ、愛しさと喜びに奮える……その気持ちを、表現したい。舞台へ返したい、示したい。
 そんな思いが、手拍子になる。
 一緒だよ。
 みんなみんな、一緒だよ。
 わたしたちも、ここにいるから!! そんな思いで、手を打ち鳴らす。

 いつもはカラダをぶつける程度だったロミオとベンヴォーリオ@まっつが、いきなり抱き合っていた。ハグしていた。
 それを見てさらに、だーだー泣く。
 まっつが、笑っている。幸せそうに、楽しそうに。仲間たちと。
 それを見て、さらに泣く。

 ありがとう。
 誰に対してでなく、繰り返し思う。
 ありがとう。ありがとう。

 キムくんの安定した実力。
 こんだけ問題が矢継ぎ早に起こり、いろんなものを抱え込まされて、それでもそこに立ち続け、力を出しつづける彼に敬服する。
 キムの創るロミオが好きだ。
 闇の気配と、素直な朴訥さ。繊細さと土着的強さ。
 誰からも愛され、赦される存在。仲間たちを裏切ってなお、結局のところ愛され続けたであろう、そのキャラクタ。

 フィナーレの男っぽさの対比もいい。
 いろんな魅力を持った、自慢のトップさん。

 『ロミオとジュリエット』のなにもかもがうれしくて、愛しくて。

 キムみみが好きだ、と心から思うだけに、「どうしてみみちゃんが娘役トップじゃないんだろう」という疑問はわくし、今回の研1抜擢とWキャストの意味は最後までわからないままだったけれど。
 そんな疑問に足を取られて今目の前の美しいものを見失うのは、馬鹿げている。
 ロミオ@キムと、ジュリエット@みみを愛する。堪能する。このカップルが、大好きだ。
 キムみみ万歳!
 トップコンビのラヴラヴ万歳! それでこそタカラヅカ!

 組子たちの団結とまぶしいパワー万歳! それでこそタカラヅカ!

 
 良い千秋楽でした。
 ありがとう。
 いろんなもの、いろんなひとに、ただもお、ありがとう。

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