獣は涙を流さない。@バラの国の王子
2011年4月12日 タカラヅカ 野獣は何故野獣なのか?
今さらですが、『バラの国の王子』の話。
野獣@きりやんの臣下は、虎さんだのライオンさんだの、既存の動物たちだ。
野獣だけが、野獣。架空のイキモノ、バケモノ。
これは、何故なのか。
野獣だけが「人間」で、他の者たちは人間ではない、ということではないだろうか?
って、これはみんな知っていることで、「はあ? 今さらナニゆってんの?」かもしれないが、わたしは最初わかってなかったんだ。
屋敷にやってきたベル@まりもが最初の夜ひとりでずっと泣いているのを見守りながら、動物たちは「昔はそんな風に泣いたことがあった」と歌う。
……人間だった頃は涙を流した。しかし今はチガウ。
今の彼らは「泣く」ことがナイ。
何故なら、動物だから。
ヒトの言葉はわかるし、思いやりもあるけれど、根本が「人間」ではない。
それぞれ、姿通りの動物になってしまっている。
たとえば、彼らが人間のベルに恋することはないし、主人である野獣に恋することもない。
人間を動物と隔てる、根本的なナニかが失われている。
だが、ただひとり野獣だけは。
彼は、人間である。
これがアニメーションならなんの混乱もなかった。
臣下の動物たちは間違いなくただの動物の外見になっているだろうし、野獣だけは直立歩行して服なんか着てる、人間らしい姿なんだろうし。
だけどコレは舞台で、動物たちも野獣もみんな人間だ。臣下たちは動物のお面持ってるけど姿は人間のまま、野獣はお面は持ってないけどかぶり物付きの人間。
差異がわからないっつーか。
のーみそ少ないわたしは、特になにも考えず眺めていた。野獣も、動物たちも。みんな等しく人間で、魔法で動物にされてしまったと。
あとになってよーやく気付いた。
長男王子様は野獣という、架空の存在にされた。
既存の動物に、つまりは魂まで動物にされたわけじゃない。
魔女@りっちーに掛けられた呪いは、醜い人間にされてしまったということなんだ。
野獣っていうから、ややこしいんだよね。
喋る動物たちと暮らしている、喋る野獣。同じカテゴリだと思うじゃん。
そうじゃなくて、醜い人間。オペラ座の地下に住むファントムみたいなもん。
外見がバケモノなだけで、ふつーに人間。
だから野獣はあんなに、哀れなんだと思う。
彼自身も動物なら、野獣という獣なら、よかった。
虎でもライオンでも愛し合えるじゃん。同じ次元の存在なら。
だけど彼ひとりは「人間」で。
いくら人間の言葉を話せるからって、動物だけと暮らしたら、きっと孤独だと思う。誰だって。
ファントムにされてしまったのが幼い頃なので、その意味もわからないまま。
自分ひとりが「人間」であると、きっと、気付かないまま。
動物たちは自分たちが「人間」でなくなっているから、あえて教えなかったんだろうか。動物と人間の違いを。
王子が自分たちとはチガウ存在だとは知らせず、ただ大切に育てた。
動物って、動物と人間の違いってよくわかってないよね?
天敵として敵対関係にあるときは区別しているだろうけど、それは人間に限らず動物間でも同じだし。
共同生活していると、区別していなそう。犬でも猫でも、飼っていたら「こいつ、自分を人間だと思ってるな」と思うし。犬猫に限らず、チガウ種類の動物たちが共存している場合も、ままあることだし。
それらは動物たちの知能や利害に合わせて変化はするけれど、彼らは人間ほど明確に区別したり思考したりしないんだろう。
だから臣下たちも、野獣がなんであるかは考えないまま、自分たちと同じ存在だと大雑把に受け止めて、守り育てた。王子様だから敬うけれど、人間のソレとは違い、動物ののーみそで。
だから野獣はいまいち自分がなんなのか、臣下たちとどうチガウのか、考えることなく成人した。
仲間だと、自分と同じ次元にいるイキモノだと思っていた……その臣下たちが、実は自分とはまったく別の存在だったと、気付いたら。
今自分が生きている世界、ひとりずつ顔や名前がチガウと思って生活していたら、実は自分以外全員エイリアンだった、とか、そんな感じ?
え、オレひとり人間? あとみんな、チガウの?
言葉は通じるし、やさしいし、仲良しだけど……でも、「人間」なのはオレひとり?
ってソレ、どんだけの孤独。
どんだけの絶望。
野獣が「ひとり」だと気付いたのは、たぶんベルと出会ってから。
自分同じ「人間」の少女と出会い、彼女に「嫌われたくない」と思った。醜い自分を「恥ずかしい」と思った。
動物たちとはチガウ、人間だから。
だから彼にとってベルが唯一無二の存在で、彼女を失うこと=死なんだ。
臣下たちのために生きることはしない。
動物たちは動物たちで生きればいいけれど、野獣はもう、動物たちのなかでたったひとりで生きられないから。
言葉を話さない薔薇を育てられるられる野獣は、たぶん臣下たちが言葉を話さない動物まんまであっても、同じように今まで城で暮らしてきただろう。
言葉に意味はない。動物相手、薔薇相手には。
だけど、「人間」には。
ベルには、そして彼には、「言葉」が必要。
伝えたいことが「言葉」に出来ず、滅びることを選ぶ野獣。
「言葉」に気付くベル。
そしてふたりの物語はハッピーエンドへ。
野獣の孤独と絶望、そしてあのやさしさと不器用さは、好みだ。
彼はきっと、ベルと出会わなくても、やさしく悲しい物語を織ったことだろう。
今さらですが、『バラの国の王子』の話。
野獣@きりやんの臣下は、虎さんだのライオンさんだの、既存の動物たちだ。
野獣だけが、野獣。架空のイキモノ、バケモノ。
これは、何故なのか。
野獣だけが「人間」で、他の者たちは人間ではない、ということではないだろうか?
って、これはみんな知っていることで、「はあ? 今さらナニゆってんの?」かもしれないが、わたしは最初わかってなかったんだ。
屋敷にやってきたベル@まりもが最初の夜ひとりでずっと泣いているのを見守りながら、動物たちは「昔はそんな風に泣いたことがあった」と歌う。
……人間だった頃は涙を流した。しかし今はチガウ。
今の彼らは「泣く」ことがナイ。
何故なら、動物だから。
ヒトの言葉はわかるし、思いやりもあるけれど、根本が「人間」ではない。
それぞれ、姿通りの動物になってしまっている。
たとえば、彼らが人間のベルに恋することはないし、主人である野獣に恋することもない。
人間を動物と隔てる、根本的なナニかが失われている。
だが、ただひとり野獣だけは。
彼は、人間である。
これがアニメーションならなんの混乱もなかった。
臣下の動物たちは間違いなくただの動物の外見になっているだろうし、野獣だけは直立歩行して服なんか着てる、人間らしい姿なんだろうし。
だけどコレは舞台で、動物たちも野獣もみんな人間だ。臣下たちは動物のお面持ってるけど姿は人間のまま、野獣はお面は持ってないけどかぶり物付きの人間。
差異がわからないっつーか。
のーみそ少ないわたしは、特になにも考えず眺めていた。野獣も、動物たちも。みんな等しく人間で、魔法で動物にされてしまったと。
あとになってよーやく気付いた。
長男王子様は野獣という、架空の存在にされた。
既存の動物に、つまりは魂まで動物にされたわけじゃない。
魔女@りっちーに掛けられた呪いは、醜い人間にされてしまったということなんだ。
野獣っていうから、ややこしいんだよね。
喋る動物たちと暮らしている、喋る野獣。同じカテゴリだと思うじゃん。
そうじゃなくて、醜い人間。オペラ座の地下に住むファントムみたいなもん。
外見がバケモノなだけで、ふつーに人間。
だから野獣はあんなに、哀れなんだと思う。
彼自身も動物なら、野獣という獣なら、よかった。
虎でもライオンでも愛し合えるじゃん。同じ次元の存在なら。
だけど彼ひとりは「人間」で。
いくら人間の言葉を話せるからって、動物だけと暮らしたら、きっと孤独だと思う。誰だって。
ファントムにされてしまったのが幼い頃なので、その意味もわからないまま。
自分ひとりが「人間」であると、きっと、気付かないまま。
動物たちは自分たちが「人間」でなくなっているから、あえて教えなかったんだろうか。動物と人間の違いを。
王子が自分たちとはチガウ存在だとは知らせず、ただ大切に育てた。
動物って、動物と人間の違いってよくわかってないよね?
天敵として敵対関係にあるときは区別しているだろうけど、それは人間に限らず動物間でも同じだし。
共同生活していると、区別していなそう。犬でも猫でも、飼っていたら「こいつ、自分を人間だと思ってるな」と思うし。犬猫に限らず、チガウ種類の動物たちが共存している場合も、ままあることだし。
それらは動物たちの知能や利害に合わせて変化はするけれど、彼らは人間ほど明確に区別したり思考したりしないんだろう。
だから臣下たちも、野獣がなんであるかは考えないまま、自分たちと同じ存在だと大雑把に受け止めて、守り育てた。王子様だから敬うけれど、人間のソレとは違い、動物ののーみそで。
だから野獣はいまいち自分がなんなのか、臣下たちとどうチガウのか、考えることなく成人した。
仲間だと、自分と同じ次元にいるイキモノだと思っていた……その臣下たちが、実は自分とはまったく別の存在だったと、気付いたら。
今自分が生きている世界、ひとりずつ顔や名前がチガウと思って生活していたら、実は自分以外全員エイリアンだった、とか、そんな感じ?
え、オレひとり人間? あとみんな、チガウの?
言葉は通じるし、やさしいし、仲良しだけど……でも、「人間」なのはオレひとり?
ってソレ、どんだけの孤独。
どんだけの絶望。
野獣が「ひとり」だと気付いたのは、たぶんベルと出会ってから。
自分同じ「人間」の少女と出会い、彼女に「嫌われたくない」と思った。醜い自分を「恥ずかしい」と思った。
動物たちとはチガウ、人間だから。
だから彼にとってベルが唯一無二の存在で、彼女を失うこと=死なんだ。
臣下たちのために生きることはしない。
動物たちは動物たちで生きればいいけれど、野獣はもう、動物たちのなかでたったひとりで生きられないから。
言葉を話さない薔薇を育てられるられる野獣は、たぶん臣下たちが言葉を話さない動物まんまであっても、同じように今まで城で暮らしてきただろう。
言葉に意味はない。動物相手、薔薇相手には。
だけど、「人間」には。
ベルには、そして彼には、「言葉」が必要。
伝えたいことが「言葉」に出来ず、滅びることを選ぶ野獣。
「言葉」に気付くベル。
そしてふたりの物語はハッピーエンドへ。
野獣の孤独と絶望、そしてあのやさしさと不器用さは、好みだ。
彼はきっと、ベルと出会わなくても、やさしく悲しい物語を織ったことだろう。
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