さて、まだ『ロミオとジュリエット』の話。とゆーか、ベンヴォーリオ@まっつの話。

 それで結局、ベンヴォーリオって、どんなヒトなのよ?

 東宝のベンヴォーリオはだいぶん変わっていたけれど、ムラでは場面ごとに別人すぎた。
 オープニングの「ヴェローナ」ではクールなドS、しかしその直後の「憎しみ」から銀橋ロミオとの会話は滑稽でわざとらしい道化、「世界の王」はにこにこ少年。
 ナニこれ。

 場面ごとにちがいすぎて、一貫性がない。
 特にいちばんひどいのが「憎しみ」でモンタギュー夫人@ゆめみちゃんと話すところと、銀橋のロミオと話すところ。
 脚本にある「粗忽者」らしい物言いかもしれないけれど、変に滑稽で浮いている。星組版を観たときも、オープニングのあとモンタギュー側の最初の会話……「物語スタート」となるベンヴォーリオ@すずみんの喋り方のわざとらしい滑稽さにびっくりしたし、ロミオ@れおんに対するわざとらしい子どもっぽい喋り方にびっくりした。
 ので、雪組でまっつが同じ喋り方をしているのを見て、演出家指示なんだと思った。なんでかわからないけど、このキモチワルイ滑稽さや幼さが、イケコのこだわりなんだ、と。

 このいちばん浮いている部分について、ムラでは後半になるにつれまっつベン様は対モンタギュー夫人には皮肉っぽくなることで対処していたと思う。大人をバカにしているから、あえて滑稽な調子で話しているんだ、と。対ロミオは相変わらずだったけど。
 が、イケコの目を離れたからか、東宝ではがらりと演技を変えて、「ここだけ浮いている」場面のカラーを統一していた。
 対モンタギュー夫人にもさらに冷ややかに、対ロミオにもクールな年長の友人風に。これなら「ヴェローナ」からそれほど浮いていない。
 こんだけ芝居をがらりと変えるんだから、やっぱ変だったんだよなあ、当初の芝居。てゆーか、イケコのこだわり。

 ムラでのこの部分だけは変だと思ったけれど、そこは星組でも最後まで引っかかり、混乱した部分だったのでもうあきらめるとして。(日本初演の『ロミオとジュリエット』の星組初日、ベンヴォーリオ@すずみんのキャラクタを把握するのに時間が掛かったのは、この場面の変な喋り方のせい。ここだけ別人過ぎる)
 この場面を除いたとしても、ベンヴォーリオは場面ごとに印象が変わる。チガウ。

 それはどういうことなのか。どういうヒトなのか。

 って、実は気にならなかった。
 そのまま、そーゆーもん、と思った。
 そりゃ初日はそんなキャラクタ見慣れていないのでびっくりしたけど、リピートすればなんの問題もナシ。

 というのも、この『ロミオとジュリエット』という作品で描かれている若者たちは、とてもマンガ的だからだ。

 ベンヴォーリオもマーキューシオ@ちぎも、コミックから抜け出てきたよう。髪型といい、振る舞いといい。
 中世を舞台にした名家同士の争いの話なんだが、現代的な衣装や髪型、音楽や演出で、無国籍かつ時代考証無視。古典劇ではなく、現代に新しく創られた作品。
 争っている若者たち、パンクなファッション……ああコレ、マンガだ。てゆーか、少年マンガなんだ。

 わたしはもともと少年マンガ育ちで、今も女性向けコミックは読んでないが、少年誌は読んでいる。
 そこにはツッパリ物というかヤンキー物というか、不良少年たちがケンカに明け暮れるマンガが必ず載っている。
 で、そーゆージャンルのマンガは大抵、主人公たちは仲間内ではギャグ満載でゆるい姿を見せているんだけど、いざケンカとなると絵柄まで変わってかっこよくなる。
 アホアホギャグとドシリアスで血を流す姿が、当たり前にひとつの世界にある。

 それがふつーなので、場面ごとにキャラクタの変わるベン様も、なんの違和感もない。
 少年マンガじゃん。
 敵の前では超クールだけど、仲間と一緒のときはゆるみまくってる。いたずらしたりアホなことしたり。でも、いざってときはすげー大人。でもって純粋で友情のために命懸けたり泣いたり。
 きょうびのマンガで、ずーっとカッコイイだけ、シリアスなだけで通るわけないじゃん。笑いもクールさも必要だっての。

 と、まあ。
 今わたしが好んで読んでるのが『A-BOUT!』というヤンキーマンガであるためか、ときどきベン様たち『ロミジュリ』のみなさんが、『A-BOUT!』キャラの絵柄で脳内再生されて困る(笑)。

 ようするに、「面白ければ、なんでもアリ」。
 イケメンとかお持ち帰りとか、シェークスピアが絶対に使わない単語が出てもアリ。
 「ヴェローナ」でとことんかっこよくドSにクールに舌出してるベン様が、ロミオ相手に小学生みたいに話していてもアリ。
 仮面舞踏会でマーさんとふたり、にっちゃあ☆と笑っていてもアリ。

 ふつーに少年マンガのクールキャラ。ヤンキーキャラ。
 ケンカ大好き高校生。
 仲間内では大人。
 それが、親友の死を通してほんとうの大人になる。
 そーゆー物語。

 特別でもなんでもない。
 等身大の、男の子。

 だからこそ愛しい、ふつうの少年。
 ふつうだからこそ、彼の心の葛藤や傷にも興味があるし、妄想がわく(笑)。想像の余地があり、また翼も開く。

 そんな風に思っている。
 わたしにとっての、ベンヴォーリオ。

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