しつこく『黒い瞳』、しつこくパラーシカ@あゆみちゃんとマクシームィチ@がおりんの話。

 えー、わたしがカップルを語るときにたびたび出てくる話題というか、観点です。
 いつヤッたか。
 ……すみません、下世話なんです、すけべなんです、てゆーか愛し合う恋人同士には必然のことではございますが、夢の世界タカラヅカで語ることではない!ということも承知しておりますがなにしろソレ込みの恋愛話が大好物なもので。

 同じ村で暮らしていたパラーシカとマクシームィチ。
 駐屯部隊の司令官であるミロノフ大尉@ナガさんの家の使用人であるパラーシカは、ミロノフ大尉付きの下士官であるマクシームィチとはなにかと接点があった。
 コサック出身のマクシームィチは、農村の暮らしに詳しい。兵隊さんとしてより、農夫として頼りがいがある。
 パラーシカは気が強く物怖じしない娘なので、シャイな若い兵隊さんのマクシームィチを顎で使う(笑)。

 パラーシカは設定上はマーシャと同世代の若い娘(18歳くらい)なんだと思う。初演は新進娘役のみえちゃんだったし、新公はカノチカちゃんだ。どんだけ本気で若い女の子の売り出し役だったか、という証のようなキャスティング。
 コドモのくせに年上の兵隊さんにずけずけと話す、生意気な女の子だ。若い女の子だからこそ恋にも一途で容赦がない、裏切ったマクシームィチに「あたしをどうするの?!」と言いつのれる。

 今回の再演で、難しいのはパラーシカの年齢(笑)。
 初演と同じでいいのか、再演ならではのオリジナル設定なのか、よくわからない。
 まあさすがに18歳はナイだろーから、マクシームィチよりいくつか年上、20代半ばくらいだと思っていればいいのかなあ。

 あの時代ののどかな農村で25歳とか26歳とかだったら、すでに行き遅れかもしんねーけど、なにしろ肝っ玉かーさん系なので誰も気にしない、ってことで(笑)。

 んで、パラーシカとマクシームィチは両想いであることは、お互いなんとなくわかってるけど、はっきりとは言い出せずにいる。
 パラーシカは年上だし行き遅れな年齢だし、自分から若い男の子に言い寄るのはいけないことかなと思っているし、マクシームィチは年下の頼りない自分がヘタに口に出せることじゃないと思っている。
 マクシームィチは年齢的に恋愛即結婚!てほどでもないけど、パラーシカの年齢を考えたら、告白=プロポーズだもんよ、ハタチそこそこの男の子としては踏ん切りつかないでしょう。
 それにマクシームィチは、自分がコサックであることも重く考えているし。途中からは、反乱軍のこともあるし。
 ふたりで一緒に牛を追いながら、告白は出来ずにいる。

 ちゃんとつきあっていたなら、マクシームィチがパラーシカになにも言わずに村を出ることはないと思うの。
 なんの約束もしていない身だから、「コサックはひとつなんだ」と軍服を捨てることが出来る。
 パラーシカも、マクシームィチの捨てていった軍服を抱きしめることしか出来ない。

 まだ、想いを伝え合っていないから。

 そんな微妙な関係だったのに、一気に互いの気持ちを確認し合うことができたのは、なんといっても戦争のせい。
 平和だったベロゴールスクが戦場になった。
 生と死の狭間で、再会するパラーシカとマクシームィチ。
「お前は敵になったんだ!」
「うん」
 てな、どうしようもない会話。
 愛の告白もなにもなく、直接「あたしをどうするの!」。
 そのすっ飛ばし感がイイ。
 順番無視で核心のみ。
 それぐらい、切羽詰まってる、追いつめられてる。ここは戦場で、ふたりは敵同士だから。

 もしもパラーシカがマクシームィチの妻ならば、彼は「ついてこい」とも「待っていてくれ」とも言ったかもしれない。でもまだ、そんな関係じゃない。
 相思相愛なのはわかるけど、今たしかにわかったけれど、彼女に対してなんの責任も負えない男は「生きているんだ」としか言えない。

 「死ぬな」じゃなくて「生きているんだ」なのがイイよなあ。

 そうして、戦場の混乱は一旦終結。
 政府軍側の敗北というカタチで。
 ミロノフ大尉以下、将校たちは処刑。大尉の妻であり、パラーシカの直接の主人であっただろうヴァシリーサ@ヒメも自殺した。
 家族同然の人々を目の前で殺されたパラーシカの前に、マクシームィチが戻る。

 裏切り者の、人殺しの、自分からナニもかも奪った……憎い許せない、愛する人が、戻る。

 ふたりが結ばれたのは、このときだと思うんだ。

 あの気の強い、激しいパラーシカが、どれだけマクシームィチを罵ったか。
 剣を抜いて、殺そうとすらしたかもしれない。
 あの優しくヘタレなマクシームィチが、どれだけ心を痛めたか。
 剣を抜いて、自傷しようとしたかもしれない。

 罪と信念と愛と。
 絶対に許せない、だけど愛してる。
 絶対に許されない、だけど愛してる。

 家族のように思っていたベロゴールスクの人々を裏切り、殺しても、信念を曲げられないマクシームィチ。愛する女を泣かせても、戦うことをやめられないマクシームィチ。
 そんな男を罵り、責め、泣きわめきながらも、愛し続けずにはいられないパラーシカ。

 哀しく激しい恋人たち。

 ベロゴールスク出身のシヴァーブリン@コマが引き続きその地を託されたように、マクシームィチもベロゴールスクに残ったんだと思う。その後彼は、プガチョフ@まっつの本隊とは行動を共にしていない。……からこそ、パラーシカの頼みで単身オレンブルグへ向かうことが出来た。
 ほんのわずかな間でも、ふたりの蜜月はあったんだと思う。

 で、オレンブルグに忍んでいったマクシームィチは、パラーシカを「おっかないけど、気のいい女なんで」と言う。この台詞って、すでに「俺の女」でないと言わない艶があるよね。ああ、ふたりは結ばれたんだなと。
 ニコライ@キムも、ああそういうことなのか、と破顔する。

 で、マクシームィチとパラーシカの別れは、ニコライがマーシャを助けに来たときかなと。
 パラーシカは反乱軍兵士マクシームィチの妻として生きるのではなく、マーシャの侍女として、ミロノフ家の使用人として生きることを選んだんだなと。本来の彼女として。

 マクシームィチも、止めなかったろう。パラーシカがパラーシカとして生きることを。
 そういう女で、そういう男だった。

 完全な別れではなく、再会を祈っての別れだろうけど。
 生きていれば、また会える。きっと会う。そう信じて。

 だけどそのあと、勢力は変化し、反乱軍が敗走することになる。ベロゴールスクにいたシヴァーブリンもマクシームィチも、プガチョフ本隊と共に前線へ出る。
 そして。
 マクシームィチは戦死する。
 ただ戦って生きて帰ることより、情を重んじた彼はニコライに殺された。パラーシカはナニも知らない。彼女は彼女の主のもとで、一緒になってきゃーきゃー右へ左へ走り回っている。

 すべてが終わったあと、パラーシカも多分、ベロゴールスクへ帰っていると思う。マーシャと一緒に。
 ひとり雪の中で死者を悼み失った愛を追憶するマーシャの横で、パラーシカがその身に新しい命を宿していてくれたらいいなと思う。
 彼女はきっと、ひとりでも強く生きていくだろうから。

 いつかまた愛した男が帰ってくることを待ちながらも、子どもを育て牛を追い、強く強く北の大地で生きるだろう。
「生きているんだ」
 マクシームィチが、そう望んだから。
 彼女の男が、そう望んだから。
 彼女自身が、そう望んだから。

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