わたしの癖といいますか、自衛手段でもあるのですが。
「人生がけっぷち、2度目があると思うな、いつだってこれが最初で最後」という意識があります。
 なにかうれしいことがあっても、この幸運が毎回続くはずがない、幸せなのは今だけで、あとできっと悲しい目に遭う。だから次に悲しい目に遭っても大きく傷つかないように、「いいのは今だけ、次はそうじゃない」と思い込むというか。

 ヲタをやる自分への言い訳でもあります。

「もう大人だもの、いい加減落ち着かなきゃ」と思うべきところを、「こんなことはもう2度とないかもしれないのよ? 今よ、今。今暴走しないでいつするのよ?!」と欲望を肯定したり。

 つーことで、わたしは昔からいつも「最初で最後」という言い方をします。
「ゆーひくんはこれからまだバウ主演あるかもしんないけど、ケロは最初で最後だろうから、悔いないよーに通わなきゃ!」と、10年前にもふつーに言ってましたね……いやまさかその10年後にゆーひくんが、バウ主演はおろかトップスター様になっているとは思わず。

 今の口癖は「全ツ2番手なんて最初で最後だもの! 堪能しなきゃ!!」だしな(笑)。
 その前は「好きな作品でしかも名作で、好きな役でしかも出番が多いなんて奇跡! もう2度とナイわこんなこと、今通わないでどーするのよーー!!」つって、二日に1度の割合でムラへ行っていたわけですな(笑)。

 少しは落ち着けよとツッコミつつ。
 「いつだって最初で最後」の覚悟のもと、ひとつひとつを大切に大袈裟(笑)に、堪能していきたいと思っています。

 てことで。
 最初で最後かもしんないから、騒いでおく。

 ある日の『ロミオとジュリエット』貸切公演。
 といっても、それが貸切公演だったとは、わたしはわかっていなかった。
 1幕が終わって、わたしはふつーに座席でメールをしたり、本日のベン様の素敵ポイント(笑)をメモしたり、のんきにしていた。
 すると、場内アナウンスが流れた。
「厳選な抽選の上~~」
 抽選? なんだ、ナニか当たるの? そーいやコレ、貸切公演だっけ? ふつーにサバキで買って入ってるから、区別ついてない。
「音月桂さんのサイン色紙は各階各列**番……」
 ああ、よくある貸切公演のプレゼントか。列関係なく、席番号で当たるやつ。
 わたしはこの公演中すでに何回も貸切公演を観ており、そのうち2回は幕間にプレゼント抽選会があった。サイン色紙はトップスターのキムくんと、そのときのジュリエット役、その2種類のみ。今回の公演に限らず、最近の貸切公演ではサイン色紙のメンバー数も削減しているようで、トップコンビのみとかふつーなんだよな、と大した興味もなくアナウンスを聞いていた。
 キムくんやみみちゃんのサインに興味がないわけではなく、単にわたしが当たるはずがないので、気にすることがないのだ。なにしろ当たった色紙は大浦みずき様のフェルゼンのみなんだもの、この20年間で。
 貸切公演のサイン色紙? ナニソレおいしいの? もらったことないからわかんない。
「早霧せいなさんのサイン色紙は~~……」
 え? ジュリエットじゃなくて2番手の色紙なの、この貸切。ジュリエットはトップぢゃないからの応急処置? そんなこと気にする貸切元なんだ?と、思っていたら。

「未涼亜希さんのサイン色紙は各階各列70番……」

 えええっ?!

 座席から、腰が浮きました、マジで。
 番号まで言ったところで反応するなら「当たったのかな、あの人」って感じかもしれないけど、番号以前、名前が読まれた段階で反応しまくりだったので、すげー恥ずかしかった。

 みすずあき? 今みすずあきって言ったよね??
 信じられなくて、おろおろした。
 や、当たってませんとも、当たるわけないでしょ、伊達に20年以上ナニも当たってないわけぢゃない、わたしのくじ運は最凶よ、ほんっとに当たらないもの!(おみくじの「凶」ならよく引き当てます)
 自分の当落よりも、みすずあき。
 今のマジですか、わたしの幻聴ですか? ひとり観劇なので誰にも聞いて確かめられない。

 まっつがサイン色紙メンバーに入っている……だと……?
 そんなことが、ありえるのか?

 取り乱したわたしは、フラフラとロビーまで行きました。
 プレゼント引換場所は劇場内ロビーではなく、改札を出たインフォメのあるロビーでした。
 もぎりのおねーさんを踏み越えて、外に出ました、わざわざ。
 で、当たったわけでもないのに、引換所真ん前行って、置いてある色紙を眺めました。

 ほんとだ……ほんとにまっつだ……。

 ぼーぜん。

 左上にスチール写真が貼ってあり、劇団発行の色紙で、劇団名の入った封筒に入れられている。
 それがたくさん、積み上げられている。

 あれは『太王四神記』の幕間トーク付きの日。
 平日公演の客寄せに、幕間に出演者を日替わりでトークさせるイベントがあった。喋るのはほんの数分、5分に満たない。そして、そのトークする生徒のサイン色紙を3名様だっけかプレゼント。
 なんともチープな、微妙すぎるイベントだった。
 だけど、日替わりであったために、ふつうならイベントに出してもらえないようなポジションの生徒にも順番が回ってくる。
 スターさんではないご贔屓が、まさかのイベント出演ですよ! ひとりだけ舞台に出て、司会者のじゅりあにインタビューなんかされちゃうんですよ! 大事件ですよ、行くしかないでしょう!!
 と、わざわざその平日に駆けつけた。連れのまっつメイトは茨城から駆けつけたさ。ふたりそろって「こんなの最初で最後ぢゃね?」と張り切ってSS席連番で、ヒョンゴ村長をガン見したさ……。
 そのときのサイン色紙が、わたしは本気で欲しかった。
 左上にスチール写真が貼ってあり、劇団発行の色紙で、劇団名の入った封筒に入れられている、貸切公演でプレゼントされているのと同じ形式のサイン色紙。
 トップさんたちなら貸切公演で毎回プレゼントされているけれど、脇の人はそんな機会はない。ふつーは一生ナイんだよ?
 こんなイベント最初で最後かもしんないし、するとマジであの3枚が、「未涼亜希」としての最初で最後の劇団公式発行サイン色紙かもしんないじゃん。
 ……もちろんわたしたちは当たらず、指をくわえてみていたさ。ヒョンゴ村長のサイン色紙なんて、もらった人うれしいんだろうか? てゆーかオレだ、オレによこせ~~!!と、内心身悶えながら。

 そっか……『太王四神記』のサイン色紙3枚が、「まっつ人生最初で最後の3枚」じゃなかったんだ……。
 こうやって、本日70番に坐った人全員の枚数があるんだ……。てゆーかまっつ、ここに積んである色紙に全部、1枚1枚サインしたんだ……。

 すごい。まるで、スターさんみたいだ。

 色紙の束を横に置いて、機械的にサインしているまっつを想像し、また実際に積み上げられた色紙の束と飾られた写真、名前を見てしみじみする。

 こんな日が来るとは、夢にも思わなかったナリ……。
 このうろたえっぷりも含め、忘れずにいたい。
 最初で最後、次はないかも、と自戒しつつ。

 あうう。
 まっつのサイン、欲しいなああ。ベン様の写真付きで。
 そのうちヤフオクとかに出るかなあ。
 貴重だよな、絶対。
 最初で最後かもしんないし!←

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